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クルマ最終更新日:2017.11.23 公開日:2017.11.23

フォーミュラE香港に可夢偉選手が緊急参戦!その心境は?作戦は??

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新しいカテゴリーのレースに参戦できることが非常に楽しみという小林可夢偉選手。

 12月2日から香港で2017/18シーズンが開幕する、EVフォーミュラカーの国際シリーズであるFIAフォーミュラE選手権。17/18シーズンは2018年7月28日・29日のカナダ・モントリオールのダブルヘッダーまで世界11カ国を舞台に全14戦が開催され、全10チーム20人のドライバーによって争われる。アウディやジャガー、ルノーなどが参戦しているほか、今後、日産、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、BMWなどもワークスとして参戦することを表明しており、現在、欧州のEV化の波などもあって最も熱いとされるレースだ。

 そんなフォーミュラEの12月2日(土)・3日(日)のダブルヘッダーとなる開幕戦の香港ラウンドに、F1経験もある小林可夢偉選手がスポット参戦することが発表された。チームは、MS&AD アンドレッティ・フォーミュラE(米)で、カーナンバーは27。レギュラードライバーのトム・ブロンクビスト選手の代わりを務める。チームメイトは28号車のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手。

 アンドレッティは同レースの1年目から参戦しているチームで、CEOは北米で開催されているインディカー・シリーズで佐藤琢磨選手が所属するチームと同じ、往年の人気ドライバーであるマイケル・アンドレッティ氏。

 可夢偉選手はフォーミュラEに参戦する日本人ドライバーとして、2014年の佐藤琢磨選手、2015年の山本左近選手に次いで3人目。22日に記者会見を実施し、抱負などを語った。

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フォーミュラEには以前から興味が

以前から参戦を考えていた

 以前からフォーミュラEへの参戦を考えていたという可夢偉選手。実際、2017年6月10日の独・ベルリンで開催された第7戦のパドックを表敬訪問している。可夢偉選手は、かつてチームメイトやライバルとしてしのぎを削った同世代の選手が数多く参戦しているのもあって魅力を感じており、さらに同カテゴリーをマネジメントしているスタッフにも知己が多く、参戦を以前から誘われていたともいう。

 しかしタイミングが合わず、これまではチャンスに恵まれなかった。ところが、17/18シーズンに参戦するためにはまさに最後の最後というタイミングで、アンドレッティチームからの参戦が決定したというわけである。

 可夢偉選手というとトヨタの生え抜き。2018年のル・マン24時間レースを含むWEC世界耐久選手権も、同チームで戦うという。しかし、今回はトヨタはまったく関係なく、自分自身で独自に活動してシートをつかんだということだ。実際、アンドレッティはBMWがテクニカルパートナーであり、18/19シーズンには同チームの体制を改めてBMWワークスとして参戦するといわれている。

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しかし、実は…早くもピンチが!

実は1度も実際にマシンを走らせたことがない!

 ただし懸念されるのが、アンドレッティのマシン「ATEC-003」で実際に走行できていないところ。ATEC-003どころか、テストに参加したことがないため、フォーミュラEのマシンを一度も走らせたことがなく、開幕第1戦がぶっつけ本番となる。厳しい状況といえるが、F1やWEC、日本のトップカテゴリーのスーパーフォーミュラなどいくつものカテゴリーでの経験を活かしていい成績を残し、「フォーミュラEの魅力を自分でも楽しみつつ、それをしっかりとファンに伝えたい」とコメントした。

 可夢偉選手は、WECでトヨタのハイブリッド・レーシングカー「TS050 HYBRID」をすでに2シーズン走らせているのだが、純然たるEVのレーシングカーでレースに参戦するのは初体験となる。そんなマシンに乗れることについては、バッテリーの扱い方などEVならではの経験を積めることが、ドライバーとして引き出しを増やすことにつながるので楽しみだという。

 ちなみにフォーミュラEは、市街地コースのため、トップスピードは時速200km強と抑えられている。F1で時速350kmオーバーという最高速度を体験してきたことを考えると、フォーミュラEはかなり遅いのだが、また違った難しさがあると可夢偉選手は語る。

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WECに参戦するためにトヨタが開発したハイブリッド・レーシングカー「TS050 HYBRID(2017年仕様)」。この7号車を駆って、2017年のル・マン24時間レースで可夢偉選手はコースレコードを叩き出した。

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F1より遅いからといってフォーミュラEは簡単ではない!

まるで時速400kmのマシンのように感じる!?

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1年前、2016年11月23日に「エコロジー&モビリティフェアin丸の内」で東京駅の目の前の丸の内仲通りをデモ走行した、ABT・シェフラー・アウディ・スポーツ(独)のフォーミュラEマシン。ドライバーを担当したルーカス・ディグラッシ選手(ブラジル)は、16/17シーズンの王者となった。

 可夢偉選手がフォーミュラEに参戦するドライバー仲間に聞いてみたところ、誰もが口をそろえていうのが、「まるで時速400kmのマシンのように感じる」だそうだ。その理由は、ドライバーがする作業が非常に多いためだという。さまざまな設定の切り替えなどを走りながら行う必要があり、その作業をし損なうとバッテリーが持たない可能性すらある。また市街地コースのため、路面はバンピーでスリッピー。反面、タイヤのグリップがあまり高くなく、F1とはまた違った難しさがあるという。

 チームに関しては、可夢偉選手自身は「琢磨選手が2017年のインディ500で優勝した時のチーム」と思っていたというが、実のところは米国のチームというわけではなく、フォーミュラEのチームはインディカー・シリーズのチームとはまったく別。イギリスに拠点を構え、米国のチームとは違った雰囲気を持っているという。

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人気の高さが勝利につながる”ファンブースト”とは?

「ファンブースト」は日本で公道レース実現のために!

 フォーミュラEには独自のルールがいくつかある。たとえば、まだバッテリーの容量が1レース持たないため、1人のドライバーが2台のマシンを乗り換えて走る(17/18シーズンでこのルールは終了予定)。

 また、ファン投票が多いと加速ボタンを使うことができる「ファンブースト」という仕組みもある。投票が多い上位3選手は、このファンブーストを追加で利用できるため、前走車を抜けるチャンスも増えるというわけだ。

 可夢偉選手も、この仕組みはもちろん知っており、ファンの興味を盛り上げるので「ぜひ日本でも市街地レースが開催できるよう、多くの方に投票してもらいたいです」という。だが、その一方で、「実はファンブーストは使用するとバッテリーが高温になってトラブルにつながる可能性があるらしく、どのドライバーも『実はファンブーストはあまり使いたくない』っていうんですよね(苦笑)。ぜひ投票はしてもらいたいのですが、もしファンブーストを僕が使わなくても、それはバッテリーの温度の問題のせいだと思ってください(笑)」とも。

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ファンブースト投票サイトはこちら(新しいタブが開きます)。画面上部のメニューから日本語も選択が可能だ。現在はまだ17/18シーズン第1戦の投票を受け付けておらず、11月28日からスタートとなっている。

 従来のモータースポーツは、大爆音が魅力でもある一方で、ファンでない人にとってはただの迷惑でしかなく、日本ではビッグレースの市街地での開催はない。しかしフォーミュラEはその爆音がなく、日本でも市街地レースがこれまでよりは開催しやすいはずだ。

 18/19シーズンからは日産が参戦することも発表されており、運営側も日本開催を検討しているという。可夢偉選手を応援するのと同時に、日本での開催を呼び寄せるためにも、あなたもぜひ投票してみてはいかがだろうか?

2017年11月23日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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