2023年04月23日 18:00 掲載

交通安全・防災 青信号に従っていても起きる交差点事故|長山先生の「危険予知」よもやま話 第17回

2022年8月に逝去されるまで、JAF Mate誌の人気コーナー「危険予知」を監修されていた大阪大学名誉教授の長山先生。本連載は、誌面掲載時に長山先生からお聞きした本誌では紹介できなかった事故事例や脱線ネタを紹介しています。

話・長山泰久(大阪大学名誉教授)

青信号に従っていても起きる交差点事故

編集部:今回は住宅街の交差点を渡ろうとしている歩行者側からの問題です。手前から斜め横断気味に渡るケースで、よく見かけるケースです。でも、青信号で渡っていて、車に轢かれそうになるなんて、想定外ですね。

長山先生の「危険予知」よもやま話 第17回|問題写真|くるくら

矢印

長山先生の「危険予知」よもやま話 第17回|結果写真|くるくら

長山先生:そこが今回の問題のポイントで、横断歩道を青信号に従って横断していれば歩行者の安全も確保されていると思いがちですが、残念ながら歩行者の安全が完全に守られているとは言えません。歩行者用信号が青でも、同じ向きの車用信号も青なので、青信号で右左折してくる車のドライバーが歩行者を見落としてはねたり、接触することがあるからです。

編集部:それが今回のケースですね。

長山先生:そうです。今回のように歩行者が交差点の左側を横断する場合、右前方から右折してくる車、さらに右後方から左折してくる車との関係が問題です。今回とは逆に交差点の右側を横断する場合、左前方から左折してくる車と左後方から右折してくる車に注意する必要があります。

編集部:要するに、交差点を渡る際は横断歩道上で絡む可能性がある右左折してくる車に注意しておく必要があるということですね。でも、今回のように正面から曲がってくる車は見えますが、後方から曲がってくる車に注意するのは難しいですね。

長山先生:そのとおりで、右前方あるいは左前方から右左折する車は視界に入りやすいので、歩行者としては対処しやすいと考えられますが、右後方または左後方から来る車については、視界に入りづらいうえ、その存在を考えに入れて横断している人は少ないので、よけいにドライバーのミスが事故に直結してしまいます。

編集部:逆に今回のように正面から曲がってくる車はお互い視界に入りやすいぶん、まさかドライバーから見落とされているとは思わないかもしれません。

長山先生:そうですね。そこが落とし穴と言えます。高齢者のように足元を気にして下を向いて横断している人は、曲がってくる車に気づかない可能性がありますが、正常に前方に目を向けて横断している歩行者には、車の存在は視界に入って気づいているはずです。しかし、問題は車のドライバーも歩行者の存在に気づいているかどうかです。両者が気づき、相手の行動に適した行動を自分も取らなければ事故になってしまいます。

編集部: なるほど。自分が気づいているからと言って、必ずしも相手も気づいているとは限らないということですね。でも、今回のように車にはピラーの死角があることを歩行者で知っている人は少ないでしょうね。

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