2022年04月06日 23:10 掲載

次世代技術 モーターを丸ごと溶かしてレアアースを回収。早大と日産が共同開発した新技術

電気自動車やハイブリッド車のモーターに使われている希少金属(レアアース)。このレアアースを、廃車時に効率よく取り出すために、早稲田大学と日産は、モーターを丸ごと溶かして高純度の希少金属を回収する技術を共同開発した。2020年代中頃の実用化を目指すという。

神林 良輔

モーターに使用されたレアアースをリサイクル

レアアース|モーター|EV|電動車用モーターの磁石からレアアースを取り出すプロセス

電動車用モーターの磁石からレアアースをリサイクルするプロセス。 出典:早稲田大学Webサイト

 地球温暖化などの環境問題の観点から、今後の自動車は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などのモーターで動くクルマになっていきそうだ。ところがこれら電動車に搭載されるモーターには、ネオジムやジスプロシウムなどのレアアース(レアメタルに含まれる希土類)が使用されている。レアアースは資源の偏在や需給バランスによる価格変動、採掘・精錬時に生態系へ与える負荷が課題となっている

 そうした課題を解決するため、現在考えられているのが、不必要になった製品から希少金属を回収し、リサイクルすることだ。

 日産は、こうした問題に2010年から取り組み、まずモーター用磁石における重希土類(ヘビーレアアース)の使用量を削減。例えば、同社のコンパクトカー「ノート」では、2020年式(3代目)は、2010年式(初代)と比較して85%のヘビーレアアースを削減しているという。さらに、出荷基準を満たさず車両に搭載されなかったモーターからも磁石を取り出して分解し、磁石サプライヤーにレアアースを還元するといったことも実施しているそうだ。

 しかし現在、モーターの磁石からレアアースを取り出す工程において、モーター分解などの作業は人の手で行われている。さらにリサイクルを推進するためには、こういったプロセスの簡便化とリサイクルコストの低減が求められている。

モーターを丸ごと溶かしてレアアースを回収

レアアース|EV|モーター|大型炉設備を用いた乾式製錬法の研究の様子

大型炉設備を用いた乾式精錬法の研究の様子。写真=早稲田大学Webサイト

  そこで日産は2017年より、非鉄金属のリサイクルと精錬に関する研究で知られる早稲田大学 創造理工学部 環境資源工学科の山口勉功(やまぐち・かつのり)教授と共同研究を開始。同校の大型炉設備を使用し、電動車用モーターの磁石からレアアースの化合物を回収する研究を進めてきた。そして2019年には、高温で融体を取り扱う「乾式精錬法」を開発。モーターを解体することなく、高純度なレアアース化合物を効率よく回収する技術が確立されたのである。乾式精錬法のプロセスは以下の通りだ。

(1)加熱溶融を促進する銑鉄(せんてつ)、鉄の融点を下げる加炭材を加え、1400℃以上に加熱した炉でモーターを溶融
(2)酸化鉄の添加により溶融液中のレアアースを酸化
(3)レアアース酸化物を溶かすため、ホウ酸塩系のフラックス(融解温度を下げる働きを有する物質)を少量添加
(4)「レアアースを含んだ酸化物層」と、より密度が大きい「レアアースを含まない鉄-炭素合金層」を分離
(5)上層に分離された酸化物層から、レアアース化合物を回収

 このリサイクル技術のポイントは、レアアース酸化物を少量、低温で溶融するために、ホウ酸塩系のフラックスを採用している点だ。

レアアース|EV|モーター|溶解したモーターからレアアースを取り出す

モーターを溶解すると、レアアース成分が浮き上がるのでそれを回収する。 写真=早稲田大学Webサイト

 実験では、同技術によりモーターに使用されたレアアースの約98%を回収できることが確認できたという。また、磁力を取り除く作業や、磁石を分解して取り出す作業が不要となるため、プロセスを簡略化することが可能だ。従来法と比べ、作業時間を約50%削減することができるとしている。

 今後は、実用化を目指した共同研究を継続すると同時に、使用済み電動車に搭載されたモーターを回収し、リサイクルするスキームの構築を進めていくという。実用化は、2020年代半ばを目指している。

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