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クルマ最終更新日:2018.10.03 公開日:2018.10.03

さようなら、地下鉄・千代田線「6000系」

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1960年代末から70年代初頭における、当時の帝都高速度交通営団(東京地下鉄株式会社の前身)の技術力を結集させて開発したのが「6000系」。量産車両としては世界初の機能などを複数搭載し、この後に開発された営団の車両のモデルとなった。車両は、10月13日から11月11日までのラストラン特別運転を行う2編成の内の6102編成。画像提供:東京地下鉄

 東京メトロ・千代田線は渋谷区の代々木上原から足立区の北綾瀬までをつなぐ地下鉄だ。北東側では綾瀬からJR常磐線に乗り入れて同線各駅停車として茨城県・取手まで、そして南西側では代々木上原から小田急小田原線に乗り入れて神奈川県・本厚木まで直通運転しており、首都圏の鉄道として利用者の多い路線のひとつである。

 そんな千代田線の車両として、1971(昭和46)年に量産車がデビューした「6000系」が、この10月5日(金)に50年近い営業運転の通常運行を終了する(現在は1日2編成が運行されている)。そして10月13日(土)から11月11日(日)までは、土日限定で綾瀬~霞ヶ関間を1日1往復のラストランとなる特別運転を実施。この間のダイヤは、綾瀬13時29分発(往路)、霞ヶ関14時16分発(復路)だ。

千代田線「6000系」とはどんな車両?

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「6000系」の6120編成。ロゴマークが現在の東京メトロの「m」ではなく、営団時代のSubwayの「S」をモチーフにしたものであることからわかるように、「6000系」の中でも既に引退している旧式。画像提供:東京地下鉄

 千代田線は、銀座線、丸ノ内線、日比谷線の混雑解消を図ることを目的に、1962(昭和37)年都市交通審議会答申6号において東京9号線としての確定を受けた後(1964年に一部改訂)、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)の前身である帝都高速度交通営団(営団)が1966(昭和41)年から着工を開始した。まず1969(昭和44)年12月に大手町~北千住間が開業し、最終的に現在の全線が開通したのは1979(昭和54)年。先の3線に続き、東西線も部分的に営業を開始しているので、帝都高速度交通営団の路線としては5番目に営業運転を開始した。

 「6000系」は1968(昭和43)年から開発が始まり、量産車両が千代田線に導入されたのが1971年。合計353両が製造された。従来の営団の車両とは一線を画す、当時の最新技術が導入された車両だった。まず、見た目が従来の車両とは大きく異なっていた。可能な限りの軽量化が目指され、量産車両としては世界初となるアルミ車体が採用されたからである。

 当時営団では、ステンレスの外板を使用した、無塗装によるメンテナンスフリーの車体が研究されていた。アルミニウム合金の材料工学、押出技術、溶接技術などが相まって進歩した結果、アルミ製の車体の製造が可能になったのである。アルミ車体の製造技術の開発は、苦労の連続だったという。

 さらに、車両の顔である前面デザインが非対称とされたことも大きな特徴。車体がアルミ製であることとの相乗効果で、未来的な雰囲気を醸し出していた。こうした車両デザインは、20年以上先でも陳腐化しない、次世代を担う車両に相応しい既成概念にとらわれない自由な発想ということで採り入れられたという。ちなみにこの非対称の前面部分の正面貫通扉には、緊急時に乗客が車外に脱出しやすいよう、前倒し式の非常用ステップ機能が一体化されており、これも斬新な発想と評された。

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10月5日まで営業運転した後、10月13日から11月11日までのラストラン特別運転に入る2編成のひとつ、6130編成。6120編成の画像と比べると、前面のデザインの細部が異なるのがわかる。画像提供:東京地下鉄

「6000系」は搭載機器も当時最新のものが導入された

 「6000系」はこうした外観だけが特徴的なわけではない。その搭載機器も当時最新のものだった。急速な発展を見せつつあったエレクトロニクス技術が導入されたのである。その代表となるのが、車両の制御技術として世界で初めて量産車両で採用された、電力回生ブレーキ付きサイタリスタ・チョッパ制御方式だ。電力回生ブレーキと組み合わせられたサイタリスタ・チョッパ制御方式は、従来の抵抗制御方式よりも格段に使用電力量を節約できるのが特徴。つまり「6000系」は、当時世界で屈指の省エネルギー車両だったのである。さらに、モーターの制御が抵抗制御方式では不可能な滑らかさを得られるという利点もあった。

 そしてもうひとつのエレクトロニクス技術が、地上信号機から車内信号機(キャブシグナル)へ転換されたこと。当時、この車内信号機を採用していた車両は、東海道新幹線のみ(新幹線は高速運転のため、線路脇の地上信号機を運転士が視認しにくいという問題を克服するために導入していた)。地下鉄の場合は、地上信号機だと遠方から見通しにくいという問題があり、車内信号機が必要とされていたのである。車内信号機にしたことで運転士が確認しやすくなり、千代田線の運行において大いに効力を発揮したという。

 こうした性能の高さにより、「6000系」以降に製造された車両の標準型とされ、1972(昭和47)年には鉄道友の会より第12回「ローレル賞」を受賞した。ローレル賞は、技術的に秀でた通勤型および近郊型の車両に贈られる賞である。

 ちなみに「6000系」は2013年5月に大幅な改修を受け、車両制御がサイタリスタ・チョッパ制御方式から、現在主流のVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータ制御方式に変更された。10月5日まで営業運転を行い、特別運転も担当する6102編成と6130編成はこのVVVFインバータ制御方式に改修された車両だ。

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1972年、「6000系」は鉄道友の会よりローレル賞が贈られた。それを記念したヘッドマークをつけた6102編成。この6102編成は制御方式を改めるなど改修を受けて、現在も営業運転中で、そのままラストラン特別運転も担当する。画像提供:東京地下鉄

綾瀬~霞ヶ関間「6000系」特別運転日程

 営業運転からの引退後、「6000系」にはラストランとして特別運転が用意されている。特別運転を担当するのは、最後まで営業運転を担当した6102編成と6130編成。日程は以下の通りとなる。主な駅のスケジュールは最下段の画像の通りだ。

10月
13日(土)、14日(日)、20日(土)、21日(日)、27日(土)、28日(日)

11月
3日(土)、4日(日)、10日(土)、11日(日)

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かつて、綾瀬~北綾瀬間の1駅区間は3両編成の少々特別な「6000系」がワンマン運転を行っていた。この編成も既に引退しており、現在は東西線の05系を改修して千代田線カラーに再塗装した3両編成が運転中。画像提供:東京地下鉄

11月18日の綾瀬車両基地イベントもお忘れなく!

 千代田線などの車両基地である綾瀬車両基地の見学イベント「メトロファミリーパーク in AYASE 2018」が11月18日に開催される。こちらには、千代田線の現行車両16000系との綱引きなど、毎年恒例の人気プログラムが用意されている。詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

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