「あおり運転」の摘発件数が1.8倍に!取り締まり強化でヘリも活用。
前方を走るクルマとの車間距離を極端に詰めたり、無理な追い越しをしたりする「あおり運転」が大きな問題となっている。昨年、あおり運転に関係する違反として摘発件数が急増した「車間距離保持義務違反」について紹介しよう。
車間距離保持義務とは
車間距離保持義務とは、道路交通法第26条に定められている「車間距離の保持」についての規定のこと。同一車線上を走る前方の車両が急停車した時に追突を避けることができる距離を保つことを定めている。
道路交通法
(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
おあり運転のように、前方を走る車両との車間距離を詰める危険な運転をしているとこの規定違反となる。また、運転者にあおっている意識がなかったとしても、適切な車間距離を保持していないとみなされれば違反となる。
車間距離保持義務違反が1.8倍に!
車間距離保持義務違反の摘発件数推移を見てみよう。
上表を見ると昨年、車間距離保持義務違反で摘発された件数は1万3025件で、前年から1.8倍となっていることがわかる。そのうち全体の9割以上は高速道路上の摘発が占める。2013年以降減少していた摘発件数が昨年急増しているのはなぜなのだろう。
警察庁は昨年1月、各都道府県公安委員会に「あおり運転等の悪質・危険な運転に対する厳正な対処」について通達。そのなかで、車間距離保持義務違反、急ブレーキ禁止違反、進路変更禁止違反などを「妨害を目的とする運転」としてまとめ、それらの積極的な交通指導取り締まりの推進を指示している。
警察庁によると、同通達により取り締まりを強化。昨年6月には、通常のパトカーや白バイに加え、14府県ではヘリコプターなども使った取り締まりを実施したという。高速道路上からヘリコプターで地上を監視、高速隊のパトカーと連携して車間距離を詰める車両や危険な割り込みを繰り返す車を摘発したそうだ。つまり、車間距離保持義務違反=あおり運転とは言えないものの、あおり運転に繋がる危険行為として同違反の取り締まりが強化されていることが摘発件数増加の要因の一つであると考えられる。
車間距離保持義務違反の罰則
車間距離保持義務違反となると、以下のような罰則が課せられる。
【高速道路の場合】
・反則金
・上記反則金を納めなかった場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条1項1の4号)
【一般道路の場合】
・反則金
・上記反則金を納めなかった場合、5万円以下の罰金(道路交通法第120条1項2号)
このような罰則の対象とならない車間距離とはどれくらいなのだろう。
適切な車間距離はどれくらい?
道路交通法では車間距離について明確な値は定められていないが、道路交通法第26条に「直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができる」距離であると示されている。そこで下に、自動車の停止距離の目安をあげてみたので参考にしてほしい。
停止距離とは、車にブレーキをかける時、ドライバーが異常を認めてからブレーキを踏むまでに進む距離を「空走距離」、ブレーキを踏んでから停止するまでの距離を「制動距離」と呼び、停止距離=空走距離+制動距離となる。
上表の場合では、時速60キロでは約44m。時速80キロでは約76m。時速100キロでは約112mが停止距離となる。また、雨で路面が濡れている時はタイヤが滑りやすくなるので、この距離よりさらに長くとっておく。高速道路上では、車間距離確認区間(トップ写真の緑の標識)が設けられているので、それを参考にして安全な車間距離を確認して欲しい。
また、一般道や距離を確認する標識などがない場合は、前車が通過してから自車が同じ場所を通過するまでを2~3秒にすると、走っている速度に対して概ね適切な車間距離となる。例えば時速60キロ=秒速16.7キロなので、3秒で50.1m。数え方には個人差があるので、予め練習しておくとよい。一人ひとりが車間距離の保持を意識すれば、あおり運転は確実に減るはず。みんなで余裕を持った運転を目指したい。