タイヤの製造年週まで分かる!知っておきたいタイヤ表示の意味
クルマは、タイヤがあってこそ安全に走行できる。そのタイヤについて知ることは、より安全なカーライフを送る上で重要だろう。タイヤをもっと知るために、サイドウォール(タイヤ側面)に刻印された数字や記号の意味を読み解いてみよう。
タイヤの表示で基本スペックを確認
ゴムやワイヤー、繊維などの素材が精緻に組み合わされて作られるタイヤは、走る、曲がる、止まるといった基本性能を的確に路面に伝え、また車両の荷重を支えてくれる。ドライバーがタイヤのスペックや状態を把握することは、安全で楽しいドライブのために大切なことだ。その手段のひとつとして、タイヤのサイドウォール(側面)に表示されている情報がある。どの文字が何の情報なのか、メーカーを問わず共通して表示されている情報について見ていこう。
サイドウォールを見ると、ひときわ大きな文字で数字の並びが確認できるだろう。最初に1か2で始まる数字3桁。そして「/」(スラッシュ)で区切られて、数字2桁。その次は、ほとんどの場合でアルファベットの「R」が入っており、続いて10台か20台の数字。1角くらい空いて2桁の数字とアルファベット1文字。これらの刻印は左から順に、タイヤ幅(mm)、偏平率(%)、ラジアル、リム径(インチ)、荷重指数(LI)、速度記号となっている。詳しく解説すると、それぞれ以下のような意味がある。
【タイヤ幅】
タイヤの断面幅のこと。断面幅とは、サイドウォールの文字や飾りなど、わずかに突起した部分を除いた部分にあたる。
【偏平率(%)】
タイヤの断面幅に対する断面高さの比率を表す数値。この数字が小さいほど、サイドウォールの高さが少なくなり、見た目として薄いタイヤになる。これにより安定性が高まり、ハンドリングの応答性が高くなるが、サイドウォールが薄いために路面からの衝撃は大きくなるといわれている。一方、偏平率が高いと路面からの衝撃の吸収率が上がるため、乗り心地が良くなる傾向にある。しかし、サイドウォールがたわみやすく、特に旋回時にタイヤが倒れこむような感覚になることもある。
【ラジアル】
カーカス(タイヤの骨格を形成するゴムの内部の構造)が、進行方向に対して直角に編み込まれているタイヤのことで、ほとんどの乗用車用タイヤがラジアルタイヤであるのでほぼ必ず「R」がついている。ラジアルタイヤでない場合はバイアスタイヤという種類であり、表示がないケースか、稀に「-」(ハイフン)が刻印されていることがある。
【リム径(インチ)】
タイヤのホイール部分の直径。タイヤの外径を変えずホイールを大きくするには、偏平率を下げることになるが、これを「インチアップ」という。インチアップをするとタイヤが大きく見えて、見た目が格好よくなるとされる。性能面では、ハンドリングの向上などがある。逆に、リム径を小さくして偏平率を上げることは「インチダウン」という。どちらかというと価格を抑えることができ経済的なのと、偏平率が上ることで路面からの衝撃に対する吸収性が高くなるというメリットもある。ただし、タイヤ全体の直径、つまり周長はODOメーターなどのクルマの距離計や速度表示にも関連するため、周長が変わらないようにインチアップ(インチダウン)する必要がある。不用意に行うと問題が発生するため、整備工場等の専門家に相談して実施しよう。
【荷重指数(LI=ロードインデックス)】
タイヤ1本が支えることができる最大負荷能力の数値。数値が大きいほど重い車体を支えられる。
【速度記号】
規定条件下でそのタイヤが走行できる最高速度。
※ZRは速度カテゴリー
以上の情報から、「165/55R15 75H」のタイヤのスペックは、165mm/偏平率55%、ラジアルタイヤでホイール直径15インチ。荷重指数387kg、最高速度210kmであることが確認できる。この数値は、タイヤ交換の時に必須の情報だ。タイヤ交換の際には、自分の車に適したサイズであることを確認し、自分が求める性能を備えたタイヤを選ぶ必要がある。
タイヤの氷マークは寒冷地帯に対応している証
