JR西日本が、世界初方式のホームドアを開発中
JR西日本は、あらゆる電車のドア位置に対応できる新型ホームドアの1次試作品を発表した。この試作品を元に開発・検証を進め、2023年春に開業予定のうめきた(大阪)地下駅への設置を目指している。
60パターン以上のドア位置に対応できるホームドア
2016年に東京と大阪で起きた、視覚障害のある人がホームから線路内に転落し、亡くなるという痛ましい事故。そういった状況への対策からも、国交省と鉄道各社は事故防止のためにホームドアの設置を進めている。ところが、その設置を困難にしている要因の1つが、電車によってドア位置が異なることだ。
電車のドア位置を統一するという案もあるが、これはなかなか難しく時間もかかる。やはりホームドア側での解決策が必要で、開口部を広くするなどの工夫で対処しているのが現状だが、これにも限界がある。
ドア位置のパターンが多数ある事例の1つとして、2023年春に開業するJR西日本のうめきた(大阪)地下駅がある。同駅はJRだけでなく私鉄も入線する。そのため、さまざまな種類・編成の電車がホームに入る予定だ。また2031年に開業するなにわ筋線も同駅に入線する。JR西日本は、同駅のホームのドア位置が60パターン以上になると試算している。
そのような条件に対応するホームドアは従来のものにはない。そこでJR西日本は世界初の新型ホームドアの開発に着手した。
「ふすま」のようにスライド・収納できる扉
新型ホームドアは床面から天井までの高さがあり、ホームを覆うような「フルスクリーン」タイプと呼ばれるものだ。構造は、扉を上部ユニットから「ふすま」のように吊るし、扉が左右にスライドする。
扉にはデジタルサイネージ(電子掲示板)機能を備えた親扉と、ガラスの子扉の2種類がある。親扉と子扉は、段差をつけて吊り下げられている。段差があるので、ふすまのように親扉の背後に子扉を収納することも可能だ。スライドと収納の動きを組み合わせることで、ドア位置を自在に変えられる仕組みとなっている。
また上部ユニットに動作機構や制御装置などが収まっているので、従来のホームドアのように動作機構や制御装置が乗客の目の前にない。ガラスの子扉と相まって、新型は見た目で圧迫感が少なくスリムな印象を与える。
ガラス製の子扉は、ホームに入ってきた電車の姿や、ドア位置を乗客が確認しやすい。加えて親扉のデジタルサイネージに電車の情報を表示すれば、乗り換えに不慣れな乗客へのサポートにもなる。
安全を担保できる精度を高める開発・検証
新型ホームドアは安全対策としては、扉のモーターに過負荷検知機能と各種センサーを設置している。これにより、乗客とホームドア(扉)の接触や巻き込み、ホームドアと車両間に乗客が取り残されるなどの事故の発生を防ぐ。
上部ユニットにある動作機構や制御装置の調整は、ホーム側から行えるため作業員の安全面にも配慮した設計である。
新型ホームドアは多様なドア位置に対応できるものだが、気になるのは開閉にかかる時間だ。従来のものは「開く」という動作だけだが、新型は「スライド」や「収納」という動作も加わる。動作が増えれば、時間もかかるはずである。
JR西日本では今回発表した1次試作品を元に開発・検証を行うとしている。その過程で動作時間が、電車のダイヤにどのような影響を及ぼすかなども検証されるのだろうが、ぜひ、うめきた(大阪)地下駅への設置に成功してほしいものだ。