2021年08月21日 14:30 掲載
交通安全・防災
自転車側も注意して事故防止|
長山先生の「危険予知」よもやま話 第2回
自転車側は交差点と認識していない!?
編集部:今回の問題はドライバーではなく、自転車の立場からの問題です。自転車で交差点を直進するケースですが、ポイントはどこにありますか?
長山先生:まず、問題のような小さな交差点では、交差点の存在に気づかなかったり、気づいても問題と感じずに無意識のうちに走ってしまう傾向がありますね。
編集部:交差点であることは、さすがに気づくんじゃないでしょうか?
長山先生:問題の場面をじっくり見てしまうと、そのようなことは信じられないかもしれませんが、片側1車線の道は自転車にとってわずか一漕ぎで通過できてしまいます。歩道を走っている自転車にとって、ほんの一瞬だけ車道に降りて、すぐにまた歩道を走ることになるので、交差点を通過しているという意識は希薄です。
編集部:たしかにそうかもしれません。問題の場所はわずかに下っているので、一漕ぎすらしないで、惰性で通過できそうですし。
長山先生:そうです。漕ぐこともなければ、なおさら無意識のうちに通過することになります。しかも、問題の場面では、車用の信号機が電柱の陰に隠れていますし、歩行者・自転車専用の信号はかなり右側に設置されているので、信号のある交差点であることも認識しづらくなります。
編集部:信号が正面にないので、初めて通る場合、見落としてしまうかもしれませんね。
長山先生:初めて通る場合もそうですが、最近問題になっている携帯電話やスマートフォンを操作しているような場合、その可能性が高くなりますね。まあ、携帯などを操作しているのは論外ですが、たとえふつうに自転車に乗っている場合でも、交差点や信号があることを認識しづらい状況と言えます。
編集部:交差点であることさえ認識していないなら、今回の「右折車との危険性」を予測するのはかなり難しいですね。
長山先生:まさにそのとおりです。自転車に乗る人は、まず交差点であることを認識し、信号の色が何色なのかを意識化することが大切です。それができたうえで、さらに「右折車が曲がってくる可能性」を予測できることが重要です。
ドライバーのミスが事故に直結する事例
編集部:でも、交差点だと認識できても、自転車に乗る人が右折車のことまで意識するのは難しいのではないでしょうか? 私も自転車の立場なら、信号の色くらいしか見ないで、交差点を渡ってしまうような気がします。特に運転免許を持たない人の場合、右折車に注意する意味がよく分からないかもしれませんが。
長山先生:たしかに免許を持っていない人が右折車の動きと自分の関係性まで考えるのはなかなか難しいことですが、交差点での事故を調べると、右折する四輪車と横断中の自転車や歩行者が衝突する事故は多く発生しているので、車と歩行者の信号が別々になっている分離信号でない限りは、自転車・歩行者専用信号が青でも、右左折してくる車があることを知っておく必要があります。
編集部:でも、自転車や歩行者の立場で考えると、右折するドライバーが自転車や歩行者に注意すべきと考えるのではないでしょうか?
長山先生:もちろん、右折するドライバーが注意するのは当然ですが、右折するドライバーは、対向車の有無や対向車の速度など、右折可能かどうかの判断に意識が集中し、前ばかり注意してしまいがちです。つまり、後ろから走り込む自転車に対する注意はかなり手薄になってしまう傾向があります。
編集部:つまり、より見落とされやすい状況なんですね。
長山先生:そうです。だから、事故が起きた場合の責任問題はともかく、自分の身を守るためには、相手の注意力に頼れない状況と言え、通常よりさらに自転車や歩行者側がそれを補って注意する必要があるのです。
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