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クルマ最終更新日:2020.04.14 公開日:2020.04.14

車の「サブスク」って何? メリット・デメリットを調べてみました。

近頃よく耳にするようになった「サブスク」という言葉。サブスクとは、サブスクリプションサービスの略称であり、「定額料金を支払うことで、一定期間のサービスが受けられることを保証するサービスのこと」を指す。自動車メーカーもここ最近、新しい車の使い方として導入に積極的だ。ユーザーにはどんなメリット・デメリットがあるのだろうか? 自動車ジャーナリストの会田肇氏が、やさしく解説する。

文・会田 肇

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車のサブスクとは?

 日々の生活において、使いたいものは購入するという従来のスタイルから、使う権利だけに対価を支払う「サブスクリプション」への関心が高まってきている。当初は音楽や映像の配信から始まったこのサービスだったが、ここへ来てその範囲は家電やクルマといった、本来なら所有することが前提となっていたものにまでに拡大。最近は”サブスク”といったキーワードが一般に広まり、これまでの”所有”する概念がここへ来て大きく変化してきているのだ。ここではクルマのサブスクリプションについて、普通に購入する場合とどう違うのかを探ってみた。


「KINTO ONE」トヨタ/レクサス

「KINTO ONE」トヨタ/レクサス

 クルマのサブスクで最も知られているのが、トヨタが2019年にスタートさせた「KINTO ONE(キント・ワン)」だろう。トヨタやレクサスのクルマを3年間、定額で乗ることができるサービスだ。対象となる車種はトヨタとレクサスの両ブランドを合わせると29車種にも及ぶ。月々の支払い額は車種によって異なるが、ベーシックなヤリス X 1.5Lガソリンで3万9930円。これをハイブリッドにすると4万7300円になり、さらにスマートエントリーやドラレコなどを加えた「セーフティプラスパッケージ」にすると5万3570円となる。

 これを毎月支払うわけだから、決して安い金額ではない。しかし、このプランの中には税金や任意保険、メンテナンス費用に至る、ほぼ維持費すべてを含んでおり、ユーザーが個別に支払うのはせいぜい駐車場代と燃料代ぐらい。それ以外の費用は一切かからないのがこのプランならではの特徴となる。特に保険料が高額となりやすい若い世代にはかなりメリットが大きく、しかも仮に事故を起こしても、対人、対物、車両保険等がセットされているため、ユーザーが負担する費用は最大5万円で、その後保険料が別途請求されることもない(当然だが、行政処分、刑事処分にかかる費用は別)。これならマイカー初心者でも不安なく契約できるのではないだろうか。

 一方で免許返納が視野に入りそうな高齢者にとってもメリットはある。いつまで運転できるか自信がない高齢者は新車を購入するのは躊躇しがちだが、このプランでは免許返納した場合なら違約金なしで途中解約ができる。つまり、「免許返納するから……」と安全性が低い古いクルマを乗り続けなくても、最新の安全装備を搭載した新車に乗り換えて、どうしても運転に不安を感じるようになれば、躊躇なく解約すればいい。万一の場合の保険料も含まれているわけで、それらを鑑みれば月々の支払いは決して高くはないだろう。

 ただ、良いことばかりではない。一般的な自動車保険は最初の契約時は高く、無事故を続けると徐々に割引率が高まっていく仕組みだが、KINTO ONEでは保険の契約者がKINTOであるため、それは適用されない。さらに同サービスでは、3年間にわたって同じクルマを乗り続けることが必須条件。走行距離も月間走行距離制限は1,500km、3年間で54,000kmまでという枠があり、超過分は精算が必要となる。また、電子タバコを含む喫煙・ペットの乗車・車両の改造等、クルマの価値を下げることにつながる行為は原則禁止されている。


「Honda マンスリーオーナー」ホンダ

「Honda マンスリーオーナー」ホンダ

 2020年128日から始まったホンダのサブスク「Honda マンスリーオーナー」は、同社独自のサービスモデルを採用する。このサービスでは契約期間を最短で1か月、最長でも11か月としており、短期間での利用をターゲットとしている。さらに提供されるクルマは新車ではなく中古車。通常、契約期間が短くなれば支払額は増えるものだが、中古車とすることでそれを抑えているというわけだ。

「Honda マンスリーオーナー」のサイトには、実際に利用可能な車両が並ぶ。中古車なのでクルマの年式や走行距離だけでなく、装備類も決まったものとなる。契約前に車両の状態を確認するニーズも強く、そのために「仮予約」として一時的に車両を押さえておくことも可能になっている。もちろん、保険料も含まれており、価格が抑えられている分だけ若い世代にも受け入れやすいと言える。また、契約満了時は店舗と相談の上、車両の購入もできるという。

 ただ、このサービスを行っているのは埼玉県の1店舗だけ。現状では車両数もあまり多くなく、車種もコンパクトカーが中心となる。さらに1か月で1000km以上を走行すると別途6円/kmが課金されるので、走行距離の多い人には不向きだ。事故については保険料で賄われるものの、車両は基本的に経年劣化を除いて原状を復帰して返却しなければならない。「KINTO ONE」同様、ペットや喫煙による車内の汚れもNGだ。


「SMAVO」ボルボ

「SMAVO」ボルボ

 輸入車をサブスクで乗れるのが、ボルボが始めた「SMAVO(スマボ)」だ。この名称は「”スマ”ートに”ボ”ルボに乗れる」の意味から取ったもので、ボルボの全車種が対象。3年契約で2年後から乗り換えられる「SMAVO 2/3(スマボ・ニイサン)」と、5年契約で3年後から乗り換えられる「SMAVO 3/5(スマボ・サンゴウ)」の2種類を用意する。

 契約の基本は、頭金や諸費用、契約期間中の自動車税などを含めた定額払い(保険料は別途)だが、SMAVOの注目ポイントはそれぞれ3年後残価50%、5年後残価30%と、比較的高めに保証していることだ。これは、乗り換え時の残価リスクを最小限に抑えただけでなく、ユーザーが常にボルボの最新安全装備車に乗り続けていられる環境を提供することにもなる。

 また、契約満了時で超過した距離は別途精算となるが、外装やシート、ホイールのリスクに対しては各10万円の補償が受けられるメリットもある。途中で乗り換えたくなってもSMAVO2/3なら2年経過後に、SMAVO3/5なら初回車検時に22万円の乗換精算金で対応できるのも見逃せない。さらに月々の費用を抑えたい人向けに、ボルボの認定中古車でプランが組める「SELECT SMAVO」も用意されているのはありがたい。

サブスクはお得なのか?

 ここまで各社のサブスクについて紹介してきたが、ローンで購入するのとどちらがお得なのか。その基準となるのが契約満了後のクルマの価値だ。ローンで購入した場合は、税金や保険料などの維持費を自分で払う必要があるものの、資産として車両は残る。満了以降も同じクルマを乗り続けるつもりなら間違いなくローンで購入した方が得だ。どのプランでも走行距離の制限があることや、ペットなどによる汚れにも気遣いが必要なことも忘れてはいけない。

 とはいえ、前述したように保険料が高い若い世代なら十分メリットはあるし、頭金を含む初期費用が不要というのも大きい。いつ車を手放さなければならなくなるかわからないようなユーザーは、サブスクモデルが便利だろう。その辺りを考慮しつつ判断するといいだろう。

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