クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2017.08.29 公開日:2017.08.29

空前絶後のスーパーカー「カウンタック」を徹底解説

sn170824-01-01.jpg

ランボルギーニ「カウンタック LP400」。あまりにも車高が低く、迫力のあるローアングルから撮るためにはヒザをついてもまだ高いぐらい。全高は1mを7cmほどしか超えない。

 8月4~6日に幕張メッセで開催されたヒストリックカーや旧車の展示・即売会『AUTOMOBILE COUNCIL(オートモビルカウンシル) 2017』。ランボルギーニの正規代理店のランボルギーニ麻布・横浜の両店による共同ブースで展示されたのが、4台のランボルギーニだ。

 それについては同展示会のリポート第2弾の「イタリア車編その1」の中でお伝えしたとおりだが、その中でも極めつけ、特に70年代スーパーカーブーム世代にはたまらなかったのが「カウンタック LP400」。当時のブームの中で主役だった1台で、今回は同車をピックアップする(展示車両は1976(昭和51)年式)。

sn170824-01-03.jpg

LP400は、乗り降りすら大変そうなことが想像できる車高の低さ。ちなみにひとつ向こうの黒いボディは「ディアブロGT」、その向こうの緑のボディは「アヴェンタドールS」、さらにその向こうは「ウラカン ペルフォマンテ」。どれもカウンタック以降のランボルギーニの伝統として、全高が非常に低い。

sn170824-01-04.jpg

斜め後方から。直線のみで構成されているように見えるボディだが、リアタイヤの後方部分は曲線を持っている。またこの角度から見ると、サイドラインも車体後方で曲線を描いている。

→ 次ページ:
カウンタックはどんな経緯をたどったスーパーカー?

ボディをデザインしたのは天才ガンディーニ!

sn170824-01-14.jpg

テール部分。フロントに加え、リアにもバンパーがない。それまではあるべきものだったパーツをなくしてしまった点は、デザイナーのガンディーニのセンスのすごさを示すポイントのひとつだろう。

 カウンタック最大の特徴といったら、やはりこの突き刺さりそうな、文字通りのウェッジシェイプ(くさび形)のデザインだろう。

 これを手がけたのは、イタリアの著名カロッツェリア(デザイン工房)のひとつであるベルトーネのチーフ・デザイナーで、あるマルチェロ・ガンディーニ。27才の若さで先代のランボルギーニ「ミウラ」をデザインした天才が再び起用され、革命的なカウンタックのデザインを世に送り出したのである。

sn170824-01-10.jpg

変形の六角形をしたフロントウィンドウ。この傾斜角は21度だという。ボンネットとの継ぎ目に段差がないこともデザイン上の特筆すべき点だった。

→ 次ページ:
市販モデルLP400の誕生までは難産を極めた

デザインは当時の人々の度肝を抜いた

sn170824-01-05.jpg

真後ろから。このようなデザインをしたクルマはカウンタック以前には存在しておらず、クルマのデザインに関して常識を変えた1台といえる。

 カウンタックはコードネーム「Tipo112」として開発がスタートし、1971(昭和46)年のジュネーブモーターショーで「カウンタック LP500」として発表された。クルマ全体のイメージはもちろんのこと、細部においても先例のない、それまで誰も見たことがなかったデザインであり、大勢の人の度肝を抜いた。

 しかしその斬新過ぎるデザインに加え、5LのV12エンジンで440馬力を叩き出し、最高速度は時速300kmを超えると宣伝したことから、市販を疑う人たちも多かったそうである。

 なお当初LP400ではなくLP500だった理由は、排気量が5Lを目標にしていたことに由来する。ちなみにLPとは、イタリア語でエンジンの”縦置き”を意味する「Longitudinale」、リア・ミッドシップであることから”後方”を意味する「Posteriore」から取られている。また市販モデルのLP400の400は、排気量がミウラと同じ4L(3929cc)であることを意味する。

sn170824-01-07.jpg

斜め後方、やや高いアングルから。リアのランプは、四角い部分のみ点灯する。3つのランプを囲む大きな赤い部分はブレーキランプではなく、点灯しない。

→ 次ページ:
革新的なデザインは大きな欠点を内包していた…!

