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最終更新日:2017.06.13 公開日:2017.06.13

フィラデルフィア、ワシントンD.C.、アントワープ、重慶。 世界中で「歩きスマホ専用レーン」が作られていた!

ワシントンD.C.の歩道に出現した、歩きスマホ専用レーン。© Mail Online News

 消費者庁が行った2015年の調査によると、わが国のスマホ所有率は、6歳以上が53.1%、20歳台は92.9 %にも登るという。
 スマホ人口が増え続ける中、日本でも歩きスマホが問題になっているが、これは世界の各都市でも同様のようだ。そして、欧米や中国では、歩行者専用道で電話をしたり、テキストを書いたり、歩きスマホをする人のための専用歩道「歩きスマホ専用レーン」なるものが登場、ユニークすぎる?対策が話題になっている。

世界の歩きスマホ専用レーン

 歩きスマホをする人のためのレーンは、すでに2012年にアメリカのフィラデルフィアで試験的に導入されている。
 NBCが伝えるところによると、「E-LANE」と呼ばれるスマホ使用者専用の道は、フィラデルフィア市が設置したもので、一週間だけの試みとして行われた。同市市長は、フィラデルフィアでは、歩行者が4時間に1人交通事故にあっており、歩きスマホは目を閉じて横断歩道を渡るようなものであるとコメントをしている。ニュース映像は、この初めての試みに戸惑いを見せている市民の様子や、こういったレーンの出現とともに歩きスマホに反対するプラカードを持った市民がデモしている様子を伝えている。

フィラデルフィアで試験的に行われた「歩きスマホ専用レーン」のニュース映像

 2014年にはワシントンD.C.にスマホをする人専用レーンが出現した。Yahoo Techの記事によると、歩きスマホ専用のレーンに隣接してスマホ禁止レーンがダウンタウンの歩道に作られており、これはナショナル・ジオグラフィックがテレビ番組用に「人々がどんな行動にでるか」を確認するための企画ものだったという。得られたデータの中から、以下のような反応があったことが報告されている。

・ほとんどのスマホ利用者は画面に集中しているので、レーンに気がつかなかった。
・気がついたうちの少人数しか、実際にレーンの変更をしなかった。
・もっとも多かったリアクションは、レーンの写真を撮ることだった。

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スマホ会社の宣伝?

スマホ会社による、歩きスマホ専用歩道

中国、重慶市の歩きスマホ専用レーン。© Meixin.co

 同じ年に中国南西部、重慶市の目抜き通りの歩道にスマホ専用レーンが出現すると、このニュースは全世界のメディアで取り上げられた。CNNによると、これはワシントンD.C.のニュースにヒントを得て作られたもので、レーンの長さは50メートル、幅3メートル。携帯画面にくぎ付けの歩行者が通行の邪魔になるという苦情に対応するのがレーン設置の理由であるとのことだ。一方で、ヨーロッパの多数のメディアは、このプロジェクトがスマホ会社による話題集めを目的としたキャンペーンにすぎないと批判している。

アントワープにあるショッピングストリートの歩きスマホ専用レーン。© Mlab / REX Shutterstock

 同じくスマホ会社が作ったレーンとして、ベルギーの古都、アントワープのものが挙げられる。2014年、アントワープのシッピング通りにある歩行者天国に「Text Walking Lane」と書かれた専用レーンが出没した。欧州のメディアは、中国やアメリカについでいよいよヨーロッパでも歩きスマホ専用レーンがお目見えしたとニュースとして取り上げた。

 ベルギーのニュースサイトHln.beによると、これは現地の携帯会社Mlabが行ったものだという。Mlabは、歩きスマホによりスマホを落として支障をきたしているという問い合わせが1日35,000件も届くため、対策として専用レーンのペイントを施したと述べている。しかし、このレーンはアントワープ市に許可を得ずに行ったらしく、市との間に問題が生じている。アントワープ市の代表は、「スマホ専用レーンは法的に許可されたものではなく、私たちにとって、あれは単なる落書きにすぎません。ペイントの駆除にかかった清掃費は会社に請求します」、と手厳しいコメントを残したことが伝えられている。

大学にもお目見え

ユタ州バレー大学のユーモア溢れるレーン。© UTA VALLEY UNIVERSITY MARKETING & COMMUNICATIONS

 2015年、大学構内にも初めて歩きスマホ専用レーンが出現した。CNNは、ユタ州バレー大学の階段にできたこのレーンについて、「歩行用」「急ぎ用」「歩きスマホ用」の3つのレーンに分けられているとリポートしている。同大学の広報事業担当によると、これは歩きスマホ事故対策にも繋がらなくはないが、元々は冗談の材料を意識して作ったものであると話している。

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大切な命を守る

歩きスマホ事故の防止対策

 歩きスマホ専用レーンの試みは、いずれも一時的なもので、公共機関が長期的に導入した例は現時点ではない。
 東京消防庁が行った調査によると、2012~2016年までに歩きスマホや自転車での「ながらスマホ」の事故により193人が救急搬送され、2016年は単年50人と過去5年間で最も多くなっている。

 いうまでもなく歩きスマホによる事故の増加は、全世界的に社会問題となっており、各国でも様々な対策を行っている。以前、紹介したスマホの視点の先にある地面に信号を埋め込むというのも、こういった事故から大切な命を守ろうという対策のひとつである(本文末「歩きスマホ事故対策に関する記事」参考)。

 歩きスマホの危険性と留意点について、分かりやすく紹介したこんな動画もある。

 安全で健康な職場を築くためのアメリカの機関Office of Compliance(OOC)は、歩きスマホによって起こる事故防止対策として、以下のような項目を挙げている。

・歩きながら電話したりメッセージを打たないこと
・電話したりメッセージを打つ場合は、歩道の端に移動し静止して行うこと
・歩きスマホをしながら道路を横断しないこと
・歩きながらイヤホンで音楽を聞かないこと
・回りの環境に注意を払うこと

 歩きスマホ専用レーンは、歩きスマホをする人との共存を図る面白い取り組みではある。しかし今日、スマホの普及率がここまで高くなると、歩きスマホを前提とした道路作りには無理があるといわざるを得ないだろう。やはりここは、道路利用者一人ひとりが、歩きスマホを控えるほかはないだろう。

歩きスマホ事故対策に関する記事:地面に埋め込まれた信号機!?「歩きスマホ」対策として、ヨーロッパで登場。

2017年6月13日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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