2022年05月02日 17:30 掲載

クルマ SUPER GT、2023年からカーボンニュートラル燃料を本格導入

GTアソシエイションとハルターマン・カーレス・ジャパンは、2022年4月17日、SUPER GT第1戦岡山の決勝日に共同記者会見を行い、2023年のSUPER GTから、ハルターマン・カーレス製のカーボンニュートラル燃料「ETS Renewablaze GTA R100」を本格導入すると発表した。

文=大谷達也

SUPER GT、2023年からカーボンニュートラルフェーエル本格導入(写真提供=GTA)

10年後も音があるレースを目指して

 SUPER GTのカーボンニュートラルへの動きが急速に具体化している。

 カーボンニュートラルとは、CO2排出量を実質的にゼロにすること。一般的には電気自動車や燃料電池車が「カーボンニュートラルな自動車」として認識されているが、残念ながら現状の電気自動車や燃料電池車で、SUPER GTを戦うGT500マシンやGT300マシンと同等の速さ、同等の航続距離を実現するのは不可能に近い。したがって、電気自動車や燃料電池車をそのまま現状のレーシングカーと置き換えればSUPER GTの魅力や迫力が大きく損なわれる恐れがある。また、電気自動車や燃料電池車は、現行のレーシングカーと違ってエグゾーストサウンドを響かせない点も、多くのレースファンにとっては物足りないところだろう。

 こうした観点から、SUPER GTを運営するGTアソシエイションはカーボンニュートラルフューエルの導入を検討してきた。

 カーボンニュートラルフューエルとは、一般的な化石燃料とは異なり、生産の過程で自然界からCO2を吸収した燃料を指す。たとえば、植物を蒸留して精製したアルコールは、植物が生長する段階で自然界からCO2を吸収しているため、燃焼時にCO2を排出しても「差し引きゼロ」と考えられる。こうした燃料を用いれば、現行の内燃エンジンを積んだレーシングカーを走らせてもCO2の排出量は実質的にゼロになるので、地球温暖化の防止に役立つと認識されている。GTアソシエイションは、SUPER GTを広く社会に受け入れられるイベントとすることで、モータースポーツを持続可能なものへと変革させることを目指しているが、今回のカーボンニュートラルフューエル導入もその一貫だと考えられる。

 ただし、これまではカーボンニュートラルフューエルを使おうとしても、その価格が並外れて高かったり、供給が安定しなかったりしたために、その導入は困難だった。また、候補となるカーボンニュートラルフューエルを現行のレーシングカーに投入した際、ガソリンと変わらない性能をエンジンが発揮するかどうか、エンジンや燃料系統に悪影響を与えないかどうか、といった点も確認されていなかった。

 いっぽう、GTアソシエイションは1年ほど前からカーボンニュートラルフューエルの採用が間近に迫っていることを言明。去る4月半ばに岡山国際サーキットで開催された開幕戦では、記者会見の席でGTアソシエイションの坂東正明代表が2023年からの本格導入について正式に発表したのである。

GTアソシエイション 坂東正明代表(写真提供=GTA)

GTアソシエイション坂東正明代表 写真提供=GTA

 SUPER GTで用いられるのは、ドイツに本拠を置くハルターマン・カーレス製のカーボンニュートラルフューエルで、その商品名は「ETS Renewablaze GTA R100」となる。ちなみにETSはハルターマン・カーレスが用いるブランドのひとつで、同社が手がけるレース用燃料の最高峰に位置している。

 ハルターマン・カーレスは160年以上の歴史を持つ化学メーカーで、自動車の黎明期からガソリンを製造・販売してきた。現在では特に特殊燃料の製造・販売に注力しており、読者の皆さんも聞けばびっくりするような世界的レースシリーズにも燃料を供給しているほか、2024年からは航空機用の再生可能燃料の製造・販売も手がけるという。

ハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社 川本裕喜社長(写真提供=GTA)

ハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社 川本裕喜社長 写真提供=GTA

 ちなみに、ETS Renewablaze GTA R100を用いた検証作業は始まっており、すでにトヨタとホンダがこの燃料を用いたベンチテストを実施。既存のガソリンとほぼ変わらない特性を備えていることを確認したという。今後は日産もベンチテストを行なった後、8月には鈴鹿サーキットで全車が参加してのテストを実施。いずれも問題が起きなければ、2023年からSUPER GTの全公式日程で使用する計画だ。

 今回の発表会ではETS Renewablaze GTA R100の具体的な価格については触れられなかったものの、そのコスト負担に関しては各チームが40%、自動車メーカー(トヨタ、ホンダ、日産)が各10%ずつで計30%、タイヤメーカーで10%、オーガナイザーで10%、GTアソシエイションで10%を負担することになる見通しである。

 ハルターマン・カーレスとGTアソシエイションは2023年から向こう3年間の契約を結んでおり、年間約30万リットルを輸入する計画だが、その後に関してGTアソシエイションは日本メーカーを軸として供給元の検討を行なうと見られている。

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