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最終更新日:2024.07.26 公開日:2023.07.10

分断された国道152号。トンネル技術の進歩で“酷道”の返上なるか?

しっかりと整備されていることが多い日本の国道だが、なかには国道ならぬ“酷道”も存在している。長野県と静岡県を縦に繋ぐ国道152号もそのひとつだ。脆弱な地盤でトンネルを掘り進められない状況が約半世紀も続いたことから、道路マニアの間では「分断国道」としても知られている。しかし今年5月、日本のトンネル技術の進歩によって、ついにその一部がつながった。

文=宮本 奈々(KURU KURA)

資料=飯田国道事務所

国道152号の酷道っぷりがハンパない!

国道152号の路線図

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国道152号は長野県上田市を起点、静岡県浜松市を終点とした、実延長261.2km(国土交通省:2022年道路統計年報)の山間部の多い路線である。この路線には不通区間が2箇所(青崩峠・地蔵峠)あり、起点から終点までは、途中、市道や林道に迂回しなければ通過できない。この状況から、道路マニアの間では「分断国道」と言われており、整備不足で走りづらかったり、走れなかったりする「酷道」のひとつとしても知られている。

さて、国道152号の不通区間のひとつである「青崩(あおくずれ)峠」は、長野と静岡の県境に位置しており、遠州(静岡県西部)-信州(長野県)間を結ぶ「秋葉街道」が前身という。江戸時代には、地域の居住者だけでなく善光寺の参拝者の往来も盛んで、また日本海側から内陸側に塩を運ぶ「塩の道」としても重要であった。

青崩峠の全景とダート路(飯田国道事務所資料)

その秋葉街道の難所として知られていたのが「青崩峠」。急峻な地形に加え、中央構造線という大断層の活動から岩盤が脆弱で、崖崩れが起こりやすいのだという。

青色の岩盤が脆くも崩れているのが「青崩峠」の由来だという(飯田国道事務所資料)

国道152号は、当初、北の長野県、南の静岡県からそれぞれ道路整備を進めていったが、地盤の脆い青崩峠と地蔵峠は当時の土木技術では歯が立たず、不通区間として残り続けてきた。ちなみに、この不通区間を車両で通行するには、林道等に迂回することになる。

技術の勝利!青崩峠トンネル貫通で期待高まる

(c) osap1111 - stock.adobe.com

この152号線の不通区間の対策のひとつとして、約40年前には青崩峠にトンネルを掘る「青崩峠道路」が計画された。

国道152号 青崩峠道路と迂回路の兵越林道

しかし、青崩峠のトンネル工事も難工事となり、青崩峠道路はルート変更を余儀なくされる。その状況は、昭文社発行のツーリングマップルに「あまりの崩落の激しさに日本のトンネル技術が敗退」と記されたという。

結局、現在迂回路として利用されているのは、青崩峠に隣接する兵越峠を越える兵越林道だ。この林道の静岡県側には草木トンネルがあるものの、そこからさらに長野県側(兵越峠側)にはいくつもの崩落地があり、青崩峠同様トンネルを掘り進めることはできなかった。

青崩峠トンネルの位置図と路線概要図(飯田国道事務所資料)

その青崩峠道路だが、2019年4月、最新の日本のトンネル技術をもってすれば掘り進められるとして、再度青崩峠トンネルが着工された。そして2023年5月に貫通。40年の時を経て、ついに開通の見通しがたった。

青崩峠トンネル貫通の瞬間(飯田国道事務所資料)

青崩峠トンネルが開通すれば、迂回路を通行するのと比べて、所要時間は30分から5分まで大幅に短縮されるという。しかも、落石の多い危険な迂回路に比べると飛躍的に安全性も向上する。まさに日本のトンネル技術の勝利といっていいだろう。

(c) osap1111 - stock.adobe.com

ちなみに、国道152号の不通区間のうち、青崩峠の10km程度はトレッキングができるようだ。山道歩きに自信がある道路マニアは、酷道の現実を見に足を運んでみてはどうだろうか。

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