「ちょい乗り」の次は「相乗り」。タクシーの相乗りが試験導入へ
国土交通省は4月21日、タクシーの利用を促すため、目的地が近い複数の利用客が1台のタクシーに乗る「相乗り」を認める方向で、今年度中に東京などの都市部で、実証実験を行うことを明らかにした。
© Daimler AG
タクシーといえば、今年1月、東京都(東京都23区、三鷹市、武蔵野市)の初乗り運賃(約1Kmまで)が、700~730円から380~410円に引き下げられたばかりである。
国土交通省によると、初乗り運賃を引き下げた結果、短期間でのタクシーの利用者は増えているということだ。しかし、同時にタクシーの利用者がこの10年ほどの間で30%近く減っているとしており、利用を増やす取り組みを進めている。
タクシーの利用状況は30%、その理由は?
2017年2月に内閣府が発表した「公共交通に関する世論調査」(調査時期:2016年、調査対象:18歳以上の日本国籍保有者1,899人)によると、日本人のタクシー利用状況は、71.5%が「利用していない」と回答し、「利用している」は28.5%だった。
タクシーを利用していない理由は、以下のとおり。
◆「自動車などを利用する」66.5%
◆「料金が高い」34.0%
◆「タクシー以外の公共交通機関を利用する」19.3%
◆「出かける機会が少ない」14.1%
第1位の「自動車などを利用する」は、都市規模別にみると、小都市で75.5%、町村で86.6%に上り、自動車が主要交通手段である地方の特徴を表している。
注目したいのは、第2位の「料金が高い」という理由だ。そこでタクシー料金を、他の国との比較で検討してみたい。
ドイツのTaxi Rechner(「タクシー計算」)というWebデータバンクでは、世界373都市のタクシー料金を算出できる。それによると、以下4都市の初乗り料金はこのような結果となる。(4月25日現在)
◆ニューヨーク 約330円
◆ロンドン 約335円
◆ベルリン 約460円
今年の1月に東京の都市部限定で値下げを行うまで、700円台だった日本に比べ、大幅に安いのが特徴である。
この内、ベルリン市民のタクシーの利用状況は46%(2015年の統計)。実際20年間ベルリンに滞在した感覚では、空港までの足や、急ぎの時にタクシーを利用する人は多く、「タクシーは高価」というよりは、「身近な交通手段」として機能しているように思える。
タクシーをより手軽に
今回の「相乗り」に関して、国土交通省は、タクシーを予約するためのスマートフォンのアプリを活用し、行き先が近い利用客同士を引き合わせる仕組みを検討している。すでに「相乗り屋.net」などのライドシェア・アプリの提供は行われていて、終電を逃した時や悪天候時にタクシー待ちで行列ができている時などに活用されそうだ。
「ちょい乗り」と「相乗り」が実現し、日本のタクシーがより手軽に利用できる交通手段になって欲しいものである。
2017年4月24日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)