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最終更新日:2017.06.08 公開日:2017.06.08

【動画あり】国産車初搭載の「歩行者保護エアバッグ」、その仕組みに迫る!

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平成28年度JNCAPの衝突安全性能評価で199.7点を出し、同年度の1位だけでなく、歴代の1位にもなったスバル「インプレッサ」。フロントウィンドウ下部に展開しているのが、展開された「歩行者保護エアバッグ」。

 国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が5月29日に発表した「自動車アセスメント」、通称「JNCAP(ジェイ・エヌキャップ)」。衝突安全性能評価の記事で、スバル「インプレッサ」が総合得点199.7点を獲得してファイブスター(5つ星)を受賞したことをお伝えしたが、その大きな原動力となったのが国産車では初めて搭載される「歩行者保護エアバッグ」だ。

 同装備により、同車は総合得点が歴代最高を記録して「衝突安全性能評価大賞」を、また特筆すべき安全装置を初めて備える車種として「衝突安全性能評価特別賞」も獲得した。

 ここでは、歩行者保護エアバッグが展開する様子を動画で披露するほか(最終ページに掲載)、どのように装置が働いているのかを解説する。

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歩行者保護エアバッグのアップ。これだけのサイズのエアバッグを、インフレーターという装置がアルゴンガスを用いて0.07秒というわずかな間に一気に膨らませるため、展開時は相当大きな音が出るという。基本的には運転席や助手席のエアバッグと同じで、火薬も使う。

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展開された歩行者エアバッグはかなりガスが詰まっており、かなり硬い。

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いったいどのように歩行者を保護するのか?

歩行者保護エアバッグは歩行者をどう守る?

 歩行者保護エアバッグは、接触事故を起こして歩行者がクルマに乗り上げてしまった場合に作動する。乗り上げた歩行者が頭部をぶつけそうな部位で、硬いために危険なのがAピラーやワイパーのあるフロントウィンドウ下部だ。

 現代のクルマのボンネットは凹むことで衝撃を逃がすことのできる柔構造となっているが、クルマの構造上の問題で、フロントウィンドウの下部やAピラーなどは柔らかくすることはできない。そのため、そこに頭部を衝突させた際のダメージを緩和させることが課題となっていた。

 そこで、そうした硬い部分に歩行者の頭部が当たる前に膨らませて、直接ぶつかるのを防ぐという考えの下に開発されたのが歩行者保護エアバッグだ。

歩行者保護エアバッグはどの程度頭部を守れるのか?

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頭部保護性能試験の様子。エアバッグのあるクルマ専用の試験ではなく、インプレッサ以外はエアバッグのない状態で同じ試験が行われる。

 JNCAPの衝突安全性能評価の試験項目のひとつに「歩行者保護性能評価」がある。そして、その中に「頭部インパクター」という頭部を模した衝撃計測装置を実際にボンネットやフロントウィンドウなどにぶつけて試験を行う「頭部保護性能試験」がある。

 これは、頭部インパクターをボンネットなどに向けて時速40km(クルマの衝突速度で時速50kmに相当)で発射し、衝撃点における頭部の「傷害値」を計測し、頭部の傷害の程度を5段階で評価するというものだ。なお、平成27年度までは時速35km(クルマの衝突速度は時速44km)で頭部インパクターが発射されており、平成28年度からより厳しい試験となった。

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頭部保護性能試験の結果。歩行者が衝突する可能性のあるボンネット全域をメッシュ化し、各ポイントの傷害値を5段階(緑・黄・橙・茶・赤)に分けて色で表している。緑や黄が歩行者の頭部が受ける傷害値が低く、茶や赤が高い。A車はインプレッサのことで、全面的に低いことがわかる。なお、メッシュの全ポイントを頭部インパクターで試験をするわけではなく、基本的には10か所にぶつける(状況により、それ以上になることもある)。

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作動させるための仕組みは?

どうやって人とそれ以外の物体とを判別?

 歩行者以外と衝突した場合に歩行者保護エアバッグが展開してしまうのは望ましくないことから、バンパーにセンサーを内蔵して人と接触したときにのみ展開するようにしている。センサーは先端に圧力センサーのついたシリコンチューブだ。シリコンチューブが潰れるとその圧力の変動が圧力センサーに伝わり、エアバッグを展開するというわけだ。これにより、人と衝突したときにだけ反応するようになっている(厳密には、人と似た形と質量のものと衝突したときにも反応してしまうことがあるという)。

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歩行者保護エアバッグを展開させるためのセンサーはバンパー内にある。黄色の楕円で囲っているのが、シリコンチューブが入ったセンサーカバー。赤丸で囲ったシリコンチューブの先端に圧力センサーがある。人がバンパーに接触するとシリコンチューブ内の圧力が変化するので、それを捉えてエアバッグを展開させる。

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シリコンチューブを持つ、株式会社SUBARUの第一技術本部 車両研究実験 第二部部長の古川寿也氏。同社のクルマの安全装備などの開発に携わる。

今後の同社のクルマへの搭載予定は?

 現在、歩行者保護エアバッグはインプレッサと、その姉妹車で今回は同一車種として同時に受賞したクロスオーバーSUV「XV」の2車種に搭載されている。今後の歩行者保護エアバッグの搭載について、「モデルチェンジをして『スバルグローバルプラットフォーム』がベースとなった際に、搭載していく予定」とした(株式会社SUBARU 第一技術本部 車両研究実験 第二部部長 古川寿也氏)。

 ちなみにスバルグローバルプラットフォームは、今回受賞したインプレッサから採用されている、今後の同社のクルマすべてに採用される計画の新型プラットフォーム。詳しくは、こちらで紹介しているのでご覧いただきたい。

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歩行者保護エアバッグの展開の様子を動画で!

試験における歩行者保護エアバッグの動作の様子

 最初の動画は、NASVA提供の試験での動作の様子。頭部インパクターが発射される前は、歩行者保護エアバッグは膨らんでいないが、発射と同時に一瞬で展開。頭部が衝突する前にきちんと展開して保護できるかどうかも試験の一部になっているというわけだ。歩行者保護エアバッグは車体中央のボンネット後端とワイパーの間の狭いエリアから膨らむ仕組み。

NASVAで行われた試験の様子。頭部インパクターは、平成28年度からはメーカーの試験結果を検証する形で、通常は10か所にぶつける(状況により最大で20か所になる場合も)。ボンネットやフロントウィンドウが凹んだり割れたりした場合は、新しいものと交換して試験が行われる。

 そして5月29日のJNCAP発表会で実施されたデモの様子。実機を用いるとあまりにも大きな作動音が発生するため、このときは窒素ボンベを用いて模擬的に行われた。展開するまで実機は約0.07秒だがデモは2~3秒ほどなので、歩行者保護エアバッグが中央からムクっと顔を出して左右に広がっていくのがよくわかるはずだ。

5月29日の自動車アセスメント発表会でのデモ。実機は「インフレーター」と呼ばれる装置がアルゴンガスを使って、人が瞬きする間に2回も展開できるという超高速で一気に膨らませる仕組みだ。

 平成28(2016)年は67年ぶりに交通事故死者数が4000人を切った(記事はこちら)。確実に毎年減ってきているが、その半分を歩行者と自転車が占めていることは見過ごせない。そんな状況に対し、歩行者保護エアバッグは自動車に乗り上げてしまった人の頭部を保護するのに有効であることは間違いないだろう。ぜひ他メーカーも同様のシステムを取り付け、交通事故死者数のさらなる低減を目指してもらいたいところだ。

2017年6月8日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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