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クルマ最終更新日:2020.02.10 公開日:2020.02.10

【ジャパンキャンピングカーショー2020】バンコン&キャブコン、冬の新車たち

キャンピングカー系展示会の中で、国内最大級の規模を誇るジャパンキャンピングカーショーが1月31日から2月2日まで開催された。今年は幕張メッセの1~4ホールを会場として同展示会史上最大規模の展示面積で開催され、出展台数は300台強を数えた。その中から、バンコンやキャブコンなど、中~大型サイズのニューモデルに注目した。

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 現在、日本のキャンピングカー市場は堅調だ。日本RV協会が2019年7月に発表したキャンピングカーの国内保有台数は、11万台超。2005年時点で約5万台だったが、年々伸び続け、約15年で2倍となった。販売総額は2018年に最高額を記録し、約485億円という市場規模となっている。

 ここでは、合計8種類あるキャンピングカーのカテゴリーの中から、バンコンバージョン(バンコン)と、そのひとつ上のクラスの大型車キャブコンバージョン(キャブコン)という、人気カテゴリーの新車を取り上げる。

バンコンとは? キャブコンとは?

 バンコンとは、主にミニバン・1BOXをベースにした中型クラスのキャンピングカーのことだ。ベース車両として、トヨタ「ハイエース/レジアスエース」の兄弟車が主流だが、近年はよりコンパクトなトヨタ「ライトエース/タウンエース」の兄弟車も増えている。街中での普段使いも不可能ではないサイズでいながら、居住スペースも広いことから国内キャンピングカーの主流として長らく市場を支えている。

 一方のトラックをベースとしたキャブコンは、基本的にはバンコンよりも大型のキャンピングカー。荷台部分を取り外し、シャシーに大型キャンパーシェル(居住スペース)を搭載しており、居住性が高く、設備が充実している点が特徴だ。キャビン(運転スペース)上部にひさしのように突き出たバンクベッドが外見的な特徴のひとつである。ベース車両として最も採用されているのが、トヨタのトラック「ダイナ/トヨエース」の兄弟車から開発された専用シャシー「カムロード」(画像1)。マツダのトラック「ボンゴ」ベースの車両も多い。

画像1。キャブコン専用シャシーのトヨタ「カムロード」2019年式。

画像1。キャブコン専用シャシーのトヨタ「カムロード」2019年式。ジャパンキャンピングカーショー2019のナッツRVブースにて撮影。

 なお今回は国産車ベースのみにフォーカスしたが、バンコンもキャブコンも、輸入車はフィアット「デュカト」(画像2)ベースが多い。

画像2。フィアット「デュカト」ベースのキャブコンの輸入車ADRIA社製「COMPACT SUPRAEME SL」。

画像2。フィアット「デュカト」ベースの輸入キャブコンの1台。スロベニアのADRIA(アドリア)社製「COMPACT SUPRAEME SL」。

国産最高級バンコンの誕生も近い!? 開発が進む「グランエース」ベースのバンコン

画像3。トイファクトリーが出展した、トヨタ「グランエース」ベースのバンコンのコンセプトモデル。

画像3。トイファクトリーが開発中のトヨタ「グランエース」ベースのバンコン。

 トイファクトリーは岐阜に本社を構え、首都圏にも店舗を構えるキャンピングカービルダーの大手のひとつで、今回は11台を出展した。展示会全体の目玉のひとつでもあったのが、トヨタ「グランエース」をベースにしたバンコンのコンセプトモデルだ(画像3)。「グランエース」は2019年12月から販売が始まったばかりのトヨタのミニバン・1BOXの最上級モデルで、600万円超の高級車である。「グランエース」は大型ボディで車内が広く、キャンピングカー向きといえる。同社はそこに目をつけ、早速開発を開始したのである。

 今回のコンセプトモデルは、市販を想定したプロトタイプだ。ただし、まだ仕様は完全にフィックスしておらず、開発はこれから本格的に行われることになるという。「グランエース」はセカンド/サードシートも豪華なキャプテンズシートであることが特徴のひとつだが、今回はそれを活かすために車内にはあまり手をつけなかったとのこと。大きく手を入れられたのはルーフで、ポップアップ仕様にすることで、大人2名の就寝スペースが用意された。出展ブースのスタッフによると、車両価格は「1000万円を超えないようにしたい」とのことであった。

