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クルマ最終更新日:2018.10.15 公開日:2018.10.15

「グランツーリスモ」真剣勝負、国内6メーカーのバトルの行方は!?

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10月6~8日に開催された東京モーターフェス2018。MEGA WEBのライドスタジオでは、ドライビング/レーシングシミュレーター「グランツーリスモSPORT」を利用した、FIA公認の”eモータースポーツ”が開催された。画面は、8日に実施されたエキシビションマッチ「真剣勝負・メーカー対抗戦」の様子。トヨタ「GR スープラ レーシング コンセプト 2018」とテール・トゥ・ノーズのバトルを長時間繰り広げた、三菱「ランサー エボリューション ファイナル エディション GR.3」。現実にはあり得ないバトルを見られるのも、eモータースポーツの醍醐味。

 近年、ハードウェアの高性能化と、ソフトの徹底的な作り込みによって、レースゲームが本物顔負けのリアルさを有するようになっている。その代表格が、初代プレイステーション時の第1作からシリーズ累計での販売本数が約7700万本(※)という人気を誇る「グランツーリスモ」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)シリーズだ。最新作は2017年10月に発売された「グランツーリスモSPORT」で、プレイステーション4用としてはシリーズ初の作品となる。

※最新作「グランツーリスモSPORT」を加えない本数

 「グランツーリスモSPORT」のドライビング/レーシングシミュレーターとしてのレベルの高さは、「裾野を広げるモータースポーツの1カテゴリー」として、世界の四輪モータースポーツを統括するFIAも認めるところ。近年日本でも本格的にプロゲーマーが誕生しつつある”eスポーツ”の1ジャンルとして、新たに”eモータースポーツ”をスタートさせたのだ。2018年から、「グランツーリスモSPORT」の「スポーツモード」を使った「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ」が開催されており、世界王者に輝くと、F1ドライバーなどの2018年王者とともに表彰されることが発表されている。

 参加できるカテゴリーは、プレイヤーの所属する国・地域で競い合う「ネイションズカップ」と、お気に入りの自動車メーカーを決めて参戦する「マニファクチャラーシリーズ」の2種類。日々、世界中のプレイヤーが上位を目指して走り続けている。

東京モーターフェス2018に「eサーキット」が登場!

 10月6日から8日まで、お台場で開催されたイベント「東京モーターフェス2018」において、MEGA WEBのライドスタジオに特設会場「eサーキット」が設けられた。そして「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」として、ワールドファイナル出場者枠10名を決める決定戦と、リージョンチャンピオン決勝戦(アジア・オセアニア選手権の地域決勝戦)が行われたのである。もちろんJAFも協力しており、審判としてJAFレース部会委員の飯田章氏が担当した。

 日本とオーストラリアからは10名ずつ、そして香港・台湾・ニュージーランドの合計で10名の総勢30名が参加。ワールドファイナル出場者枠10名のうち、日本人選手は、日本ブロックで優勝したAkagi_1942mi選手と準優勝のyamado_racing38選手、そして敗者復活戦Aブロックで優勝したyukiku選手と準優勝したgilles_honda_v12選手の4名。あとはオーストラリア4名、香港2名の計10名が世界一の座をかけて他地域の選手と競うことになる。

 そしてアジア・オセアニア選手権のリージョンチャンピオン決勝戦は、前日のワールドファイナルに進出した10名によって争われた。優勝がAkagi_1942mi選手、準優勝がyamado_racing38選手、3位が香港のsaika159-選手となった。詳しくは、JAFスポーツのこちらの記事をご覧いただきたい。 

10月6日に開催された、「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」の「ワールドファイナル出場者決定戦」公式動画。ルール説明などを含めたイントロは15分頃から。レースそのものは34分頃から香港・台湾・ニュージーランドブロック、1時間21分頃からオーストラリアブロック、2時間9分頃から日本ブロックそれぞれの決勝がスタートする(選手紹介はその前の10分間程度)。また敗者復活戦としてAグループが3時間25分頃から、Bグループが3時間55分頃からレースがスタート(選手紹介はそれぞれその前の10分間程度)。動画のトータル時間は4時間30分。

10月7日に開催された、「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア選手権」の「リージョンチャンピオン決勝戦」公式動画。3レースの総得点で争われる。第1レースの予選グリッドのみ予選で決定し、第2、第3レースの予選グリッドは前のレースの決勝順位で決まるというルール。イントロは22分頃から。38分頃から第1レース予選のスタート。第1レース決勝は1時間10分頃から。第2レース決勝は1時間37分頃から。第3レース決勝は2時間12分頃から。時間は3時間10分。

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メーカーの威信をかけた熱いバトル!

