雨の日に発生しやすい事故の特徴と安全運転のポイント。
梅雨になり雨の日が多くなってきた。雨天時にクルマを運転する機会も増え、慎重な運転を心がける必要がある。そんな雨の日にはどんな事故が起こっていて、どんなポイントに気を付ければいいのだろうか。
雨の日は事故率が高い
上グラフを見てみよう。首都高速道路株式会社によると、首都高速道路における2018年度の雨天時の交通事故は1539件。非雨天時の交通事故は8401件であることがわかる。一見すると非雨天時の事故のほうが多く感じるが、東京管区気象台の発表によると、2018年度の非雨天の時間は全体の約95%(8334時間)。雨天の時間は全体の約5%(426時間)であったという。もし天候によって事故率が変化しないとすると、雨天の交通事故件数は全交通事故件数9940件の5%=約500件になるはずである。しかし、実際は1539件と大幅に多く発生している。これを1時間あたりの事故件数で比較すると、雨天時は非雨天時の約4倍事故が起こりやすくなっているのだ。
雨天時は施設接触事故が増加!
雨天時には一体どんな事故が多くなっているのだろうか。
上グラフを見ると、非雨天時の事故のうち施設接触事故は13.4%。雨天時では34.1%であり、雨天時の方が施設接触事故の割合が高くなっていることがわかる。先ほどのように雨天・非雨天の時間を考慮すると、1時間あたりの施設接触事故件数は晴天時は0.14件。雨天時では1.23件と非雨天時の約9倍も施設接触事故が起こりやすいことがわかる。
施設接触事故とは、主に側壁や中央分離帯などに衝突する自損事故。同社によると、雨天時の施設接触事故の約6割が時速60キロ以上で走行中に発生。カーブ区間での速度超過が原因の場合が多いという。雨天時は路面が滑りやすいので、速度を出したままカーブに進入するなどしてスリップしたことが施設接触事故の一因であるといえそうだ。
雨天時は夜間の死亡事故が増加
雨天時にはもう一つ興味深い傾向がある。夕方~深夜にかけての死亡事故件数が多いのだ。
上グラフから時間帯あたりの死亡事故件数を見てみよう。雨天時の死亡事故が最も多い時間帯は深夜1~2時であり、17時以降は雨天時の方が死亡事故が多いことがわかる。
交通事故総合分析センター(ITARDA)の分析によると、雨の夜間に発生した事故では、右折時に横断歩道の暗がりにいた歩行者の存在に気づくのが遅れて事故となるケースが多いという。つまり雨と暗さによる視界不良で死亡事故が発生しやすくなっているといえそうだ。
雨天時の安全運転のポイント
このように、雨天時には大きく分けて「スリップによる事故」と「視界不良による事故」の2パターンの事故が多く発生していることがわかった。そこで雨の日に特に注意したい運転のポイントを紹介しよう。
【スリップによる事故】
・事前の点検ポイント「スリップサインのチェック」
タイヤの溝は、1.6mm以下になると滑りやすくなるだけでなく道路交通法違反となる。走行前にスリップサインが出ていないか確認し、早めのタイヤ交換を意識する。
・走行中のポイント「速度をいつもより抑える」
「急ブレーキ」「急ハンドル」「急発進」など「急」のつく運転は避ける。雨天時は路面の湿潤により制動距離が長くなるので、普段より車間距離を長めにとり、早めのブレーキを心がける。
【視界不良による事故】
・事前の点検ポイント「ワイパーゴムの劣化をチェックする」
ワイパーゴムが劣化していると、水滴をしっかりと除去できず視界が悪くなる。走行前にワイパーゴムがひび割れたり、切れたりしていないかなど、状態をチェックする。一般的にワイパーゴムの交換の目安は約1年といわれている。
・事前の点検ポイント「フロントガラスの曇りに注意」
フロントガラスが汚れていると曇りが生じやすくなるため、綺麗にしておく。フロントガラスが曇ってきたときは、エアコンのデフロスタースイッチ(※)を作動させて曇りを消す。
・走行中のポイント「ライトの活用で見落としを防ぐ」
雨天時は薄暗く、フロントガラスついた水滴や濡れた路面からの反射により視界が悪くなるため、歩行者や自転車などを発見しにくくなる。夜間以外でもヘッドランプを積極的に点灯する。ハイビームを活用するなど、歩行者や自転車の見落としを防止する。
雨で路面が濡れていると、反射によって道路標示が見えにくくなったり、水滴でフロントガラスの視界が悪くなったりするので注意深く周囲を観察することが必要だ。また、スリップを防ぐためカーブにはしっかりと減速してから進入したい。事故を未然に防ぐために一層慎重な運転を心がけて欲しい。