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道路・交通最終更新日:2020.04.12 公開日:2020.04.12

運転免許統計を見ていて気づいたこと(1)2019年に大きな変化が2つ起きていた

毎年3月、警察庁から運転免許統計が発表される。最も古い統計は1966年。以来、一貫して増え続けてきた運転免許保有者数が、この3月に発表された2019年の運転免許統計で始めて減少した。この歴史的ともいえる大きな変化を考えてみた。

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 警察庁が毎年3月に発表する「運転免許統計」というものをご存じだろうか? 運転免許の保有者数に始まり、免許証の交付件数、運転免許試験の受験者数や合格率など、運転免許にかかわる数値データを1年分まとめたものである。運転免許を与え、運転免許証を交付するのは公安委員会の重要な許認可業務の一つであるから、それに伴う統計もきちんと記録され、公表されているわけだ。ちなみに、「運転免許」とは、国家公安委員会が “与える” ものであり、我々自動車ユーザーは免許を “受ける” ものであり、「運転免許証」はその証として “交付(発行)” されるものである。「証」の有り無しで、示すところが微妙に異なることをご理解いただきたい。

免許統計史上、初めて起きた変化

 さて、2020年3月24日、警察庁のWebサイトで、最新の運転免許統計が公開された。免許統計の最初は、統計開始以来の運転免許保有者数の推移である。日本の運転免許保有者数はどのように推移してきたのか、グラフで紹介しよう。ちなみに、運転免許保有者数には、普通免許だけでなく、大型免許や二輪免許、2種免許などの全ての運転免許を含む。ただし、一人で複数の免許を受けている場合は、より上位の免許だけを数えている。 このグラフを見ると、3000万人弱で始まった免許保有者は1984年に5000万人を超え、10年以上前に8000万人を超えた。一昨年までは、ずっと右肩上がりで増え、最大で8231万人に及んだ。だがその後は減少に転じている。直近10年のグラフを紹介しよう。

 2019年、日本の免許統計は統計開始以来初めての出来事を経験した。運転免許保有者数の減少である。2019年は約8215万人、おととしに比べておよそ15万人減少した。日本はすでに人口減少社会に突入しているから、再び上昇トレンドになることは考えづらく、この傾向は続くと考えられる。

 では、そこからどのようなことが起こるのか、考えてみよう。

 よいこととして思いつくのは、運転できる人が減ることで、渋滞が減る可能性である。

 15万人の減少は、8200万人に対して0.18%の減少である。一般に渋滞損失は、時間で年間一人当たり42時間、金額で年間一人当たり10万円といわれる。この0.18%が削減できるとして、時間は4分半、金額は180円となる。一人当たりだとわずかが、日本全体でみると954万時間、216億円とそれなりに大きい。とはいえ、渋滞への影響は免許保有数者数よりも、車の保有台数や、実際に走行している台数の方が関連が深いと思われ、一概にこうなるとはいえない。

 一方、免許保有者数が減ることで起こるデメリットは、まず物流への影響であろう。大手宅配会社でドライバー確保が困難になっているというニュースが2年位前から耳目を集めている。インターネット通販の、天井知らずの隆盛もある。

 保有者数が減った免許を種別でみていくと、物流に関係しそうな大型、中型、準中型免許はすべて前年比減である。というか、増えたのは1種、2種の普通免許だけ。タクシードライバーはともかくとして、トラックもバスも、タンクローリーが必要とするような牽引免許も、みんなドライバー不足になる前兆が見え始めたといえそうだ。

高齢者の免許返納が増えたことも

 2002年、免許証を自主返納したユーザーに対し、運転経歴証明書の交付が始まった。わりと新しい制度のように思われるが、もう18年も前のことである。

 運転経歴証明書の交付が始まったのは、免許証を身分証明書として保持するニーズが高かったことが背景にある。ところが、有効期限の設定のない運転経歴証明書に身分証明能力が完璧に認められない状況が続き、交付件数は長く低迷していた。それが、ようやく、免許証と同じ身分証明能力を保有するようになったのが、2012年である。運転経歴証明書のそんな経緯を頭に入れていただいたうえで、交付件数の推移を見てみよう。

 制度が始まった2002年以来、長く低迷が続き、2011年頃からグラフが立ち上がる。これは前述の通り、運転経歴証明書に免許証並みの身分証明能力が与えられたためだ。そのあと2018年までは、順調に右肩上がりである。

 そして、2019年、前年比16万件増の52万件と跳ね上がった。理由は説明するまでもなく、逆走、アクセルの踏み間違えなど、高齢者の運転する暴走事故が世間を騒がせたせいだろう。後期高齢者だけではなく、前期高齢者の返納も増えていることから、そのインパクトが大きかったことが分かる。運転に不安があるドライバーの免許返納が進むのはよいことだが、運転免許保有者数減少の理由の一つには、高齢者全体の免許返納の増加が関係していると思われる。

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