白熱のエキシビションマッチ! 「真剣勝負・メーカー対抗戦」

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エキシビションマッチ「真剣勝負・メーカー対抗戦」の様子。1チーム3名、計18名(左端は実況アナウンサーと解説者など)。マイクを握っているのは、日本人現役ナンバー1ラリーストの新井敏弘選手。三菱チームだけには負けたくないと、現実のラリーでのライバルのひとりであるラリースト奴田原文雄選手を牽制した。

 そして、8日にマニファクチャラーシリーズのエキシビションとして行われたのが、「真剣勝負・メーカー対抗戦」だ。スバル、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱の6メーカーが参加して対決。前日までの選手権に参加していた日本人グランツーリスモ選手(GT選手)と、実際にスーパーGTや全日本ラリー選手権などで活躍するプロドライバー、そして各メーカーの社員の3人が1チームを構成。耐久レースのように交代しながら長丁場のレースを走るという内容だ。各チームのメンバー構成とマシンは以下の通り。

 ちなみに各チームのグランツーリスモ選手は、マニチャクチャラーズシリーズにおいてその自動車メーカーを選んでいる選手だ。しかも、全員が各自動車メーカー別で日本人の第1位の選手のみが参加した。

●スバル
 プロ:新井敏弘選手(ラリードライバー)
 社員:森宏志取締役開発本部長
 GT選手:Kerokkuma_ej20選手
 マシン:WRX GR.3

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スバル「WRX GR.3」。カラーリングは、スーパーGTのGT300クラスに参戦しているR&D SPORTの「SUBARU BRZ R&D SPORT」をほぼ踏襲している。2018シーズンは61号車だが、ゲーム中ではカーナンバーは異なる。

●トヨタ
 プロ:脇阪寿一選手(レーシングドライバー/チーム監督/TGRアンバサダー)
 社員:GR開発統括部 多田哲哉チーフエンジニア
 GT選手:yamado_racing38選手(アジア・オセアニア選手権2位)
 マシン:GR スープラ レーシング コンセプト 2018

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トヨタ「GR スープラ レーシング コンセプト 2018」。復活したトヨタ「スープラ」のレーシングコンセプトがそのまま登場(記事はこちら)。社員ドライバーの多田氏は、実際に「スープラ」を開発している人物だ。

●日産
 プロ:柳田真孝(レーシングドライバー/NISMOアンバサダー)
 社員:日本マーケティング本部ブランド&メディア戦略部 福永洋輔氏
 GT選手:Akagi_1942mi選手(アジア・オセアニア選手権王者)
 マシン:GT-R NISMO GT3 N24 SCHULZE MOTORSPORT 2013

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日産R35型「GT-R」ベースのGT3マシン。GT3とは、実際に世界中で人気を博している、市販車ベースのレーシングカーカテゴリー。ちなみに、「GR3」マシンはゲーム中で「GT3」マシンとほぼ同性能。

●ホンダ
 プロ:牧野任祐選手(レーシングドライバー)
 社員:モータースポーツ部 山本雅史部長
 GT選手:s-shohei選手
 マシン:NSX GR.3

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ホンダ「NSX GR.3」。純然たるスーパーカーである2代目「NSX」をベースとした1台。実車だったら、6車種はかなり性能差があるはずだが、そこはゲームなのできちんとバランス調整済み。

