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最終更新日:2017.08.31 公開日:2017.08.31

【2017/7/8~10/1】 あっ、このデザイン好きだな! 深澤直人の国内初個展開催!

「壁掛式CDプレーヤー」無印良品 1999年。日本で深澤直人の名を知らしめることになった作品。紐を引っ張ることでスタートする発想と、壁掛け式でスピーカーを内蔵した構造が話題になった代表作。

 世界的に活躍するプロダクトデザイナー深澤直人の国内初個展が、東京のパナソニック 汐留ミュージアムで開催されている。

深澤直人の世界が堪能できる展覧会

 無印良品のCDプレーヤー、auの携帯電話「INFORBAR」シリーズ、ドーナッツのような丸みを帯びた形状のプラスマイナスゼロの加湿器など、誰もがどこかで見たことのある深澤直人の卓越した代表作、約110点を一堂に集めて紹介した贅沢な展覧会である。

右:「INFOBAR (NISHIKIGOI)」au 2003年。左:「INFOBAR (BUILDING)」au 2003年。二つ折りタイプが主流の時代に出したバータイプの携帯電話。タイルのように境目を指で感じるキーや錦鯉、ビルをイメージした色使いなど、携帯に感覚的機能を盛り込んだことが画期的だった。

右:「INFOBAR 2 (MIDORI)」au 2007年。左:「INFOBAR 2 (SILVER)」au 2007年。INFOBARの第二世代。ディスプレーがより大きくなり、全体が丸みを帯びオーガニックな印象を与える、今見ても美しいフォームの作品。握った時の手にしっくりと馴染む感触も計算されている。

「加湿器」プラスマイナスゼロ 2004年。加湿器をデザインオブジェクトにするという考えがなかった時に、機械っぽさを廃した有機質な形のデザインを打ち出した斬新な作品。家電のように稼動している時間がよりもオブジェとして置いている時間が長い製品こそ、美しいモノが必要であると実感させられる。「これは空間の癒しだ」と深澤氏はコメントを残している。

 家電、インテリア、家具、キッチン用品など、どの作品をみても見た目の美しさが際立っている。世の中に溢れる多くのモノの中で、目に止まり立ち止まりもう一度見る、そんな作品を多く排出している深澤直人のデザイナーとしての尋常ではない才能に驚かされる。
 そして、その美しさはどれもシンプルな無駄のなさに裏打ちされている。

イッセイミヤケ「トゥエルプ」SILAP001(右)SILAP004(左)セイコーウォッチ株式会社 2005年。目盛りも数字もない究極のシンプリシティーたる時計を作るのが創作の発端だという。解決法は12の角を文字盤につけることにあった。ブランドロゴさえも短針の中に隠れている。

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「普通だね」がほめ言葉?。

モノと空間の相互関係

 「普通だね」と言われるのが最高のほめ言葉だと、深澤氏はインタビューの中で述べている。これは、製品が主役というよりは、空間の中に存在することを彼が念頭においてデザインをしているからである。

 「モノは環境に溶けている。そのモノの登場によって周りの空気や雰囲気が変わる。その空気や雰囲気を作るためにモノをデザインしているんだ。モノは周りと対なんだ。」(深澤氏)

 展示のタイトル「Ambient アンビエント」はもともと「環境」という意味だが、深澤氏は「周囲」や「雰囲気」と捉えているという。彼が空間を想定して生み出されたデザインは、その環境が要請したものであり、そのようにして生み出されたモノがその場に投じられて、空間とモノが互いに作用して、いい雰囲気が生み出されるのだという。
 つまり彼の定義によれば、いい雰囲気とは、空間とモノがギブアンドテイクの関係で存在し調和していることであり、彼は空間が要請したモノを形にするデザイナーということになる。なぜ深澤直人の作品が、美しく自然で調和に満ちているのか、創作の秘密やデザイン哲学が垣間見える。

左:「サブスタンスアームチェア」マジス 2015年。「シェル型のプラの椅子は多い。イームズからずっと引き継がれた伝統のようなものだと思う。座った時のシェルのひずみが座り心地の硬さを緩和してくれる。」(深澤氏)。右:「サブスタンス」マジス2015年

「アラウーノ」パナソニック 2006年。「有機ガラス製のトイレは陶器と比べても著しく寸法精度がいい。しかも軽くて強くて清潔だ。精密なトイレを清潔に感じるのはどうしてだろう。これはもう便器でなくて精密機器だ。」(深澤氏)

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モノと空間の関係を体感。

居住空間のような展示空間もデザイン!

 居住空間に見立てた展示空間も深澤直人自身のデザインによるもので、彼自身の「空間とモノ」に対する考えを実際に体感することができる。ビジターは家を移動するように、バスルーム、キッチン、リビングなどを自由に行き来し、新しい空間に入った時の驚きを体験する。

 展示内では撮影が自由なのも嬉しい。作品名の隣には、深澤氏によるコメントが添えてあるが、作品の説明であったり、アイデアのソースであったり、感想であったり、詩人が自由に文を綴ったようで面白い。
 光と影が巧みに陰影の情感を織り成す展示空間を奥へと進むにつれ、ビジターは深澤世界の深淵へと導かれていく。

「モディファイ スフィア」パナソニック 2012年。「よくカフェなどで見かけるガラスの球体のライトを最初にデザインした人は、きっとまん丸の光にしたかったんじゃないかと思う。でもまだそれには技術が伴っていなかったからできなかったに違いない。『こうしたかったんだけど』という作者の声が聞こえる。その思いを誰かが受け継いで完成させるということはあるべきだと思う。」(深澤氏)。電球を挿入する天面の穴を透過性のカバーで覆うことで、球体全体が均一に光る完全な「光の球」を目指した照明器具。展示空間では大小さまざまな形の照明が天井から床まで下がっている。

手前:「HIROSHIMA フォールディングチェア」 2013年。畳んだ時の形が美しい折りたたみ椅子。中央:「デジャブ ミラー」マジス2011年。アルミ製の高さ190cm、幅120cmの特大鏡。「大きなミラーを壁に立てかけて空間をリッチにするのは西洋の感覚だ。そこに入ってしまいそうな不思議な感覚を覚える。」(深澤氏)。奥:「サビア」ボッフィ2008年。彫刻のように美しいオーバル型の浴槽。

浴槽「サビア」

「ベント グラス ベンチ」グラス イタリア 2012年。「ルーブル美術館に置かれていると聞いて、『ああそんな感じだ』とイメージが一致した。」(深澤氏)

「アテナ フロアスタンドライト」アルテミデ 2015年。ベースと照明が同じ大きさと厚みのディスクでできた美しい光を放つ照明。

「ノト」ラミー 2008年。ドイツの老舗文具メーカーにデザインしたボールペン。ペン刺しが突出していなくてペンのラインの中に納まり、三角の断面が握りやすい形をなしている。

【展示情報】

AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展
【開館期間】2017年7月8日~10月1日
【開館時間】10時~18時(入館は17時半まで)
【休館日】水曜日
【入館料】一般1,000円、65歳以上900円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料
【会場】パナソニック 汐留ミュージアム 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
公式HP

2017年8月31日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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