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最終更新日:2018.03.14 公開日:2018.03.14

【2018/2/24~5/27】 スペイン黄金期の巨匠ベラスケスの傑作が会した「プラド美術館展」

 スペイン・マドリードにある「プラド美術館」は、歴代スペイン王家のコレクションを中心に7000点を超える絵画を所蔵する。
 世界屈指の美の御殿といわれるプラド美術館のコレクションの中から、西洋美術史上最大の画家のひとりディエゴ・ベラスケスの傑作7点をはじめ、ティツィアーノ、ルーベンス、リベーラ、ムリーリョらの名画など約70点が会した「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」が、5月27日まで国立西洋美術館で開催されている。

冒頭の絵は日本初公開の名画:ディエゴ・ベラスケス《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》1635年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

画家と廷臣、二束のわらじを履いたベラスケス

 ディエゴ・ベラスケス(1599~1660年)は、スペインのセビーリャに生まれた。岳父のフランシスコ・パチェーコの工房に入門し、1623年、弱冠23歳にして宮廷画家に任命され、「ベラスケスだけが国王の肖像を描くべきである」と宮廷内で絶対的な信頼を獲得する。国王フェリペ4世から重用され、王宮配室長など宮廷職と画家の二束のわらじを履きながら絵画制作を行い、世界的な名作を残したのは驚愕に値する。

 現存するベラスケスの作品は約120点といわれるが、彼がその人生を絵画のみに捧げたとすれは、その何倍もの作品を残しただろうといわれている。ベラスケスの現存作品のうち、約4割をプラド美術館が所蔵する。今回の展覧会では、日本では過去最多の傑作が出品された。いずれも見ごたえある大作であり、スペイン美術の黄金期を代表する巨匠を理解するのに重要な作品ばかりである。

ベラスケスのここがすごい

 ベラスケス芸術の革新性は、以下の3つの点に要約することができる。

①対象への無差別さ

 ベラスケスは、宮廷画家として《狩猟服姿のフェリペ4世》のような国王を描くかたわら、宮廷のエンターテイナーであった矮人や道化も肖像画に残した。また酔っ払いたちや卑俗な容貌の人たちも描いている。
 相手がどのような社会的身分であっても彼は「個」として受け入れ対峙している。モデルの身分や境遇の違いを消し去るのではなく、受け入れつつひとりの人間として差別なく向き合い、内面に秘められた人間性を描きだしたのである。

ディエゴ・ベラスケス《狩猟服姿のフェリペ4世》1632-34年 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

 当時、国王の肖像画は、国を治める強い意志と理性を示すために無表情で描かれ、ポーズや持ち物なども厳密に規定されていたという。このような窮屈な条件が課せられていても、ベラスケスは人物の内面にある感情を引き出そうとしている。狩猟をするフェリペ4世のほのかに穏やかな表情には、威厳だけでなく人間味も感じられないだろうか。

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宗教画のモデルは家族?

②雰囲気のリアリズム

 ベラスケスは、宗教画や神話画といった目に見えない世界を描く場合にも、できるだけ現実の世界のものとして描いた。

 戦いの神であるマルスを描いた作品では、力強く勇敢な勝利の兵士としてではなく、頬杖をつき疲れた表情をしてベッドの端に腰掛ける中年男として描かれている。
 《マルス》がどのような意図で描かれたのか、さまざまな解釈がほどこされている。一説では、ヴィーナスとの情事の後、彼女の夫ウルカヌスにその浮気を見咎められた後の放心状態との説もある。そう考えると絵画が急になまめかしい現実を帯びたものとしてまったく違った顔を見せる。

ディエゴ・ベラスケス《マルス》1638年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

 《東方三博士の礼拝》は、新約聖書のマタイによる福音書2章の有名な場面、生まれたばかりのイエスに東方から3人の博士が贈り物を携えて拝みにくるという話である。
 興味深いのは描かれているモデルである。手前のイエスに跪く若い王はベラスケス自身、聖母マリアは彼の妻、幼子イエスは生まれたばかりの娘フランシスカであるといわれている。ベラスケスは、聖なる物語であろうともそれを同時代的な現実の出来事であるかのようなリアリズムで描いている。

ディエゴ・ベラスケス《東方三博士の礼拝》1619年 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

③絵画と現実との境界があいまいな演劇的な効果

 《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》では、モンタニェースは画面の前に立つ我々を見つめているが、同時に自分を描いている画家ベラスケスを見つめているともいえる。さらに彼がフェリペ4世の彫像を制作中であることから、彼はフェリペ4世を見つめているといえる。
 このような作品に介在する視線の複合性は、ベラスケスの究極の大作と呼ばれる《ラス・メニーナス》で頂点に達する。マルガリータ女王の両側にかしずく2人の女官たちを描いた有名な作品は、視線の複合さから絵画(フィクション)と現実との境界があいまいになった演劇空間のようである。

ディエゴ・ベラスケス《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》1635年頃 マドリード、プラド美術館蔵 © Museo Nacional del Prado

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招待券プレゼントのお知らせ

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

【会期】
2018年2月24日(土)~5月27日(日)
【開館時間】
9:30~17:30 *金曜日・土曜日は20:00まで*入館は閉館の30分前まで
【休館日】
月曜日 *ただし、3月26日(月)と4月30日(月)は開館
【会場】
国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7番7号)
【入館料】
一般1,600円 他  *詳細は以下、展覧会公式サイトでご確認ください
【アクセス】
JR上野駅下車(公園口)徒歩1分 他
【展覧会公式HP】
https://artexhibition.jp/prado2018/

「プラド美術館展」の招待券プレゼントは終了しました。
賞品は抽選の上、2018年3月26日に発送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。

2018年3月14日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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応募はこちら!(1月5日まで)
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