排熱問題で大いに苦労することに

 カウンタックの開発はチーフエンジニアであるパオロ・スタンツァーニの指揮の下に進められた。実走可能なLP500のプロトタイプの開発まで何とかこぎづけ、さらに市販を目指して開発が続けられていく。

 しかし、走り出して排熱処理がうまくいかないボディであることが判明し、オーバーヒート問題が大きくのしかかる。それに対し、ルーフ後方左右のエアインテークをさらに強化するため、ボックス状に突き出したエアスクープや、左右のドア後方からホイールアーチへかけてのNACAダクトを設けることで、解決が図られた。なおLP500はこれらがなく、ルーバー状のエアインテークはあったが、ボックス状のエアスクープはなく、スッキリとしていた。

sn170824-01-13.jpg

LP500ではなかったエアスクープ(上方にでっぱったボックス状のエアインテーク)。発生したV12エンジンを冷却するため、より多くの空気を取り込む必要があったことから、新たに設けられた。LP500はこれがなく、ルーバー状のエアインテークのみだったので、もっとスムーズなラインを描いていた。

sn170824-01-12.jpg

黒い凹みがNACAダクト。NACAとは米宇宙機関NASAの前身組織のことで、この形状のエアインテークを開発した。このNACAダクト内にドアボタンがあり、カウンタックには一般的なドアノブは存在しない。なお、ダクト下のエンブレムはベルトーネデザインであることを意味するもの。

→ 次ページ:
それでもカウンタックは市販を開始する!

1974年、遂にLP400が販売開始

sn170824-01-08.jpg

まさに難産の末に産み出されたといっていい、「カウンタック LP400」。しかし、このカウンタックが存在しなければ、”スーパーカー”と呼ばれるカテゴリーのクルマは、今とはまた違ったデザインになっていたかも知れない。

 カウンタックは排熱処理の問題などで開発が進まないところにもってきて、さらなる不運が襲う。ランボルギーニが経営危機に陥ってしまったのだ。

 それでも何とか開発は続けられ、遂に1973(昭和48)年のトリノモーターショーで市販モデル「カウンタック LP400」が披露される。ただし5Lエンジンの開発は断念されて4Lとなり、最高出力も375馬力となった。そして1974(昭和49)年に実際に販売が始まった。

 なおLP400の最高速度は、当時のスーパーカー好きの少年たちの間で流行ったカードなどには時速300kmと記されていたが、現在ランボルギーニは公式に時速309kmとしている(時速0→100kmは公式に5.4秒)。ただし古い資料によれば、当時の海外の著名な自動車専門誌が実測したところでは、出ても時速280km台だったという話もある。

sn170824-01-06.jpg

デザイン重視のあまり、後方視界があってなきがごとしであることがわかる真後ろ・ローアングルからの眺め。ただし、このわずかな隙間に合わせれば、バックミラーに後方の眺めは映る。しかし、車庫入れなどではあまりにも死角が多いため、シザーズドアを開けて身体を半分乗りだし、直接後方を見ながらバックしないとならなかった。しかし、それが”カウンタック使いの正しい姿”などとまでいわれており、その姿勢での車庫入れに憧れた人も多かった。

→ 次ページ:
カウンタックの発音では海外では通じない!?

