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クルマ最終更新日:2024.01.09 公開日:2022.08.15

自動車税を払わないと延滞金や差し押さえが発生する?~弁護士に訊いてみた~【クルマと法律vol.04】

交通問題やクルマに関する相談について、法律の見地から分かりやすく解説する連載「クルマと法律」。今回は、自動車税を支払わなかった場合の延滞金や差し押さえについて、弁護士・山崎勇人先生に話を聞きました。

文=弁護士・山崎勇人

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クルマと法律|自動車税|滞納|督促状|延滞金|差し押さえ|自動車税納税通知書

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「自動車税の納付を忘れていて、納期限が過ぎ、督促状が届きました。罰則や延滞金は発生しますか?」

自動車税が未納だと延滞金が発生

相談者:先月、自動車税の納税通知書が自宅に届いていたのですが、仕事と子育てに追われてバタバタしているうちに、納期限を過ぎてしまっていたようです。今から支払うべきでしょうか

山崎弁護士:車の所有者には、毎年「自動車税」が課せられます。自動車税は、毎年4月1日午前0時の時点での車の所有者に支払義務があり、納付書は毎年5月上旬に都道府県より送付されます。納期限は、通常5月末日となっていて(都道府県によって納付期限が異なる場合もあり)、期限を過ぎても必ず支払わなくてはなりません。それを過ぎると延滞金が発生しますので、注意が必要です。

相談者:実は今日、自宅のポストを確認したら、自動車税の納付に関する督促状が届いていました。督促状が届いたということは、延滞金を含めて支払わないといけないのでしょうか。

山崎弁護士:納期限を過ぎて未納の場合は、延滞金が発生します。厳密に言うと、納期限の翌日から1日ごとに延滞金が加算されていきます。ただし、1000円未満の端数は切り捨てられるので(国税通則法119条第4項)、実際に支払義務が発生するのは、延滞金が1000円に達してからということになりますね。

相談者:そうなのですね!ならまだ延滞金を支払わなくてもいいかもしれないですね。間に合うでしょうか。

山崎弁護士:延滞金が加算されていく具体的な割合は、自治体や期間によって微妙に異なりますし、加算される金額も自動車税の額によって変わりますので、個別に確認するしかありません。いずれにせよ、督促状が届いたらすぐに納付した方がよいでしょう。

相談者:分かりました。すぐに納付するようにしたいとは思いますが、仮にこのまま自動車税を納付しなかった場合、どうなってしまうのですか?

山崎弁護士:自動車税は必ず納めなければなりません。納付期限を過ぎても自動車税が未納の場合、数度にわたって納付を促す書面が届きます。それにもかかわらず、未納の状態が続くと財産の差し押えが実行されます。地方税法第331条第1項(2022年7月25日現在)に「徴税吏員(市長から委任を受けた職員)は督促状を発した日から10日を経過した日までに完納しないときは財産を差し押さえなければならない」と定められているので、法律的には督促状を送付した日から10日過ぎても納付が確認できない場合は、財産の差し押さえが可能ということになります。

 自動車税に関する減免制度(障害者減免、公益減免等)もありますが、納付期限を過ぎてから遡って減免を受けるということはできません。また、減免制度には申請期限があるため、そもそも申請期限を過ぎると減免は受けられないので、注意が必要です。

相談者:えー。督促状が届いて10日過ぎたら財産を差し押さえられてしまうということですか? それはさすがにやり過ぎではないでしょうか・・・。

山崎弁護士:確かに、「10日を過ぎても完納しないときは財産を差し押さえなければならない」というルールが厳格に適用されるとなると、差し押さえをされる側もする側も大変ですよね。そこで、各地方自治体によって異なりますが、一般的には以下のような流れで財産の差し押さえが行われているようです。

① 納付期限を過ぎても自動車税を支払わないと20日以内に督促状が送付される。
② 督促状を無視して自動車税を支払わないでいると、次に警告の意味を込めた催告書が送付される。この時点では延滞金も発生し、催告書には一般的に「何月何日までに納付すること」、「納付しないと差し押さえの可能性があること」等が記載されていることが多い。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         
③ 催告書を無視すると、繰り返し催告書が送付され、最終的に「差押予告通知書」が送付される。当該通知書には一般的には「何月何日までに納付しなければ財産を調査し、差し押さえを実行します」といった内容が記載されている。これも無視して、自動車税の支払いや役所の担当窓口への問い合わせなどを怠ると、いよいよ差し押さえが実行される。

自動車税を納付しないと、給料や預金などが差し押さえに!

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相談者:差し押さえと言われても、あまりイメージがわかないのですが、具体的にはどのような財産が差し押さえの対象になるのですか?

山崎弁護士:給料、銀行預金、自動車などの資産が差し押さえの対象となります。

相談者:え? 差し押さえられるのは、自動車だけではないのですか?

山崎弁護士:滞納しているのは自動車税だから、自動車だけが差し押さえの対象となると勘違いされる方もいるかもしれませんが、自動車に限らず、給料や銀行預金も差し押さえの対象となりますので、注意が必要です。

相談者:給料や銀行預金が差し押さえられると、具体的にはどのなるのでしょうか?

山崎弁護士:給料を差し押さえられた場合は、勤務先に「債権差押通知書」が届き、健康保険などが差し引かれた給料から自動車税滞納分(延滞金含む)が差し引かれます。

 また、銀行預金口座が差し押さえられた場合は、自動車税の滞納分(延滞金含む)のみを差し押さえるので、口座そのものは使用可能です。しかし、その時点で住宅ローン等を返済中というケースにおいては、差し押えが実行されると、ローンの残額について一括返済を求められるリスクがあります。また、その時点では住宅ローン等を利用していなくても、今後、住宅ローンを利用しようとする際に支障が出るおそれもありますので、気を付けてください。

相談者:自動車が差し押さえられるのはどのような場合でしょうか?

山崎弁護士:給与所得がなかったり、銀行口座に預貯金がなかったりする場合は、自動車そのものが差し押さえられることがあります。役所の担当者立会いの下、タイヤロック等をして、強制的に自動車を動かせないようにした上で、それでも税金が納付されなければ、当該自動車は競売にかけられることになります。

相談者:なるほど、財産を差し押さえられると大変なことになりますね。そんなことにならないよう、これからは納付期限内に自動車税を納付したいと思います。

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