凍結防止の必要性をタイヤとセンサーで判断。IoTで進化する高速道路
冬の高速道路の安全を確保するには、除雪作業や凍結防止などの雪氷対策が要となる。しかし凍結防止剤を散布すべき適正な場所を見極めることは難しく、不要に散布すると継ぎ目(ジョイント)などの金属部に錆びが生じて路材を傷めてしまう可能性がある。そこで散布すべき場所を見極めるのにIoTを活用した凍結防止剤最適自動散布システムをNEXCO東日本が開発した。
目視で決めていた凍結防止剤の散布場所
高速道路では、濡れた路面の凍結を防ぐために塩化カルシウムなどの凍結防止剤を散布している。凍結防止剤は塩分を含んでいるため、濡れていない路面に散布すると、かえって金属やアスファルトなどの路材が傷んでしまう可能性があるが、散布場所に関しては走行している車からの目視で決定するしか方法がなかったという。しかし目視では路面が乾いているように見えても濡れていて散布が必要であったり、もしくはその逆ということもあり、適正な場所を見極めることが難しかった。
IoT技術で最適な場所に自動散布するシステム
実際の凍結防止剤散布作業は、2台の車両が1組となり行う。前方を走る車両の乗員が目視で路面を観察し、濡れていれば後方の車両に無線指示で凍結防止剤の散布を指示していた。
今回の目視に代わる新システムはブリヂストンが開発したCAIS(カイス)を用いる。CAISは加速度センサーと発電機からなり、前走車のタイヤ内側に装着する。そのセンサーが走行中のタイヤ変形量を測定することで、路面の濡れを自動で判別してくれる。加速度センサーとは、取り付けた部分の変形具合(距離)や変形するスピード(速さ)を検出するものだ。濡れた路面と乾いた路面ではタイヤの変形の仕方が異なる。それをセンサーで測定して路面の状況を判別しているのだ。ちなみにCAISの路面判別は、乾燥、半湿、湿潤、シャーベット、積雪、圧接、凍結という7段階に分かれている。
このCAISで得られた情報は、インターネットを介して後方の車両の自動散布装置に送られる。自動散布装置は、GPSと接続した高精度地図情報とも連動しており、それらを元に100m単位で凍結防止剤散布する場所を決定している。
NEXCO東日本はこれらシステムの総称をISCOS(凍結防止剤最適自動散布システム)と名付けている。モノ(タイヤ)が持つ情報(変形具合)がインターネットを通じることで、これまでなかった価値(自動で最適な量を散布する)を生み出すというIoT(Internet of Things)を活用したシステムとなっている。
例えば、自動散布した後の凍結状況も調査しデータ蓄積すれば、より最適な凍結防止剤散布場所に関するビッグデータが構築されるかもしれない。今後、道路管理・補修の作業にIoTが浸透すれば、安全かつ適正な対策が講じられるようになるだろう。