2012年の埼玉自動車大学校の学園祭「埼自大祭」で初披露された初代「リーフ」のハーフカットモデル。年に1作、同校のカスタムボディ科の学生が製作している。
埼玉自動車大学校のカスタムボディ科の学生たちが、1年に1台製作しているハーフカットモデル。単にクルマの外装をカットしただけでなく、エンジンやバッテリー、モーター、制御機構など、クルマの主要パーツ自体もカットし、その内部機構まで見えるようにしてあることが大きな特徴だ。それに加え、ボタンを押すとピストンが上下したり、電気の流れがライトの点灯で見えやすくなるなど、機構を学べる加工も施されている。
ハーフカットモデルは毎年秋に開催される学園祭の「埼自大祭」で披露され、年が明けてから東京オートサロンにも出展。そのクォリティの高さから、次世代自動車産業の支援を目的とする、公益財団法人埼玉県産業振興公社の次世代自動車支援センターの製作依頼を何度か受けているほどだ。今回取り上げる初代「リーフ」は同センターの依頼によるものである。
EVならではのエンジン車との違いを「リーフ」(初代)に見てみる
「リーフ」(初代)のハーフカットモデルを助手席側から見たところ。
今回展示されていた「リーフ」は、2010年12月に発売が開始された初代だ。現行車種ではないが、日産が本格的に市場に導入した市販EVであり(軽EV「ハイパーミニ」(1998~2000年)以来の市販EV)、エポックメーキングな車種であることからそのハーフカットモデルも取り上げた。
EVらしさがわかるのが、エンジンルーム。一般的な乗用車はフロントにエンジンを搭載しているという固定観念があると、インバーターやモーターのみなので、空間的にとても余裕があるように見える。エンジンもインバーターもモーターも搭載する「ノート e-POWER」のようなハイブリッドカーとは大きな違いだ。EVが従来のクルマの外見や車内レイアウトにとらわれない、より大胆なデザインも可能とされるのは、こうした駆動機構のコンパクトさに理由がある。
フロント部分の拡大。本来、エンジンルームだが、エンジンがないのだからパワートレインルームとでも呼べばいいのだろうか? (1)インバーター。インバーターの本体は、カバーの下にある緑色の基板など。(2)充電ポート。充電コネクターがポートに差し込まれている。(3)駆動用モーターユニット。この上には電動エアコン用コンプレッサーがある。(4)暖房用PTC素子ヒーター。EVのパワートレインは高熱を出さないため、PTC素子ヒーターで電気的に水を温めて暖房に使用している。
充電ポート部分のアップ。(1)インバーター。(2)電動エアコン用コンプレッサー。(3)駆動用モーターユニット。(4)充電ポート。
フロント部分を後方から。(1)インバーター。(2)DC-DCジャンクションボックス。リチウムイオンバッテリーと駆動用モーター・インバーターとの間を仲立ちし、電力の分配などを行う装置。(3)暖房用PTC素子ヒーター。(4)駆動用モーターユニット。「リーフ」は初代も2代目もフロント・モーター・フロント・ドライブ(FFの2WD)で、車軸が左前輪のアップライトにつながっているのが見て取れる。フロントの足回りは、サスペンションが独立懸架式ストラット、ブレーキがベンチレーテッドディスク。ブレーキは、通常の摩擦ブレーキと協調する電磁型制御方式の回生ブレーキを備える。
前輪と後輪の間に収まる形でシート下に設置された大容量のリチウムイオンバッテリー。重量物であるため、運動性能が悪化しないように車体中心に収められている。(1)リチウムイオンバッテリー。(2)バッテリーコントローラー。コントローラーの左側もリチウムイオンバッテリー。
車体後部。左側は上で紹介したフロア下に敷き詰められたバッテリーで、右側は荷室下に備えられた制御用機器。リアの足回りは、サスペンションがトーションビームで、ブレーキはベンチレーテッドディスク。
上の画像の荷室下の制御用機器のアップ。(1)車載充電器。フロント部分に充電コネクターを差し込んで家庭用電源などの交流で充電を行うと、ここで直流に変換され、リチウムイオンバッテリーに充電される。(2)キャパシター(蓄電装置)。(3)電動パーキングアクチュエーター。(4)リチウムイオンバッテリー。
「リーフ」を後方から。リチウムイオンバッテリーがフロントシートからリアシートにかけてフロア下に敷き詰められているのがわかる。
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続いては「ノート e-POWER」!
「ノート e-POWER」の技術面での特徴はシリーズ型ハイブリッドエンジン
2016年に登場した「ノート e-POWER」は、ガソリンエンジンで発電し、モーターで走行するいうシリーズ型ハイブリッドエンジンを特徴とする。EVの走り味を持ちながら、充電に時間を取られる心配がないという、ガソリン車とEVのいいところ取りをした仕組みが人気のコンパクトカーだ。
「ノート e-POWER」のハーフカットモデル。オートジャンボリー2019では6車種7台のハーフカットモデルが展示されたが、「ノート e-POWER」のみが1号館1階での展示となった。
「ノート e-POWER」のパワートレイン(エンジン)ルーム。(1)エアコン冷媒冷却用のコンデンサー(エアコンデンサー)。(2)ラジエーター。(3)電動エアコン用コンプレッサー。(4)発電用エンジン「HR12DE」(排気量1198cc・直列3気筒DOHC)。(5)駆動用モーター・発電用モーター用インバーター。
同じエンジンルーム内で、上の画像よりも手前側。(1)電動エアコン用コンプレッサー。(2)駆動用モーター・発電用モーター用インバーター。(3)サブラジエーター。(4)エアコン冷媒冷却用のコンデンサー(エアコンデンサー)。(5)ラジエーター。(6)駆動用モーター(上側の機器の陰にあるためほとんど見えない)。(7)発電用モーターユニット。(8)高電圧冷却用電動ウォーターポンプ。
画像右側のはみ出している機器がリチウムイオンバッテリー。「ノート e-POWER」では、バッテリーはフロントシートの下に搭載されている。リアシート下にバッテリーを搭載しているハイブリッドカーも多いが、「ノート e-POWER」の場合はそこにガソリンタンクがレイアウトされている。
リチウムイオンバッテリー周辺のアップ。(1)バッテリー冷却用ファン。(2)リチウムイオンバッテリーコントローラー(緑色の基板)。(3)リチウムイオンバッテリー。
リアシート下に配置されたガソリンタンク。
「ノート e-POWER」ハーフカットモデルを後方から。バッテリーがフロントシート下、ガソリンタンクがリアシート下なのがわかる。足回りは、サスペンションがフロントは独立懸架式ストラット、リアはトーションビーム。ブレーキはフロントがベンチレーテッドディスク、リアがリーディングトレーリング式だ。
今回は、ハイブリッドカーとEVの両方を紹介したことから、エンジンルーム内の大きな違いを見てもらえたと思う。またフロア下の使い方の違いも興味深い。今後、「リーフ」は3代目、遅くても4代目にフルモデルチェンジする際は、おそらく全固体電池を搭載することになるだろう。全固体電池はリチウムイオン電池に比べて小型化・集積化を実現する。初代や2代目のように、フロア下に同じ量の全個体電池を敷き詰めて航続距離を大きく伸ばすか、航続距離を同程度に抑えて軽量化を図るか。またその頃に埼玉自動車大学校のカスタムボディ科の学生に力作を披露してもらい、EVの進化の様子を見せてもらいたいところである。