●マツダ
 プロ:加藤彰彬選手(レーシングドライバー/TCR JAPAN代表)
 社員:商品戦略本部 商品ビジネス戦略企画部 横浜先行商品企画G 板垣勇気アシスタントマネージャー
 GT選手:板垣Ryu_Ryu_RS選手
 マツダ:アテンザ GR.3

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マツダ「アテンザ GR.3」。レース中のタイヤ交換の様子。マツダのモータースポーツ用の現行車種といえば、「ロードスター」や「アクセラ」のイメージだが、セダンのフラッグシップモデル「アテンザ」で参戦。

●三菱
 プロ:奴田原文雄選手(ラリードライバー)
 社員:EV・パワートレイン技術開発本部CTE 百瀬信夫氏
 GT選手:gilles_honda_v12選手
 マシン:ランサー エボリューション ファイナル エディション GR.3

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三菱「ランサー エボリューション ファイナル エディション GR.3」。ラリーカーとしてのイメージが強いが、サーキットでも速いのが「ランエボ」だ。

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舞台は日本が誇る世界屈指のテクニカルサーキット!

鈴鹿サーキットを15周する長丁場のバトル!

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舞台は、F1ドライバーもその難易度は「世界屈指」と挙げる鈴鹿サーキット。

 コースは鈴鹿サーキットで、ひとりが最低3周する必要があり、トータルで15周を争う。誰が何周するかはもちろんチームの戦略次第だ。出走順は、プロ→社員→グランツーリスモ選手の順で走る。あまり走り慣れていない社員をかばって3周で終わらせ、残りの12周をプロとグランツーリスモ選手の両ドライバーがフォローするのがセオリー。最も速いのは間違いなくグランツーリスモ選手なので、9周を担当してもいい。

 ポイントとなるのが、ソフト、ミディアム、ハードの3種類のタイヤをすべて使わないとならないというルール。もちろん、タイムの出しやすさとどれだけ早く摩耗するか(ライフ)には差があり、タイムがいいのはグリップ力が最もあるソフトで、ミディアム、ハードと続く。新品のハードとソフトでは鈴鹿サーキットだと2秒ぐらい異なるという。ライフはその逆で、ハードが最ももち、ソフトが最も早くグリップ力が失われてくる。タイヤ交換とドライバー交換は現実同様にピットインをして行うので、当然ながらその間はタイムロスが大きく発生する。

 またガソリンも消費する設計なので、満タン時と減った段階ではハンドリングが異なってくる。こうしたタイヤの消耗やガソリンの消費によるマシンバランスの変化など、リアルに作られているのが「グランツーリスモSPORT」の特徴であり、同作品がが”リアルドライビングシミュレーター”を名乗るゆえんだ。

 またレースを盛り上げるため、マシン性能に関しては性能調整が行われており、ほぼイコールコンディション。ただし、ゲームとして面白くなるようバランス調整が設定されている。後方に位置するクルマが追いつきやすいよう、燃料消費倍率が2倍、タイヤ摩耗倍率が8倍という設定となっていた。要は、順位がいいほど燃料を消費するので早くピットインをしなければならなくなるし、タイヤも摩耗するのでタイムが落ちるのも早いというわけだ。結果として、後方のクルマが追いつきやすく、接戦になりやすいのである。

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「スープラ」とデッドヒートを展開する「アテンザ」のコックピット視点。鈴鹿のシケインは数少ない抜きどころなので、「アテンザ」の加藤選手が脇阪選手の乗る「スープラ」のインを狙っている。どのドライバーも真剣モードで走っていた。

レーススタート! 序盤は「NSX」が逃げるが…!

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ポールスタートの「NSX」がダッシュを決め、独走態勢に持ち込みそうな勢いだったが…!?

