2023年03月05日 17:20 掲載

交通安全・防災 追突事故が起きやすい、施設への左折!|長山先生の「危険予知」よもやま話 第15回

2022年8月に逝去されるまで、JAF Mate誌の人気コーナー「危険予知」を監修されていた大阪大学名誉教授の長山先生。本連載は、誌面掲載時に長山先生からお聞きした本誌では紹介できなかった事故事例や脱線ネタを紹介しています。

話・長山泰久(大阪大学名誉教授)

追突事故が起きやすい、施設への左折!

編集部:今回は前を走る車が交差点でなく手前の施設に入ろうと減速したため、追突しそうになるというケースです。交差点の角にはファミリーレストラン以外にもコンビニなどもあるので、注意しないといけませんね。

長山先生の「危険予知」よもやま話 第15回|問題写真|くるくら

矢印

長山先生の「危険予知」よもやま話 第15回|結果写真|くるくら

長山先生:そのとおりです。国道はもちろん、県道や市道の沿道にはレストランやガソリンスタンド、コンビニなどの施設があり、そこに進入する左折車があることを想定していないといけません。しかも、そのような車は交差点で左折するより減速が急になります。

編集部:交差点より手前なので、思ったより早く減速することになりますからね。

長山先生:減速するタイミングが早いのに加えて、交差点に比べて進入口が狭いところが多いですし、そもそも歩道に入る直前で 一時停止が義務付けられていますからね。

編集部:なるほど。大きな交差点では、横断する歩行者などがいなければ、あまり減速せずにスーッと曲がっていきますが、施設の駐車場の入口は狭いうえ、歩道があれば手前で停止しますね。

長山先生:そうです。後続車のドライバーが前車の動きを予測しておかなければ、追突してしまう危険性が高くなります。

編集部:急いでいると、つい前車も交差点で曲がるものと思い込み、追従しそうになるので注意が必要ですね。

長山先生:そのような「思い込み」や「決め込み」は実に厄介なエラーで、いったん思い込んでしまうと、間違いであることになかなか気づかないものです。以前、私が住む大阪府枚方市内で起きた事故事例約2000件の中から、同じ場所で起きた左折時のウインカーの読み違いによる事例を抽出したところ、今回とほとんど同じケース(下図 事例1)がありました。これも前車が左折する場所を前方の大きな交差点と「決め込んで」いたことによるものです。

長山先生の「危険予知」よもやま話 第15回|事例1|くるくら

編集部: 前車(a)は交差点手前の道路Bに曲がろうとしたのですね。

長山先生: そうです。後続車のb車はa車が広い道路で左折するものと考えて、減速せずに進行して追突したのです。そこでは幅員が広い道路Aに左折する車が多く、道路Bに左折するとは思ってもいなかったのです。逆に道路Bから右折しようとしていたd車が左折の合図をして近づくc車を、自分が出ようとしている道に曲がるものと勘違いして衝突したケースもあります(下図 事例2)。

長山先生の「危険予知」よもやま話 第15回|事例2|くるくら

編集部:本誌でも紹介したケースと同じですね。

長山先生:そうです。現場の道路Bは狭かったため、d車のドライバーは「自分が出てやらないと、c車は左折できない」と考えて発進してしまいました。

編集部:自分が道を塞いでいると思ったら、よけいに急いで出てしまいますね。

長山先生:まさにそのとおりで、「自分のために相手が曲がれない」と思い込んでしまうと、早く出ることばかり考えて、さらに自分の判断の誤りをチェックできなくなります。このような「思い違い」や「判断の誤り」が原因になっている事故は多いのです。

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