あおり運転の厳罰化で免許取り消しも。厳罰化には9割が賛成。
警察庁は12月6日、自民党の交通安全対策特別委員会において、道路交通法に「あおり運転」に関する規定を新設し、厳罰化で免許取り消しとする方針を示した。一方、最近のアンケート結果では9割の人が厳罰化に賛成の意向を表明している。あおり運転は根絶できるだろうか。
あおり運転の罰則
現行の道路交通法では、あおり運転を直接取り締まることのできる規定はなく、「車間距離保持義務違反」や「安全運転義務違反」、刑法の「暴行罪」などを適用して処罰している。
例えば、普通車を運転し、高速道路上で車間距離保持義務違反となった場合、反則金9000円と違反点数2点の加点。反則金を納めなかった場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金となる。
警察庁が新しく検討中の法案では厳罰化の方針が示されており、罰則は暴行罪、強要罪などを参考。違反点数は15点で即座に免許取り消し、再取得までの欠格期間を1年以上にするという。
車間距離を極端に詰めたり、急ブレーキをかけたりといった特定の行為を「通行の妨害目的」で行い、「交通の危険を生じさせる恐れのある」場合をあおり運転として定義。このような行為を意図的に執拗に繰り返すことを摘発の要件とするという。
あおり運転の厳罰化に賛成?反対?
あおり運転の厳罰化に対して、世間のドライバーはどのように感じているのだろう。株式会社エアトリが、20~70歳代の男女1150名を対象に実施した「あおり運転の罰則」に関するアンケート調査を見てみよう。
調査1:あおり運転の厳罰化についてどう思いますか?
「あおり運転の厳罰化についてどう思いますか?」という問いには、87.5%が「賛成」と回答した。厳罰化については歓迎ムードである。
あおり運転の被害経験があるドライバーならば、その怖さを体験しているし、近年の悪質な事例をニュースなどで見ていれば、あおり運転をなくすための措置として厳罰化が受け入れられるのは当然だろう。
調査2:あおり運転の罰則が「免許停止」になることに対してはどう思いますか?
「あおり運転の罰則が免許停止になることに対してはどう思いますか?」という問いに、「十分な罰則である」と回答したのは42.9%、「罰則としては不十分である」と回答したのは47.7%だった。
意見が拮抗しているようだが、罰則内容について「まだ甘い」と考えている人も決して少なくない。では、どのような罰則が求められているのだろう。
調査3:「免許停止」の他に必要だと思う罰則は何ですか?(罰則が「不十分」と答えた人が複数回答)
「免許停止の他に必要だと思う罰則は何ですか?」という問いに対して、最も意見が多かったのは「懲役刑」で56.4%。次いで「一生涯の免許停止」で54.2%となった。
この2つは過半数を超えており、「あおり運転を二度としまい」と後悔の念を抱いてほしいという考えと、「2度と運転をしないでほしい」という願いがうかがえる結果であると読み取れる。
調査4:あおり運転の定義についてどのようなものが良いと思いますか?
あおり運転の厳罰化に伴い、あおり運転の定義にも注目が集まっている。
「あおり運転の定義についてどのようなものが良いと思いますか?」という問いに対して、最も意見が多かったのは「過度にハイビーム・パッシングをしたり、クラクションを鳴らしたら」で33.3%。
「車間距離を詰めた」、「急発進・急停車をした」というのはあおっているのか判断が難しいため、目に見える分かりやすい行為として、過度なハイビーム・パッシング、クラクションが選ばれたのだろう。
また、あおり運転とそうでない場合を区別する難しさから、「定義付けるのは無理だと思う」と回答した人が13.6%いた。新しい法案であおり運転が規定されたとしても、この判断の難しさは争点となりそうだ。
あおり運転をされる側にも罰則が必要?
あおり運転がニュースで取り沙汰される一方で、SNSなどでは「あおられる方にも問題がある」といった意見も散見される。世のドライバーはどう感じているだろう。
調査5:あおられる要因になるような運転に関しても罰則が必要だと思いますか?
「あおられる要因になるような運転に関しても罰則が必要だと思いますか?」という問いに対して、「必要」と回答したのは45.9%。「不要」と回答したのは13.8%だった。
どうやら、あおられる要因になるような運転をしているドライバーにも罰則が必要だと考えている人も少なくないことが分かった。あおられる要因になるような運転とは、どんな運転なのだろうか。
調査6:どのような運転に対して罰則が必要だと思いますか?
(あおられる要因になるような運転にも罰則が「必要」と回答した人が複数回答)
「どのような運転に対して罰則が必要だと思いますか?」という問いに対して、以下のような回答が多かった。
・無理やりの割り込み:81.1%
・低速で追い越し車線を走行:71.0%
・ウインカーを出さない、出すのが遅い:62.7%
どの運転も大変危険で後続車のドライバーが不快に感じるような行為であることが分かる。多くの人が、上記のような運転をするドライバーに遭遇し、不満を感じているようだ。
また、このような運転をするとあおり運転の被害を受けやすくなると考えることもできる。もし、あおり運転の被害を受けやすいというドライバーがいたら、自分が危険な運転をしていないか、今一度見直してみるのも必要があるかもしれない。もちろん、どんな運転であろうとも、それに対する報復として、あおり運転をすることは間違っている。あおり運転は絶対にしてはいけない。
このように、あおり運転を厳しく罰して欲しいというドライバーが多い一方、肝心の「あおり運転の定義」が難しい現実も理解されていることが分かった。あおり運転を受けた時、映像などの客観的証拠がないと立証が難しい場合もあるだろう。ドライブレコーダーを設置するなどの対策は引き続き必要だ。
また、この厳罰化に関せずとも「あおり運転は絶対にしない」「あおり運転は危険行為である」とドライバー1人1人が肝に銘じ、あおり運転根絶に向けて、社会全体で取り組んでいく必要がある。
【調査概要】
調査タイトル :「あおり運転の罰則」に関するアンケート調査
調査対象 :20~70歳代の男女1150名
調査期間 :2019年11月14~17日
調査方法 :インターネット調査
調査主体 :株式会社エアトリ