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クルマ最終更新日:2023.02.28 公開日:2023.02.28

水素はトヨタだけじゃない!? BMWはなぜ燃料電池車を開発するのか? 試作車「iX5」はほぼ完成の域だった

BMWは電気自動車の販売に力を入れる一方で、水素で走る燃料電池車を開発中だ。なぜいまFCVなのか。モータージャーナリストの小川フミオが試作車の「iX5」を試乗した。

文=小川フミオ 写真=BMW AG

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EVにはない、BMWらしい操縦性

アントワープ港の一角に設けられた水素充填ステーションにて

アントワープ港の一角に設けられた水素充填ステーションにて

 ドイツのBMW本社が、水素で走る燃料電池車「iX5」に乗せてくれました。2023年2月中旬、場所はベルギー・アントワープです。燃料電池車といえば、トヨタ MIRAIやヒョンデ NEXOがすでに知られています。iX5は後発ながら、存在感はけっして小さくありません。

「開発にあたって念頭に置いていたのは、水素燃料で走るクルマでもBMWのドライブフィールを持っていなくてはならない、ということです」

 開発の陣頭指揮を務めたBMW本社のユルゲン・グルドナー氏が、アントワープの試乗会会場で、そう語ってくれました。たしかに、iX5に乗ると、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのBMWと遜色ない運転性能と感じられます。

システムトータル出力は295kW(401ps)に達するそう

システムトータル出力は295kW(401ps)に達するそう

最大巡航距離は504kmという

最大巡航距離は504kmという

 みなさん先刻ご承知のとおり、BMWには「i(アイ)」というピュア電動車のラインナップがあります。iX5も車名のとおり、そこに組み込まれるべきモデルですが、ベースになったX5がもつ運動性能の高さをしっかり受け継いでいます。

 X5のプラグインハイブリッドモデルをベースに、燃料電池のシステムを組み込んだiX5。BEV(バッテリー駆動のEV)専用シャシーより、私たちになじみある操縦感覚だと思いました。燃料は水素ですが、モーター駆動なので、トルクがたっぷりある(数値は未公開)、加速はかなりスムーズ。その気になると、静止から時速100kmまで6秒だとか。

 アントワープの自動車専用道でも、加速のよさとともに、レーンチェンジにおけるハンドリングの安定感と、ステアリングホイールを操舵したときの車体の反応のよさがわかりました。操縦席のデザインも基本的にX5のままなので、知らないで乗ったら、パワフルなX5だなあで終わってしまうかも。それぐらいナチュラルです。

BMWがFCVを開発する理由とは

iシリーズのイメージカラーである青色のアクセントが随所にほどこされている

iシリーズのイメージカラーである青色のアクセントが随所にほどこされている

 BMWはいまもBEVのラインナップが充実してきています。そこにあえてFCVを加える意味はあるのでしょうか。その疑問に対するBMWの答えは、「選択肢は多いほうがいい」です。BEVが増えていくと充電インフラに無理がかかる可能性が指摘されていて、FCVはそれを回避する手段になります。

「水素は液体化するなどして輸送可能なのも、FCVの可能性を広げてくれます。しかも船舶やトラックなどの業界も燃料電池を使う方向へと動きだしており、このさきインフラが充実するでしょう」

前出のグルドナー氏はそう指摘してくれました。

左側がフロントで、そこに水素から電気を作る燃料スタック。右側がリアでバッテリーやモーターが搭載される

左側がフロントで、そこに水素から電気を作る燃料スタック。右側がリアでバッテリーやモーターが搭載される

 iX5は、いますぐ発売されてもいい、と私は思いましたが、実際には、もうすこし先になるとのことです。そのときは、違ったかたちになって(プラットフォームはこの先発表される「ノイエクラッセ」なるEV専用のものを使うとか)、使うハイテク技術も増えそうです。

 もちろん、そんな遠くない先の話でしょうが、クルマの世界は確実に変わっていく……その思いを強くさせられました。

100台未満しか作られない「パイロットモデル」だけれど仕上げは凝っている

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