 予選グリッドはジャンケンで決められ、ホンダ、スバル、日産、三菱、トヨタ、マツダの順。スーパーGTなどでお馴染み、最初の1周を隊列走行してタイヤを温め、そのまま走りながらレースに突入となるローリングスタートだ。2位がころころと入れ替わるのに対し、頭ひとつ抜け出した「NSX」がそのままリードを広げるかと思われたが、そうはならず。最後の最後までダンゴ状態で大どんでん返しも待っていて、まさにファイナルラップのシケインは歓声と悲鳴が交錯するこの日最大の見せ場となった(優勝チームと6チームのリザルトは最後に紹介)。

 公式動画は長尺だが、イベント全体を収録しているためで、レース部分だけならそれほど長くない。ぜひ手に汗握る展開を自分の目で確かめてみてほしい。記者も感想を述べさせてもらうと、無意識に手に汗握って全身が力んでいたようで、決着がついたあとは一気に疲労感が襲ってくる状態だった。

 動画の見所は、やはりグランツーリスモ選手たちの走りだ。現実とは異なってGがまったくないeモータースポーツは、プロドライバーですらしっかりと練習しないと理想のラインを走るのは難しいといわれる。それに対し、グランツーリスモ選手は、TVのレース中継でも見ているかのような、まさにクルマを自分の手足とするような走り。eモータースポーツのプロドライバーとして目を見張るものがあった。

 鈴鹿のS字といえば、F1ドライバーですら油断できない世界的にも難易度の高いテクニカルセクションだが、そこをステアリング修正することもなくきれいなライン取りで縁石まで利用して駆け抜けていくのだ。芸術的ともいえるグランツーリスモ選手の走りは見る価値があるので、ぜひYouTube動画をご覧いただきたい。

千原ジュニアなど芸能人らが首都高でバトルをした「グランツーリスモSPORT『これがe-Motor Sportsだ!』」は15分頃からスタート。そしてエキシビションマッチ「真剣勝負・メーカー対抗戦」は55分頃から選手紹介などイントロがスタート。レースそのものは、1時間9分頃からスタート。鈴鹿サーキットを15周という長丁場のため、レース時間は40分ほど。動画のトータル時間は2時間6分。

選ばれた人しかできなかったモータースポーツを多くの人に!

 モータースポーツとはどうしても費用のかかるスポーツだ。例えば、モータースポーツの入門といわれるレーシングカートですら、初期費用で20万円ほど。それを1回走る度にかかるランニングコストが10万円とも20万円ともいわれており、そう簡単にはできないのが実情だろう。そのため、才能があっても経済的な事情から断念せざるを得ない人は、それこそ世界中にこれまで数え切れないほどいたはずだし、今もいるはずだ。しかし、それをeモータースポーツなら解決できる可能性がある。

 プレイステーション4(スタンダードモデル・HDD容量500GBタイプ2万9,980円(税別))、「グランツーリスモSPORT」(通常版6,900円(税別))、ステアリングコントローラー(ホリ製「レーシングホイールエイペックス」1万3,980円(税別))と、一式で5万円強(テレビモニターを除く)。ポンと買える額ではないが、モータースポーツでかかる費用と比べたら桁違いの少額で走り出せるのだ。

 しかも、eモータースポーツでも才能を見出されると、現在、スーパーGTのTEAM IMPULに所属するヤン・マーデンボロー選手のように、実際にレーシングドライバーになれた例もある。また、かつての日本人グランツーリスモ選手のトップのひとりだったyam氏は、現在「グランツーリスモ」シリーズを開発するポリフォニーデジタルでスタッフとして働いている。才能を活かすことができる道が確実に広がっているのだ。

 「たかがゲーム」と甘く見るなかれ。「グランツーリスモ」シリーズは、ついにモータースポーツの領域にまでたどり着いたのだ。また、今回のメーカーの威信をかけた対決には、誰もが熱いものを感じたはずだ。メーカーの威信をかけたeモータースポーツの感動を、ぜひ味わってほしい。

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手を挙げている3人が優勝したマツダチーム。1位を奪取したプロドライバーの加藤選手(中央)の活躍も大きいが、社員ドライバーの板垣アシスタントマネージャー(左)が大きく破綻することなく走りきったことが勝因だろう。最後はきっちりRyu_Ryu_RS選手(右)が締め、接戦の中、1位を明け渡すことなくゴールラインを駆け抜けた。

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リザルト。この6車種が競って勝負になるのが、eモータースポーツのいいところ。「NSX」のベストラップが光る。

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