【自動車カメラマンの、旅のしおり】日本自動車博物館
自動車カメラマンの高橋学です。今回は、総展示台数500台と圧巻の規模を誇る「日本自動車博物館」(石川県)をご紹介します。車好きな方もそうでない方もぜひ行ってみてください。濃縮感満点の展示が圧巻です。
世界に誇る自動車メーカーを数多く抱える自動車大国日本。それゆえ国内に自動車を展示する博物館は数多く、自動車メーカーが自社の車の歴史を伝えるために設立したものから私設の博物館まで、その展示内容もさまざまです。そんな中にあって、総展示台数500台と圧巻の規模を誇る「日本自動車博物館」(石川県)をご紹介します。
日本自動車博物館の建物外観
「日本自動車博物館」は1978年に富山県に開設された私設の自動車博物館です。1995年に現在の石川県小松市に移転。23年前に建てられた赤レンガの外観も美しく、外には東日本大震災時にドイツから復興支援車両としてやってきたウニモグやゼトロスがさりげなく展示され、入館前から蔵車の充実ぶりを予感させられます。
正面ゲートを通り入場すると、いきなり膨大な展示物に圧倒されます(上写真)。3階建てのフロア全てにぎっしりと詰め込まれた車の数々。展示はメーカーやカテゴリー別に整理されていますのでとても見やすいのですが、隣の展示車との間隔が狭すぎてドアも開けられなさそうな感じが、逆に圧巻です。かなり大きな建物ですが、それでもこの状態というのが500台の威力! です。
国やメーカー別に展示されているので数は多いが実はとても見やすい展示です
みんな平等が好感度大! な展示
さて、まずその数に圧倒されながら見学していると気づくのが、年代、製造国、そして乗用、商用問わず特定のカテゴリーに偏らないラインナップの広さです。1899年(明治32年)に作られたガソリン自動車の元祖とも言えるド・ディオン・ブートンの4輪車から、故・ダイアナ妃も来日時には実際に乗ったという英国大使館で使用されていたロールスロイス、はたまた普通すぎるノーマルの初代カローラなどなど、現存数の少ない車や歴史的な逸話を持つ車、日常的な車が所狭しと並んでいます。第28回東京モーターショーで参考出品された幻のスーパーカー、ジオット・キャピスタの1号車(上写真)など世界中探してもここにしかない1台も、街でよく見かけたスターレットもブルーバードもここではみんな同じ扱いです。
1940年代に作られた旧ソ連製の4輪駆動車GAZ-69も珍しいのですが、エスカルゴ、マイティボーイ、マーチスーパーターボ、スターレットの通称韋駄天ターボ、シャレードディーゼルターボなど80年代の国産車が一堂に揃った展示もなかなか珍しいものです(上写真)。
実は、これら昔は街でよく見かけた普通の車、そしてその車種さえ意識されることのない働く車の充実ぶり(上写真)は、この博物館の特徴でもあります。貴重な戦前モデルとかつてどこでも見かけた車が同居しても、各ジャンルが充実してしまうのが500台一括展示の恐ろしいところでもあります。
ほかの見どころは?
館内には古い車のカタログ(上写真)やミニカーなどの展示物、ホーンやライトだけを集めた展示などもあり、これもまた車への興味をかき立てられるものばかりで楽しいものです。
実車がぎっしりと詰め込まれているゆえに、リアデザインなど少々見にくい部分もあります。でも所狭しと並べられた車を見ながら、その車が生まれた時代的背景を想い、またそのディテールに時代の工業力を感じ(上写真)、時には車を通じて自分の思い出を懐かしみながらのひと時を過ごすのも楽しいものです。
ちなみに、日本自動車博物館のトイレにはなぜか全館にわたって男性用、女性用ともにさまざまな世界各国の便器が備わっています(上写真)。もちろん展示用ではなく実際に使用するものです。こちらも車同様、いや、それ以上に生活に密着したものだけに不思議な楽しさを感じます。
今年は大雪に見舞われるスタートとなった北陸地方ですが、春はもうすぐです。車に興味のある方はぜひ一度訪れてみることをオススメします。
●日本自動車博物館
〒923-0345 石川県小松市二ツ梨町一貫山40番地
電話:0761-43-4343
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:12月29~31日
http://mmj-car.com/
2018年3月5日(自動車カメラマン・高橋学)
高橋学(たかはしまなぶ):フォトグラファー。1966年北海道生まれ。スタジオに引きこもって創作活動にいそしむべくこの世界に入るが、なぜか今ではニューモデル、クラシックカー、レーシングカーなど自動車の撮影を中心に活動中。日本レース写真家協会(JRPA)会員。