6インチ車高を上げたオフロード仕様が迫力の「ランドワゴン Lino」

画像4。RVランドの「ハイエース」をベースにしたキャンピングカー(バンコン)「ランドワゴン Lino」。

画像4。RVランドの「ハイエース」をベースにしたキャンピングカー(バンコン)「ランドワゴン Lino」。

 茨城県常総市に本社を構え、九州にも展示場を持つRVランド。今回、多くの来場者の目を引いていたのが、ハワイ語で「輝き」の意味を持つ”Lino”の名を与えられたバンコン「ランドワゴン Lino」の特別仕様だ(画像4・5)。「ランドワゴン Lino」はトヨタ「ハイエース」をベースとし、シンプルな車内レイアウトと、モダンなファニチャーを特徴とする。しかし今回は特別仕様としてオフロードスタイルに仕上げられており、まず車高を6インチ(152.4mm)アップ。さらに、フロントの大型のバンパーガードやルーフキャリアなどを装備。そしてボディを初め、車内の家具の多くをブラックで統一することで、とても精悍で迫力のある印象を与えていた。

画像5。RVランドのキャンピングカー(バンコン)「ランドワゴン Lino」の車内。

画像5。RVランドのキャンピングカー(バンコン)「ランドワゴン Lino」の車内。

【ランドワゴン Lino】
ビルダー:
RVランド
車両本体価格:
525万4545円(税別)
展示車両価格:681万1209円(税別)
ベース車両:ハイエース(トヨタ)
種類:バンコン
乗車定員/就寝定員:9名/大人3名+子ども2名
標準装備:給排水タンク(各19L)+シンク、カセット式調理器具、サブバッテリー(100Ah)など
オプション装備:ベバスト製FFヒーター、ポータブル式トイレ、外部電源、サイドオーニング、吸排気用ルーフベンチレーターなど

ミリタリーテイストのタフな1台!「ホビクル・オーバーランダー」

画像6。レクビィ×JAOSによるミリタリーテイストの「ホビクル・オーバーランダー」。

画像6。レクビィ×JAOSによるミリタリーテイストが特徴の「ホビクル・オーバーランダー」。

 愛知県に本社を構えるレクビィは、LACグループ4ブランドと共同出展(ブース合計28台が展示されていた)。話題となったのが、クロスカントリー系四輪駆動車向けを中心にアフターパーツを手がけるJAOS(群馬県)と組んで製作した、「ホビクル・オーバーランダー」だ(画像6)。シンプルさを特徴とした、「ハイエース」ベースのバンコン「ホビクル」シリーズの最新モデルである。

 オーバーランダーとは、クロカン系四輪駆動車などで車中泊やテント生活を繰り返しつつ数か月から数年もかけて長距離移動をする人々、もしくはそれに耐えられるだけの機能や装備が施された車両のことを指す。「ホビクル・オーバーランダー」は、外装にフロントスキッドバーやマッドガードなど、「JAOSワイルドキット」を装着。内装にはオリーブドラブのシートや、各種レールやバーなどが装備され、タフさに加えてミリタリーテイストとしている(画像7)。まさに質実剛健さにあふれたキャンピングカーといえよう。

画像7。レクビィ×JAOSのバンコン「ホビクル・オーバーランダー」の車内。

画像7。「ホビクル・オーバーランダー」の車内。シートのカラーリングもオリーブドラブを採用し、ミリタリー調。

【ホビクル・オーバーランダー】
ビルダー:
レクビィ×JAOS
車両本体価格:
450万円(税別)
展示車両価格:563万7000円(税別)
ベース車両:ハイエース(トヨタ)
種類:バンコン
乗車定員/就寝定員:5名/大人3名+子ども3名
標準装備:給排水タンク(各19L)+シンク、カセット式調理器具、脱着式ダイネットテーブルなど
電気系(家電も含む)標準装備:エアコン、サブバッテリー(115Ah)、走行充電装置、CTEK製昇圧充電システム、過放電防止&主電源スイッチなど
オプション装備:FFヒーター、マックス製ベンチレーター、外部AC入力&充電装置など

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大手・ナッツRVやバンテックの新型をチェック

18年ぶりのフルモデルチェンジで「クレソン ジャーニー」登場!

