2021年12月10日 06:00 掲載

クルマ 第4期ホンダF1活動の7年間の戦い
その1:2014-2017年マクラーレン編

2015年シーズンから始まったホンダの第4期F1活動も今シーズン2021年で幕引きとなる。この7年間のホンダの戦いにおいて、第1シーズンと言える2014年の参戦発表から2017年までのマクラーレンとの活動をモータースポーツライターの大串信が解説。

文・大串信(モータースポーツライター)

2F1活動で黄金時代を築いたコンビ

2015年2月10日に行われたホンダとマクラーレンによるF1参戦発表会

2015年210日にホンダ本社で行われた発表会での写真 写真=ホンダ

 ホンダは2000年から8年にわたり、エンジンのみならずシャシーも開発するフルワークス体制で第3F1活動を展開したが、リーマンショックに端を発する景気後退を理由に活動を休止。以降6シーズンの間、ホンダはF1から遠ざかっていた。しかし2013516日、マクラーレンに対するパワーユニットサプライヤーとして2015年からF1へ復帰することを発表し、第4F1活動が始まった。

 ホンダとマクラーレンは、ホンダの第2期F1活動であった1988年から1992年まで5年間にわたってエンジンサプライヤーとコンストラクターとして蜜月状態にあった。その初期にはアラン・プロストとアイルトン・セナをチームメイトとして組み合わせ、その後はプロストに代えてゲルハルト・ベルガーを迎えた。この豪華な布陣で5シーズン中80戦で44勝し、ドライバー部門とコンストラクター部門のダブルタイトルを4回獲得するという圧倒的な戦果が記録された。

2015年は2人のF1チャンピオンで始動

2015年の最終戦アブダビGPでのマクラーレンMP4-30をドライブするアロンソ

2015年の最終戦アブダビGPでのマクラーレンMP4-30をドライブするアロンソ 写真=ホンダ

 ホンダの第4F1活動に向けてマクラーレンは、ドライバーにフェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンという2人のワールドチャンピオン経験者を起用した。あたかも栄華を極めた第2F1活動を思わせるコンビネーションだけに、マクラーレンと組んで再開するホンダの第4F1活動には期待が集まった。

 しかしホンダとマクラーレンのジョイント・プロジェクトには水面下で大きな問題も抱え込んでいた。2014年よりF1のレギュレーションが大改定され、1.6リッターV6気筒直噴過給エンジンにエネルギー回生システムを組み合わせたパワーユニットを用いることになっていた。ホンダは、これに環境対応をはじめ将来技術の開発や技術者の育成などの面に意義を認めて4回目のF1活動に踏み切った。しかし新しいレギュレーションに準じた新世代F1用パワーユニットには、きわめて複雑なエネルギー回生システムが必要なため、開発も容易ではなく時間を要することが予想されていた。それにも関わらず発表されたスケジュールは、参戦発表から2年も満たない2015年に実践デビューという強行軍だった。

 一方マクラーレン側にも問題が発生した。経営体制が変転し本来2015年まで使用予定だったメルセデスエンジンを、1年早い2014年に失うこととなり、それに伴いビッグスポンサーも離れるなど組織的に不安定な状況に陥った。その結果、ホンダとマクラーレンの関係は当初から不穏な空気がつきまとったのである。

2016年はトークン制度に苦しめられたエンジン開発

2016年の日本GPでのマクラーレンMP4-31をドライブするバトン

2016年の日本GPでのマクラーレンMP4-31をドライブするバトン 写真=ホンダ

 わずか2年にも満たない時間で開発されたホンダのパワーユニット RA615Hは開幕前テストからトラブルを多発した。2015年シーズンが開幕しても、マクラーレンMP4-30はトラブルとパフォーマンス不足に苦しんだ。

 エンジンの開発時間が短いだけでなく、マクラーレンはMP4-30の空力性能を引き上げるため車体後部を絞り込む「サイズゼロ」という新しいコンセプトを導入したマシンだった。ただでさえ開発時間が短かったホンダ製パワーユニットは、このサイズゼロに適応するため冷却系やエネルギー回生システムなどの再設計が必要となり、さらに開発時間が不足することとなった。結果、エンジンはパフォーマンス不足となった。これによりホンダとマクラーレンの間に不協和音が生じ始めた。

 エンジンに大きな改善が見られないままシーズンが進むと、レース中の無線でエンジンのパフォーマンスがF1より格下のカテゴリーであるGP2レベルだと発言するなど、ドライバーのアロンソも不満を隠さなくなる。こうして、ホンダ第4期F1活動の最初のシーズン、マクラーレンはチーム創立以来最悪のコンストラクターズランキング9位に終わってしまった。

 ホンダにとって不運だったのは当時のレギュレーション、いわゆるトークン制度により、開発領域に制限が加えられていた点だった。浮上した問題点を根本的に解決するだけの改良は許されず、2016年シーズンは前年度のエンジンをベースに改良を加えたパワーユニット、RA616Hで闘わざるをえなかった。RA616Hのパフォーマンスは向上してはいたが信頼性は相変わらず乏しく苦戦は続いた。ドライバーとしてはバトンに代えてストフェル・バンドーンを起用し、コンストラクターズランキング6位にはなったものの、マクラーレン・ホンダの影は薄いままだった。

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