従来、積雪した道路を走る機会が多いドライバーは、冬はスタッドレスタイヤに履き替えるのが一般的だったが、ここ数年、スタッドレスタイヤには劣るものの夏用タイヤよりは雪に強く、一年を通して使用できるオールシーズンタイヤも広まりつつある。積雪の少ない地域では便利なタイヤだが、そういったオールシーズンタイヤが、通行規制などでチェックされる冬用タイヤとして使えるかどうかは、サイドウォールに刻印されたマークで確認できる。
まずは「M+S」の刻印から説明していこう。これはMUD+SNOWの略で、オールシーズンタイヤに刻印されていることが多く、「MUD」は泥やぬかるみ、「SNOW」は雪を意味する。オフロード走行向きのタイヤという意味だ。
冬用タイヤかどうかの判別で重要なのは、その右側にある山と氷のマーク。これが「スノーフレークマーク」で、ASTMインターナショナル(旧米国材料試験協会)の公式試験で、冬用タイヤとして性能が認証されている証だ。このマークが刻印されているタイヤであれば、冬用タイヤ規制時でも走行が可能である。
5年以上使用したら要点検。適切な時期に交換を
タイヤを安全に使うためには、次の2つの変化に注目しなければならない。それは摩耗と経年劣化である。摩耗については、「スリップサイン」で確認が可能だ。まず、タイヤのショルダー部分(タイヤの肩部分、サイドウォールと路面に接するトレッド部分の間)に、小さな三角形のマークがある。このマーク延長線上にはスリップサインがあり、これが露出したら交換が必要というサインだ。タイヤの摩耗による使用限度は、道路運送車両法の保安基準第167条で1.6mmと定められており、それに満たない場合には危険であるばかりでなく、法律違反となる可能性もあるので注意が必要である。もっとも、スリップサインが露出し切る前であっても、溝が半分くらいになるとグリップ力や制動力の低下など性能低下が始まることがわかっている。早めの交換が理想だ。
ちなみにスタッドレスタイヤなどの冬用タイヤの場合は、スリップサインのほかに「プラットフォーム」という突起がタイヤ溝にある。サイドウォールに刻印された矢印(メーカーによっては雪だるまマークも刻印されている)の延長線上に位置し、冬用タイヤとしての使用限度を知らせるためのマークだ。プラットフォームが表れると、タイヤが50%摩耗したことになり、氷雪上でのブレーキ性能悪化などを引き起こす。こうなると、冬用タイヤとしては使用不可能になる。前述したスリップサインの露出が確認されるまで夏用タイヤとしては使用できるが、夏場でも性能は低下してきているので、早めの交換を心がけたい。
タイヤは走行距離による摩耗だけでなく、経年によりゴムが自然劣化していく。JATMAによると、5年以上経過したタイヤには点検の必要があるそうだ。タイヤはゴムやコード(タイヤの骨組みに使用する繊維糸)など、さまざまな材料で構成された化学製品である。走行距離が短く摩耗していないタイヤでも、経年劣化によるひび割れや、経年硬化によるグリップ力の低下などの懸念もある。
そのために役立つ情報としては、サイドウォールに刻印されたタイヤの製造年週がある。読み方は、下2桁が製造年、上2桁が製造週となっている。例えば「3717」の場合、2017年の37週目(9月11日~17日)に製造されたことを意味する。他の刻印と異なり、製造年週はゴムの中にへこんだ4桁数字で刻印されている。
ちなみに、中古車を選ぶ際にはこの情報を確認すると、過去に1本だけタイヤを交換した可能性があることが分かる。通常1本だけ交換するのは、事故などの何か理由があった可能性が高く、よく調べた方がいいかもしれない。また、前述した刻印は2000年以降に該当するもので、1999年以前は3桁(下1桁:製造年、上2桁:製造週)で表されている。もし自分のタイヤに3桁で刻印されている場合、それは製造から20年以上が経過していることになるので、即座に交換をおすすめしたい。
【お詫びと訂正】公開時、サイドウォールの刻印の解説に一部誤りがありましたので、正しい表記に修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。