画像8。ナッツRVのキャブコン「クレソン ジャーニー エボライト タイプW」。

画像8。ナッツRVのキャブコン「クレソン ジャーニー エボライト タイプW」。

 北九州に本社を構え、国内各地区に店舗を構えるだけでなく海外にも工場や販売店を持つ、国内最大手ビルダーの1社であるナッツRV。今年は、同社でも初めてというほどニューモデルの大量展示を行い、13台の展示車両のうちの半数以上に及んだ。その中でもイチオシは、18年ぶりにフルモデルチェンジが行われたキャブコン「クレソン ジャーニー」シリーズだ(画像8は「エボライト タイプW」)。ベストセラーモデル「クレソン ボヤージュ」シリーズの後継モデルである。

 「クレソン ジャーニー」は「カムロード」ベースの1台で、先代「クレソン ボヤージュ」からの大きな変更点は、キャンパーシェルに新開発の超断熱性パネルを採用したこと。例えばフロアパネルの場合は5層構造となっており、下からFRP(強化繊維プラスチック)、スチレンフォーム(35mm厚)、プライウッド(合板)、FRP、木目調CF(塩化ビニール系のクッションフロア)という構成だ(画像9)。こうした多層構造により断熱効果を向上させ、保温性もアップ。さらに従来のパネルよりも軽量のため、キャンパーシェル自体を軽くすることで重心を低く抑えられ、走行安定性や安全面も向上したのである。

画像9。ナッツRVが開発した超断熱性パネルは、このように5層構造からなる。

画像9。超断熱性パネルの5層構造のイメージ。

【クレソン ジャーニー エボライト タイプW】
ビルダー:
ナッツRV
車両本体価格:
708万円(税別)
展示車両価格:713万5000円(税別)
ベース車両:カムロード(トヨタ)
種類:キャブコン
乗車定員/就寝定員:7名/6名
標準装備:給排水タンク(各20L)+シンク、カセット式調理器具、FFヒーターなど
電気系(家電も含む)標準装備:ナッツRV製充電システムEVOLITE、サブバッテリー×3、インバーター(1500W)、冷蔵庫(90L)、家庭用エアコン、電子レンジなど
オプション装備:シャワー、温水装置、サイドオーニング、トイレなど

人気キャブコン「コルドバンクス」が10年ぶりに4代目にフルモデルチェンジ

画像10。バンテックの新型キャブコン「コルドバンクス4」。10年ぶりのフルモデルチェンジが行われた。

画像10。バンテックの新型キャブコン「コルドバンクス4」。10年ぶりのフルモデルチェンジが行われた。

 所沢市に本社を構える大手ビルダーの1社であるバンテックは、13台を出展。目玉は1月31日に発表したばかりのキャブコン「コルドバンクス4」だ(画像10)。10年ぶりのフルモデルチェンジとなり、主力車種「コルドバンクス」が4代目となった。

 「コルドバンクス4」も「カムロード」ベースの1台で、特徴は細かいところまで徹底してユーザーフレンドリーに作り上げられているところだろう。例えば、エントランスドアは網戸付きの窓となっているので、虫の侵入を防ぎつつ外気を取り込むことが可能だ。車内に入ると、エントランスのステップは転落しかねない要注意ポイントだが、サブマットをはめ込んでステップをふさぐ設計で、転落の心配がない。またエントランスには、仕切り板付きで奥行きがあり、収納数の多いシューズボックスも用意されている。ユーザーがどれだけ便利に感じられるか、ビルダーとしての積み上げられたノウハウが随所から感じられる1台だ。

【コルドバンクス4】
ビルダー:
バンテック
車両本体価格:
661万円(税別)
展示車両価格:667万9000円(税別)
ベース車両:カムロード(トヨタ)
種類:キャブコン
乗車定員/就寝定員:7名/5名
標準装備:給水タンク(20L)、排水タンク(70L)、シンク、ガス供給(カートリッジ×2)、遮光網戸付きアクリル二重窓、ベバスト製FFヒーター、リアラダーなど
電気系(家電も含む)標準装備:家庭用エアコン、ソーラーベンチレーター、ガス警報器、サブバッテリー(100Ah)、配線強化型走行充電システム、バッテリープロテクター、外部電源など

出窓で車内の広さをアップ! バンコン「アメリア」のニューモデル登場

画像11。エートゥゼットの新型バンコン「アメリア」シリーズ。

画像11。エートゥゼットの新型バンコン「アメリア」シリーズの「ティエラ」。新型「アメリア」はオリジナルエクステンションボックス(出窓)が特徴だ。

 埼玉県春日部市に本社を構え、関東だけでなく関西にも店舗や展示場を構えるエートゥゼット。今回は9台を出展し、注目は2019年10月に発表した「ハイエース」ベースのバンコン「アメリア」シリーズのニューモデルだ(画像11)。内装の違いで「ティエラ」と「シエロ」の2種類がある。