正確にはカウンタックではなくクンタッシだった!

sn170824-01-09.jpg

ポップアップドアとも呼ばれ、上に跳ね上がるカウンタック以降のランボルギーニのフラッグシップ・マシンの伝統であるシザーズドア。実はスペース的な問題で、一般的な横開きの機構を設けられなかったことから採用されたそうである。この時代にドアミラーなのも先進的。

 ちなみに、カウンタックは「COUNTACH」とイタリア語で書くが、これはランボルギーニの本拠地(イタリア北部のエミリア=ロマーニャ州ボローニャ県サンターガタ・ボロニェーゼ)があるピエモンテ地方の方言(ピエモンテ語)で、驚きを表す感嘆詞である。訳すと、びっくりした、驚いた、という意味である。

 一説によれば、ベルトーネのスタッフ(警備員とも)が、ランボルギーニ側のスタッフも含めてそのデザインを内部向けに披露した際に、「COUNTACH!」と叫んだのが由来だという(ほかにも説がある)。なおランボルギーニは伝統として、それまでスペイン語系の闘牛に関する言葉を採用してきたが、それとは異なるので珍しいといえる。

 また日本ではカウンタックとなっているが、本来は「クンタッシ(クンタッシュ)」が実際の発音に近い。ちなみに、日本でカウンタックという呼び方がされるようになったのは、海外の情報を得にくかった70年代当時に、大手クルマ専門誌2誌の編集長同士が話し合って決めたとされている。おそらく、COUNTACHというスペルを英語読みしたのだろう。

sn170824-01-11.jpg

サイドウィンドウは下半分のみが開く構造。上半分ははめ殺し。

→ 次ページ:
カウンタックの生産台数とスペック

カウンタックは全モデル合計で約2000台が生産

sn170824-01-02.jpg

ホイールはカンパニョーロ製。前は14インチ、後ろは15インチ。展示車両もオリジナルのまま同社製。

 LP400は1978年までに合計149台(151台説もある)が生産された。その内訳は、74年が23台、75年が62台、76年が36台、77年が28台。

 1978年以降、ランボルギーニは幾度も倒産の危機すら迎えることになるが、カウンタックだけはマイナーチェンジを続けながら生産が続けられることになる。

 1978(昭和53)年に登場したのが、オーバーフェンダーが特徴の「LP400S」(エンジンの最高出力などはデチューンされた)。そして1982(昭和57)年には排気量を4.7Lにアップした「LP500S」が誕生(オプションのリアウィングを装着していることが多い)。

 その後、1985(昭和60)年には「LP5000 クワトロ・バルボーレ」に進化。排気量を5.2Lとし、4バルブ化も行ったことで、455馬力を絞り出した(ここでやっと最初のLP500の仕様を達成)。

 1988(昭和63)年には、ランボルギーニ創立25周年を記念した限定モデルの「Anniversario(25thアニバーサリー)」が登場。そしてカウンタックは1990(平成2)年に生産終了となって後継の「ディアブロ」にバトンタッチしたのである。なお、各モデル合計で約2000台が生産された。

カウンタックLP400のスペック

 現在、ランボルギーニ公式サイトではLP400のスペックが掲載されていないことから、古い資料なども当たったところ、全高や車重などは諸説あったため、複数の数値を紹介した。

サイズ・重量
全長×全幅×全高:4140×1890×1070mm(全高は1030mmとする説もある)
ホイールベース:2450mm
トレッド(前/後):1500/1520mm
重量:1300kg(ほかに1065kg、1200kg説もある)

足回り
サスペンション:(前後とも)ダブル・ウィッシュボーン
ブレーキ:(4輪とも)ベンチレーテッド・ディスク

エンジン
種類:60度V型12気筒縦置き
排気量:3929cc
最高出力:375ps(275.8kW)/8000rpm
最大トルク:36.8kg-m(360.9N・m)/5500rpm

sn170824-01-15.jpg

猛牛をあしらったランボルギーニのエンブレム。創設者のフェルッチョ・ランボルギーニはおうし座だからとされている。

2017年8月29日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

AUTOMOBILE COUNCIL 2017関連記事はこちらから!

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(4月30日まで)
応募はこちら!(4月30日まで)