【NSXの系譜】今なお色褪せない初代NA1型はホンダ初の本格スーパーカー!
「NSX」は90年代のフェラーリにも大きな影響を与えたとされる。日本のクルマ史上だけでなく、世界的に見てもエポックメイキングな1台だった。
8月4~6日に幕張メッセで開催されたヒストリックカーや旧車の展示・即売会『AUTOMOBILE COUNCIL(オートモビルカウンシル) 2017』。同展示会には、国内外の自動車メーカーが複数出展し、ホンダもそのひとつ。ホンダは「NSXの系譜」というテーマを掲げ、初代(NA1)、初代の改良型の「NSX-R」(NA2)、そして現行モデルの2代目を展示した。
これまで2代目に関しては複数回紹介してきたが、今回は初代NSXを取り上げる。
初代は、ホンダが初めて開発した本格的なスーパーカーであり、1989年2月にプロトタイプが披露され、1990年9月13日に初代が正式に発表された。翌14日から、当時存在したチャネルであるベルノ店での販売を開始したのである。それから四半世紀以上の時間が流れているが、今もって色褪せていないデザインなのがわかる。
フロントビュー。リトラクタブル方式のライトであることも手伝って、見るからにCd値(空気抵抗係数)が低そうなのがわかる。空気が車体上面に沿って流れていくのが想像するに容易。
オールアルミ・モノコックボディを量産車として初めて採用
全高の低さはスーパーカーの証のひとつといっていい1170mm。
NSXはスーパーカーとしての高い運動性能を実現する一方で、運転のしやすさも高次元で両立させるという目標が掲げられ、それを実現すべくさまざまな新技術が投入された。
そのひとつが、量産車としては当時世界初となるオールアルミ製のモノコックボディを採用したこと。さらに、アルミ合金の採用はボディにとどまらず、エンジン、シャシー、サスペンションなどの足回り、シートの構造部材に至るまで多用された。
アルミ合金の何が優れているかというと、もちろん軽さである。アルミ合金はスチールに対して1.4倍の板厚で同等の面剛性を得られ(NSXではアルミの押し出し材を使うことで剛性面もスチール製を上回るという)、それでいて比重は3分の1ほどしかなく、車体を軽量化するための素材としてうってつけである。
NSXのオールアルミ・モノコックボディは、スチール製のボディと比較すると、約140kgの軽量化を達成しており、ホワイトボディ(この場合のホワイトボディとは骨格構造のみのこと)での重量は210kg。さらにボディ以外にもアルミ合金を多用したことから、トータルで約200kgの軽量化を達成したそうである。ちなみにNSXの車重は5速MT車で1350kg、4速AT車で1390kgだ。
サイドビュー。キャビンは超音速ジェット機をイメージしており、フロント側に大きく前に進めた形の「前進キャノピー・デザイン」。水平方向に311.8度という広い視界を誇った。
3L・V6DOHCの新型「VTEC」エンジンをMRで搭載!
エンジンは(リア)ミッドシップとして、キャビン後方にレイアウトされている。トランクスペースは154L。
軽量・コンパクトを目指して新開発されたエンジン「C30A」は、自然吸気型の水冷・2977cc・90度V型6気筒DOHCの「VTEC」仕様。(リア)ミッドシップ・レイアウトで横置きに搭載された。ミッションは5速MTと4速ATが用意され、5速MT車のネット値(車両に搭載した状態での測定数値)で、最大出力は当時の馬力規制値いっぱいの280ps(206.0kW)/7300rpm、最大トルクは、30.0kgm(294.2N・m)/5400rpmだった。
吸排気特性に優れる90mmというビッグボアと78mmというショートストロークとなっており、高圧縮比10.2をセンタープラグのペントルーフ型(本を中央のページで開いて伏せたような形状、家屋でいう切妻屋根の形状)燃焼室で可能としたスポーツ型エンジンである。
なおVTEC(ブイテック)とは、当時のホンダの先進技術を注ぎ込んだ技術のことで(NSX以外のさまざまなクルマのエンジンに採用されていた)、「Variable valve Timing and lift Electronic Control system」の略称。エンジンの回転数に合わせて吸排気バルブを調整する「可変バルブタイミング・リフト機構」のことだ。
さらに、低・中速域から高回転域まで谷間のない出力特性と高いレスポンスを得るため、VTECに加えてチャンバー容量切り替え型のインテークマニホールドシステムを採用している。
またNSXのエンジン開発においてホンダは、鍛造成形と切削性を大幅に改善した新しいチタン合金を開発。それをコンロッドに採用し、約700回転分の高回転化を達成したという。
リアビュー。エキゾーストは左右2本。
NSXのスペック
初代は、栃木に少量生産の専用工場が新たに建設され、クラフトマンシップ方式で生産された。注文が殺到したこともあり、スーパーカーとしてはかなりの量産台数といえる、1日25台規模での生産が行われた。価格は、地元の栃木だと5速MT車が800万円(税別)、4速AT車が860万円(税別)。東京だと3000円プラスされる形で、遠距離ほど価格が上がる形だった。
この低い全高を実現するため、従来と同等の性能ながら30%も小型化したフルオート・エアコンも新開発された。
【サイズ・重量】
全長×全幅×全高:4430×1810×1170mm
ホイールベース:2530mm
トレッド(前/後):前1510mm/後1530mm
最低地上高:135mm
室内長×室内幅×室内高:970×1460×980mm
車両重量:1350kg
【エンジン】
型式:C30A
種類:水冷V型6気筒横置き
排気量:2977cc
最高出力:
(5速MT)280ps/7300rpm
(4速AT)265ps/6800rpm
最大トルク:30.5kgm/5400rpm
2017年8月21日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)