 この新型「アメリア」の特徴は、車内の広さ。それを実現しているのが、右側面、運転席後部からバックドア手前まで設けられたオリジナルエクステンションボックス(出窓)だ。「ハイエース」の一部をカットし、そこに同社のキャンピングカー製造の技術を結集させた高断熱仕様のパネル製パーツを組み込んでいる。これで「ハイエース」ベースながらリアベッドの幅が1800mm(長さ1440mm)という、 クラス最大級を実現したという。このほか、ダイネットスペースは最大6人が座れる広さがあり(画像12)、ここはシートを展開してサブマットをセットすることで長さ1900mm×幅1550mmのフロアベッドにもなる。バンコントップクラスの車内空間を持つ1台となっている。

画像12。エートゥゼットの「アメリア」シリーズのニューモデルの車内。

画像12。新型「アメリア」シリーズ「ティエラ」の車内。インテリアコーディネーターが手がけた。

【アメリア ティエラ
ビルダー:
エートゥゼット
車両本体価格:
478万円(税別)
展示車両価格:508万2000円(税別)
ベース車両:ハイエース(トヨタ)
種類:バンコン
乗車定員/就寝定員:8名/大人3名+子ども3名
標準装備:給排水タンク(各10L)+シンク、カセット式調理器具、収縮式シンクシャワーヘッドなど
電気系(家電も含む)標準装備:サブバッテリー(105Ah)、走行充電システム、AC外部入力コンセントなど

車内スペースを300mm拡大できる機構を搭載!「ネオユーロ スライドアウト」

画像13。かーいんてりあ高橋のトヨタ「タウンエース」ベースの小型キャブコン「ネオユーロ スライドアウト」。

画像13。かーいんてりあ高橋の小型キャブコン「ネオユーロ スライドアウト」。300mmスライドアウトして居住スペースが広がる機能を備える。

 長野市のビルダーである「かーいんてりあ高橋」は高い技術力と独自のコンセプトでもって、「プリウス」をベースにしたキャンピングカーのようなオリジナリティの高い車両を開発している。今回は、トヨタ「タウンエース」ベースの「ネオユーロ」をビッグマイナーチェンジし、キャンパーシェルの居住スペースを拡大できるスライドアウト機構を装備した「ネオユーロ スライドアウト」を展示した(画像13・14)。

 同社は、「ネオユーロ スライドアウト」を小型のキャブコン=ライトキャブコンとして位置づける。キャブコンとしての居住性の高さを維持しつつも、日本の道路事情にマッチさせるのがライトキャブコンの主な狙いだ。通常のキャブコンはトラックベースのため、一般的な駐車場に止めるのは難しい。しかし、中型1BOXがベースの「ネオユーロ スライドアウト」ならそれも可能だ。その一方で、トラック用エンジンと比べると小排気量のため、出力・トルクともに劣ることが弱点。そこでキャンパーシェルの構造にアルミ素材を使い、家具に関しても工夫することで大幅な軽量化を実現。小排気量であることをカバーし、キャブコンを名乗るのにふさわしい1台となった。

画像14。かーいんてりあ高橋の「ネオユーロ スライドアウト」の車内。

画像14。「ネオユーロ スライドアウト」の車内。スライドアウト機構によってスペースに余裕ができたことからキャビネットを新設し、49Lの冷蔵庫も搭載した。

【ネオユーロ スライドアウト
ビルダー:
かーいんてりあ高橋
車両本体価格:
468万円(税別)
展示車両価格:509万1000円(税別)
ベース車両:タウンエース(トヨタ)
種類:(ライト)キャブコン
乗車定員/就寝定員:5名/2名
標準装備:給排水タンク(各19L)+シンク、カセット式調理器具など
電気系(家電も含む)標準装備:サブバッテリー
オプション:外部電源、発電機、エアコン(リア専用クーラー)、ポータブル式トイレなど


 今回の新車は、「ハイエース」や「カムロード」をベースにした車両が多かったが、同時に、それぞれ異なる特徴を持ったキャンピングカーであることも見てもらえたのではないだろうか。同じベース車両を用いていても、ビルダーごとに着眼点や得意とする技術などが異なる。それ故、完成したキャンピングカーはそれぞれ違った特徴を持つのである。ビルダーの数だけキャンピングカーは存在し、自分に合った1台を探し出すこともキャンピングカーの魅力なのだ。

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