クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2018.11.03 公開日:2018.11.03

京急と横浜大、横浜市金沢区にて産学官連携の小型低速EVによる実証実験開始

 京浜急行電鉄(京急)、横浜国立大学(横浜国大)、横浜市の3者は産学官連携で、同市金沢区富岡西エリアにおける地域交通課題の解決を目的とした、小型低速EVによる実証実験を10月29日からスタートさせた。

 京急沿線である同エリアは、歩行者や自転車にとって厳しい急勾配の坂道が多く、特に高齢者にとっては駅やバス停へのアクセスも大変だ。日本には丘陵地帯に造成された街区が多いが、それらと同様の交通課題を抱えているといえる。

今回の実証実験の舞台となる横浜市金沢区富岡西エリアの坂道の様子。このように急勾配の坂道が多く、高齢者に限らず、徒歩や自転車での移動が厳しい。画像提供:京浜急行電鉄

 そこで今回の実験では、急勾配の坂道や狭い道路でも運行しやすいよう、登坂性能に優れていて取り回しのいい小型低速EVが使用されることとなった。また路線バスと比べて開放的で容易な乗降が可能なこと、EVであることから低騒音で住環境への影響が少ないといったことも選択理由となっている。

小型低速EVは日立製EVゴルフカーがベース

 小型低速EVは、日立製EVゴルフカー「キャリーECO5M-Z」をベースとし、公道走行が可能なように改装された。ドライバーを含めて4名が乗車可能で、最高速度は時速19km。登坂性能は20度となっている。ドライバーは、京急文庫タクシー社のタクシードライバーが担当。

今回の実証実験で使われる小型低速EV。日立製EVゴルフカー「キャリーECO5M-Z」を改装し、ヘッドランプやウインカーなどを設けて軽自動車ナンバーを取得し、公道走行を可能とした。画像提供:京浜急行電鉄

ルートは坂道の移動・買い物・公共交通へのアクセスの支援

 ルートは2種類。まず「富岡第1地区ルート」は、富岡西1丁目および2丁目と地域ケアプラザ(※1)を結ぶルート。急勾配の坂道の移動支援と路線バスの運行頻度の低い地域での補完的機能として設定された。期間は10月29日(月)から11月7日(水)までの10日間。

※1 地域ケアプラザ:横浜市の福祉および保健サービスを提供する総合施設

 もう1つの「富岡第3地区ルート」は、富岡西3丁目および4丁目の買い物支援、富岡西5丁目および6丁目と地域ケアプラザを結ぶために設定されたルート。バス路線までの補完的機能も考慮されている。期間は11月9日(金)から18日(日)までの10日間だ。

 運行形態としては、小型低速EV2台による定時定路線の循環運行となっている。日中に1時間あたり2~3便が運行され、乗車運賃は無料。乗車および降車は設定された停留所で行う形だ。今回の実証実験で利用できるのは富岡西地区在住の方のみで、事前登録したモニター限定となっている。

今後の計画は? 自動運転車による実験は?

 今後の商用サービスなどの計画があるのかを京急広報に確認したところ、今回の実証実験を通して課題や安全性などを洗い出した上で、検討していくとした。また自動運転の可能性については、安全性などの確認ができれば検討もあり得るということだった。ちなみに日立製EVゴルフカー「キャリーECO5M-Z」のシリーズモデルとして、電磁誘導方式の自動運転が可能な「キャリーECO5-Z」が存在している。

京急と横浜国大と横浜市は交通課題の解決などで協定を締結

 また、今回の実験で横浜国大がどのように参画しているのかというと、ベースには2018年7月に京急と横浜国大が締結した「産学連携の協力推進にかかわる協定」がある。

 横浜国大は、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム(※2)にサテライト機関として参画しており、「ストレスなく、楽しく、安全に、安心して移動できる都心」と「自家用車に頼ることなく、誰もが無理なく出かけられる郊外」という2つのビジョンを掲げ、輸送システム、交通案内システム、乗り継ぎ空間などの交通システムに関する研究開発を行っている。これまで、市街地における高頻度小型乗合車両やカーシェアリングの運用などについて成果を上げてきた。

 今回の協定では、京急の有するまちづくりのノウハウと、横浜国大がCOIプログラムにおける活動で得た交通に関する研究成果を融合させ、新交通システムによる京急沿線地域の高齢化や人口減少などによる交通課題の解決と、持続可能な郊外住宅地の実現を目指していくとしている。

※2 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム:文部科学省が10年後の目指すべき社会像(ビジョン)を見据えた、チャレンジング&ハイリスクな研究開発を最長で9年度(2013~2021)にわたって支援するという、産学官連携プログラム。

 また、京急は横浜市とも「京急沿線(横浜市南部地域)における公民連携のまちづくりの推進に関する連携協定」を2018年7月に締結。京急沿線の横浜市南部地域において、将来を見据えた沿線地域の魅力向上に向け、総合的なまちづくりを共同して推進していくとしている。

2018年11月1日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

交通課題解決への取り組みに関連する記事

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(10月31日まで)
応募はこちら!(10月31日まで)