子どもの車内置き去りは死に至ることも! 保護者と子どもにできる対策を解説
車内に置き去りにされた子どもが命を落とすという痛ましいニュース。熱中症になった子どもは短時間で命を落とすこともある。夏本番を迎える前に、改めて、保護者にできる対策を取り上げたい。
目次
車内に置き去りにされて危険にさらされる子どもの命!
保育所、幼稚園、認定こども園の送迎バスに置き去りにされたり、保護者の「送ったつもり」「降ろしたつもり」で自家用車に取り残されたりした子どもたちが、熱中症で命を落とすケースがある。
JAF(日本自動車連盟)の調査によると、気温35度の炎天下に駐車した車内の暑さ指数は、窓を閉め切った状態でエンジンを停止後、わずか15分で人体にとって危険なレベルに達するという。特に、体温調節機能も未熟で、自ら水分補給する、窓を開ける、助けを求めるといったことが困難な乳幼児には危険な状態だ。
また、熱中症の危険性だけでなく、寝ていた子どもが起きたとき、「パパ・ママがいない」とパニックを起こして負傷したり、「パパ・ママはどこ?」と車外に出て探そうとして交通事故に遭ったりなど、様々な危険が潜んでいる。このご時世、車上荒らしや連れ去りもある。保護者として、様々な視点から、子どもの車両置き去りのリスクを考えてもらいたい。
子どもの車内置き去りは「ありがち」なケースも……。
子どもの車内置き去りは、どのようにして発生するのか。パチンコに行くためなどは論外であるが、その他にもちょっとした日常の理由で発生することもある。主な理由を取り上げてみた。
【ケース1】 寝ているし短時間だから……。
目的地に到着したとき、子どもが寝ていたら……。チャイルドシートの乗せ降ろしも、片手で抱っこしながらの移動も、保護者にとっては大変かもしれない。ちょっと自宅に忘れ物を取りに行くだけだから、コンビニの店内から車も見えているから、スーパーの空いている時間帯だから、きっと大丈夫だろうと短時間の置き去りをする保護者は少なからずいるだろう。しかし、その短時間で熱中症になって救急搬送されたり、交通事故にあったり、事件に巻き込まれたりしたら、取り返しはつかない。
厚生労働省では、「寝ているから、その間に買物をすませよう……」「窓をちょっと開けておいてパチンコに……」など、どのような理由でも、子どもをひとりで車内に置き去りにするのは児童虐待(ネグレクト)にあたるとしている。たとえ、買物や用事を数分ですませて駆け戻ったとしても、通報されれば虐待を疑われることもある。
【ケース2】 うっかりのキー閉じ込み……。
JAF(日本自動車連盟)によると、ロードサービスの要請でも特に多いのが、インロックやインキーともいわれる「キー閉じ込み」だという。子どもを連れて出かけようとしていた保護者が子どもを車に乗せたとき、うっかりキー閉じ込みをしてしまうこともあるのだ。特に、リモコンキーを持たせると、子どもの機嫌がよくなる、ぐずらなくなるといった理由であえて持たせてしまったがために、キー閉じ込みが起きているケースも少なくない。
【ケース3】 送ったつもり、降ろしたつもりが……。
子どもの死亡にもつながっている保護者の「送ったつもり」「降ろしたつもり」での車内置き去り。その後の仕事や用事のことなど、他のことで頭がいっぱいになっているとき、保育園などの送り先ではなく職場や自宅に向かい、保護者ひとりが車から降りて子どもを置き去りにしてしまうケースは、数時間後、迎えに行こうと車に乗り込むまで発見できず、重度の熱中症で危険な状態に陥りやすい。
子どもを残したまま車を離れた保護者は20.4%
ここで、三洋貿易の「子どもの車内置き去り実態調査2023」の結果をみてみたい。調査の対象は自家用車に子どもを乗せている運転者だ。なお、三洋貿易は自動車向けセンサーの開発・販売をしており、この調査を子どもの車内置き去り事故を防止する取り組みのひとつとして実施している。
調査では、大部分の運転者が車内に置き去りにされた子どもが熱中症になっていることを「知っている」と回答。それにも関わらず、子どもを残したまま車を離れたという回答は20.4%にのぼっている。そのうち、無意識(送り忘れや降ろし忘れなど)に置き去りにしたという回答は1.9%となっていることから、児童虐待(ネグレクト)の意思はないものの、意識して子どもを車内に置き去りにしているケースはかなり多いといわざるを得ない。
また、子どもの車内置き去りが発生する理由については、「保護者の意識が低いから」が60.5%、「用事を済ませる間に子どもを見てくれる人がいないから」が35.9%、「他のことに気を取られて子どもが車内にいることを忘れてしまうから」が22.3%となっており、保護者の意識が低いからという意見が半数を超える結果となった。
車内置き去りを防ごう! 保護者と子どもにできること
三洋貿易の「子どもの車内置き去り実態調査2023」では、子どもを無意識に車内に残してしまうことを防止するための対策を行っているかという問いに対しては、特に防止するために行ったことはないが78.9%と大部分を占めている。
夏本番を迎えるいま、車内置き去りを防ぐために、保護者にはぜひ対策をしてほしい。年齢によっては子どもにできる対策もあるので、親子で取り組んでもらいたいと思う。
(1)カバン、スマホ、財布などを子どもの真横に置いておく
保護者のスマホや財布などの貴重品、それから持ち歩くバッグなど、車を離れてすぐに「ない!?」と気が付くものを子どもの真横に置いておくようにするだけでも置き去り対策になる。
(2)クルマのキーは肌身離さない
車のキーを肌身離さないようにしていれば、キー閉じ込みで子どもが車内に閉じ込められることは防げる。ひとりで出かけるときもキー閉じ込み対策になるので習慣化してもらいたい。
(3)子どもにクラクションの鳴らし方を教えておく
幼児期の子どもは、保護者が教えればクラクションの鳴らし方を覚えられる。親子で車に乗り込み、もしも置き去りにされたときは運転席に移動して、思い切りラッパのマークを押すことを教えよう。子どもはすぐに忘れてしまうので、何度も教えるようにしてもらいたい。クラクションの鳴らし方を知っていれば、保育所などの送迎バスで置き去りにされることがあっても、周囲に自分の存在を知らせられるだろう。
最後に、すべての大人に躊躇わず行動してもらいたいのは、もしも、商業施設の駐車場や近所の駐車場で、子どもが置き去りにされていることに気付いたら、すぐに警察に通報して救急車を呼ぶことだ。例え、保護者が「ちょっとだけ」と離れただけだったとしても、もしかしたら、その行動ひとつで小さな命を救えるかもしれない。
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