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道路・交通最終更新日:2020.02.26 公開日:2020.02.26

高齢ドライバーの約2割は認知機能低下の恐れ。ヒヤリハット経験の深刻化も。

株式会社ADKクリエイティブ・ワン(以下、ADK)の「モビリティチーム」は、ドライバーについての定点調査「EX-Drivers」で「高齢ドライバーへの認知機能チェック」「カーライフへの意識調査」の結果を発表した。調査結果から明らかになった、高齢ドライバーの認知機能の実態などを見てみよう。

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高齢ドライバーの約2割は認知機能低下の恐れがあることが、株式会社ADKクリエイティブ・ワンの調査により分かった。

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 昨今、高齢ドライバーの交通事故は社会問題としてニュースなどでもよく取り上げられている。高齢化が進む中、比例して増える高齢ドライバーの運転傾向・意識への理解は必要不可欠であるといえる。ADKの調査から窺える実態をもとに、安全なカーライフについて考えてみよう。

高齢ドライバーの約2割が認知障害の恐れあり

認知機能チェック調査の結果、65歳以上の高齢ドライバーのうち約2割が認知障害の恐れがあることが分かった。

出典:株式会社ADKホールディングス

 今回の調査では、認知症予防専門士の中村拓司氏監修のもと「認知機能チェック調査」も実施された。対象年齢を65歳以上とし、運転時の身体機能や認知機能の低下、疾病の有無などに関する設問に回答してもらうことで「危険群」「MCI(軽度認知障害)「正常」の3つに分類した。すると、認知機能に対する危険群は6.1%MCI15.2%で、合わせると2割以上という結果が出たのだ。MCIは認知症の前段階ともいわれており、クルマの運転に必要な「認知・判断・操作」のいずれかにも支障をきたす恐れがある。その主な症状には以下のものなどがある。

【MCI(軽度認知障害)の症状例】
・同じ会話を繰り返すことが多くなった。
・好きだった趣味活動などをしなくなった。
・知人の名前が思い出せない。
・料理の味付けが変わったり、段取りが悪くなった。
・道に迷う。
・身なりに気を使わなくなった。
・ドラマや読書を楽しめなくなった。

 今までは覚えているであろうモノやコトを忘れてしまうなどに、典型的に表れてくるようだ。安全なカーライフを送るためにも、疑わしい症状が出た際には個人で判断せずに医療機関にかかることを心がけたい。

免許返納を検討している高齢ドライバーは1割以下

近々免許返納を検討している高齢ドライバーは、1割に満たなかった。

出典:株式会社ADKホールディングス

 では、高齢ドライバーで近々免許返納を検討している人はどれくらいいるだろうか。免許返納意識についての調査結果を見ると、今すぐに返納意思があるのは全体の5%と非常に少ない割合であった。認知機能チェックで「危険群」であった人は17%と意識度は他に比べて高めであったが、まだ先のことだと思っている人が多いようである。だからといって、高齢ドライバーの交通安全に対する意識が低いとは言い切れない。それには、日常生活の移動手段を失うことへの不安などが考えられるからだ。

交通に不便なエリアに住んでいる人ほど、免許返納に慎重である傾向が明らかになった。

出典:株式会社ADKホールディングス

 その根拠として、居住エリア別に聞いた免許返納意識の結果を見てみよう。「『記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれがある)』場合でも医師から認知症と診断されなければ運転し続けたい」、とする人は街中から離れている人が最も多く27%だった。これは、市内・区内などの街中に住んでいる人の2倍以上の数値である。一方で、認知機能低下の恐れがなくても免許返納を考える人の割合は、街中に住んでいる人が一番高く19%だった。
 このことから、交通が不便なエリアに住んでいる人ほど、免許返納に慎重になる傾向があることが明らかとなった。そして、いずれのエリアでも約7割の人が「認知機能の低下・認知症の恐れがある」なら免許返納を考えると回答している。交通安全に対する意識はあるが、郊外であるほど日常生活の上でクルマを運転し続けたいという事情が窺えはしないだろうか。
 何事もなく安全にクルマを運転し続けられることが一番ではあるが、「必要なのだから仕方がない」と意固地になってしまうことも避けたい。例えば、自治体などが免許の自主返納に対する高齢者支援サービスを実施しているので、いざ返納の時が来ても困らないようにそれらの情報を事前に収集することも勧めたい。

危険群の約50%が、バックや車庫入れ時のヒヤリハットを経験

高齢ドライバーの運転時には、「アクセルとブレーキの踏み間違え」「逆走」など重大なミスも発生している。

出典:株式会社ADKホールディングス

 免許返納を検討するきっかけのひとつに、ヒヤリハットなど運転中のミスへの自覚があるだろう。「最近1年間のヒヤリハット経験内容」(複数回答)に関する調査結果を見てみると、「認知機能チェック調査」で危険群に属する人の、実に過半数以上が「バックや車庫入れの時にヒヤリとした」経験があることが明らかになった。次いで、「周囲のクルマ・自転車・歩行者が見えなかった」と回答した人もほぼ5割と高い割合だった。これらは、認知機能が正常な人に比べると34倍も高い数値である。
 そして、ニュースでも交通事故の原因として取り上げられることが多い「アクセルとブレーキの踏み間違え」12%や「逆走」9%と、重大なミスも発生しているのだ。特に逆走による事故においては、死傷事故になる割合がそうではない場合に比べ約5倍、死亡事故は約40倍にもなるという憂慮すべきデータが国土交通省より発表されている。
 また、危険群以外の人も、何らかのヒヤリハットを経験しているという事実も忘れてはならない。安全なカーライフを送るためにも、ヒヤリハットの経験から学び自身の運転について見なおすことが大切といえよう。
 今回の調査からは、自身の認知機能について自覚をしている高齢ドライバーが少ないということが分かった。特に、危険群に属する人のヒヤリハット経験数などは、深刻な問題ともいえよう。重大な事故を防ぐためにも、適切な運転操作が十分にできているかなどを家族や友人と話し合う機会を作って、認知機能の状態を確認していきたい。また、普及が進んでいるドライブレコーダーを活用し、映像から普段の運転を客観的に見直すことも、高齢者にとっては有効だ。

【「EX-Drivers2019」調査概要】
調査対象:全国の18歳以上の車保有者及び未保有購入予定者
有効回収:全体 22,352s回収、65歳以上 2,689s回収
調査時期:2019年10月
調査方法:インターネット調査

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