2021年08月16日 12:10 掲載
クルマ 噂の中国製45万円EVが日本に上陸。見せてもらおうか、「宏光 MINI EV」の性能とやらを!
"45万EV"で一躍注目された「宏光MiniEV」。名古屋大学で7月末まで公開され、今後は山本真義教授が率いるパワーエレクトロニクス研究室で解体検証が始まる
中国のベストセラー車、「宏光 MINI EV」を激写!
脱炭素社会の実現へ向けて、国内外でクルマの電動化への動きがにわかに活発化している。しかし、現実に目を移すと現在販売されている電気自動車(EV)、特にバッテリーの電力だけでモーター駆動する電気自動車(BEV)は、航続距離を延ばすために高額な電池を多く搭載しており、結果として高級車並みの価格帯に行き着いてしまう。その意味では電動化したクルマは、庶民にはなかなか手が届きにくい存在となっているのが現状だ。
そんな中、昨年、その常識を覆すBEVが中国で登場した。それは"45万円EV"こと「宏光Mini EV」(宏光はホングヮン=hong guangと読む)で、その安さ故に中国国内ではテスラを上回る販売台数を獲得するという快挙を成し遂げたのだ。
そこまで人気のクルマなら実車を自分の目で確かめたいと思ったが、コロナ禍で中国へ取材に行くことも叶わない。そんな矢先、思いがけなく名古屋大学構内で7月末まで実車が公開されていると聞き、早速現地へと向かった。
車体は想像以上に大きい
「宏光Mini EV」は名古屋大学の研究館C-TECsの前に置かれていた。実車を目の前にすると想像していたのよりも大きめだった。というのも一見すると、日本が進めている超小型モビリティにも近いようにも見えたが、実車に近づいてみるとそれよりはずっと大きいのに気付く。
それもそのはず、「宏光Mini EV」のホームページによると、ボディサイズは全長2920mm×全幅1493mm×全高1621mmで、日本の超小型モビリティよりはずっと大きかった。
特に横幅では超小型モビリティ規格を20cmほど大きく、それは横幅1480mm以下の軽自動車規格よりも若干上回っていた。イメージとしては軽自動車の全長を50cmほどカットしたスタイルと思えば分かりやすいかもしれない。
スタイルは前後左右にわたって、ほぼスクエアな形状を持つ。サイズ感は日本の軽自動車の全長を50cmほどカットしたようなイメージだ
「宏光Mini EV」を輸入したのは一般社団法人 日本能率協会で、中国国内の販売店で購入したものを船便でそのまま日本に持ち込んでいる。あくまで研究対象として輸入したもので、そのために車検も通さず公道を走ることはできないという。
日本での初公開は今年6月に東京ビッグサイトで開催された「テクノフロンティア2021」。折しも日本では最高時速60km/hに限定した「超小型モビリティ」という新たなEVのカテゴリーが動き出している中で、そうした分野での参考にもなる公開になったとも言える。
ガソリンFR車を流用し、コスト管理を徹底
現地でのラインナップはエアコンを装備しないベースグレードの「軽松款」と、エアコンが装備される中間グレードの「自在款」、同じくエアコン付き上級グレード「悦亨款」の3グレードがある。今回日本に持ち込まれたのはこのうち最上位となる「悦亨款」で、販売価格は日本円換算で60万円強ほど。
上位の「自在款」と「悦亨款」とは装備品で違いはないが、最大の違いは駆動用バッテリーの容量で、「悦亨款」のみが13.9kwhで、他の2グレードは9.3kwhとかなり控えめになっている。これは価格や重量増を抑えるための設定と推察される。
ただ、車体重量が軽いためか、スペック上の航続距離はそれぞれ170km/120kmと容量の割に長めの設定だ。最高速度はいずれの仕様も100km/hで、スペック上なら高速道路も走れることになり、これは最高速度を60km/hとしている超小型モビリティよりも格上のスペックと言える。
ボンネット内を開くと給電用インバーターやブレーキブースターなどが見えた。ガソリン車に比べると実にシンプルな構造だ
「宏光Mini EV」の給電口はフロントグリル内に備えられ、手動で開閉する
タイヤサイズはアルミホイールに145/70R12を装着。ブレーキはフロントがディスク、後輪はドラム式の組み合わせ。サスペンションはフロントがストラット式独立で、リアは3リンク式リジッドアクスルを採用していた。ヘッドライトは全グレード共にハロゲンランプを装備。バックドアの開閉は電気式スイッチで行うのも共通だ。充電口はフロントグリル中央のエンブレム部分を手動で開き、普通充電のみの対応となっている。
「宏光Mini EV」でユニークなのが電動モーターの取り付け方だ。なんと後輪駆動用のデフギアボックスにダイレクトに電動モーターを取り付けているのだ。元々、ベース車はフロントにエンジンを備えたFR方式であり、プロペラシャフトが通るスペースはバッテリー収納用として活用している。
つまり、「宏光Mini EV」は、ガソリン車で活用していたシャーシや部品を上手に組み合わせることでEV化を実現した。こうした徹底したコスト管理があったからこそ、この驚異的な低価格は実現できたとも言えるだろう。
リアデフギアボックスに直接取り付けられていた電動モーター。ベース車のFR機構をそのまま活かすことでコスト削減につながっているようだ
ベース車のFR仕様ではここにプロペラシャフトが通っていたが、その場所はバッテリーの収容スペースに使われている。写真ではバッテリーが取り外されている
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