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クルマ最終更新日:2019.10.01 公開日:2019.10.01

首都高神奈川7号横浜北西線の開通、2020年3月に前倒し

2017年3月27日にシールドマシンが発進し、本格的な工事がスタートした首都高神奈川7号横浜北西線。当初予定されていた工期を大幅に短縮し、2020年3月に開通することが発表された。これまで工事現場を3回リポートしてきたが、改めて神奈川7号横浜北西線の特徴やその整備効果を見てみる。

首都高神奈川7号横浜北西線・青葉JCT手前|Syutoko Knagawa 7th Yokohama Hokusei Line Aoba JCT

首都高・神奈川7号横浜北西線の青葉JCT手前付近。東名高速をまたいでいる区間を東側(港北IC方面側)から撮影。舗装路面やコンクリートなどが真新しい。2019年9月29日撮影。

 首都高・神奈川7号横浜北西線(K7北西線)は、横浜青葉IC・JCTと港北JCTを結ぶ往復4車線、設計速度時速60km(第2種第1級)の高速道路だ。首都高・神奈川7号横浜北西線(K7北西線)は、横浜青葉IC・JCTと港北JCTを結ぶ往復4車線、設計速度時速60km(第2種第1級)の高速道路だ。開通後の1日の交通量は4万1000台と推定されている。

 起点の横浜青葉JCTはE1東名高速に、横浜青葉ICは厚木街道(国道246号)にそれぞれ接続。また終点の港北JCTではE83第三京浜および神奈川7号横浜北線(K7北線)と接続する(横浜港北ICも新設される)。全長は約7.1kmで、トンネル区間は全体の6割近い約4.1kmを占める。

首都高神奈川7号横浜北西線|Syutoko Kanagawa 7 Yokohama Hokusei Line

K7北西線のルート。左上が横浜青葉IC・JCTで、右下が横浜港北IC・JCT。首都高速道路株式会社の報道発表資料より。

 事業者は横浜市と首都高速道路株式会社。総事業費は約2200億円でスタート。その後、架設工法の見直し、安全対策、浸水対策、サグ部の速度回復対策の追加などにより増額され、最終的に2586億円となった。

 また開通は当初の予定では2021年度だったが、工期を大幅に短縮して2020年3月とすることを、首都高速道路株式会社が9月26日に発表した。

首都高神奈川7号横浜北西線|Syutoko Kanagawa 7th Yokohama Hokusei Line

建設中の横浜青葉JCTの一角を青葉JCTの最高地点から撮影。2018年11月13日に実施された、首都高神奈川7号横浜北西線の工事現場の報道公開にて。

保土ヶ谷バイパスの慢性的な渋滞緩和が実現!?

 横浜の高速道路網は東京から放射状に延びていることから北東から南西にかけての縦断方向に発達しており、内陸部側から東名高速、第三京浜および横浜新道、首都高・神奈川1号横羽線、同B湾岸線と大動脈が並ぶ。

 しかし、内陸部と港湾部をつなぐ横断方向、中でも東名高速と第三京浜・横浜新道をつなぐ幹線道路が少なく、大きな課題となっていた。

横浜の高速道路と東名高速~第三京浜間の幹線路

横浜の高速道路網と、東名高速と第三京浜および横浜新道を結ぶ主要な道路。幹線道路といえるのは事実上、国道16号保土ヶ谷バイパスしかなく、そのため交通が集中して慢性的な混雑が起きている。その影響で、日吉元石川線や川崎町田線などの一般道も混雑してしまっている。首都高速道路株式会社報道発表資料より。

 東名高速と第三京浜間の交通は国道16号保土ヶ谷バイパスに集中しており、その交通量は平日の昼間12時間で約10万4000台、一般道の同時間の交通量において全国1位となっている。そのため、長年にわたって慢性的な渋滞が問題となっていた。しかしK7北西線が開通することで交通が転換され、保土ケ谷バイパスの交通量は1日約7000台減少すると見込まれている。

 また現在、保土ヶ谷バイパスを避けるため、東名と第三京浜を結ぶ一般道の日吉元石川線(県道102号)や川崎町田線(緑産業道路、中原街道など)なども渋滞が発生しやすい状況だ。K7北西線の開通により、混雑が緩和されるものと期待されている。

内陸部と港湾部のネットワークを強化

 またK7北西線が開通することで、内陸部と港湾部の移動にかかる時間が短縮され、物流に大きなメリットがある。現在の内陸部から港湾部(ここでは大黒ふ頭IC)へのルートとなると、東名高速・横浜町田ICから保土ヶ谷バイパス⇒K3号狩場線⇒B湾岸線と乗り継いで到着する。所要時間は実測で40~60分だ。

 一方、同じ横浜町田ICから出発してK7北西線⇒K7北線⇒K5大黒線と乗り継いで大黒ふ頭ICへ向かう場合は、25~30分弱で、10分以上の短縮が可能だ。

横浜の高速道路ネットワークの強化

これまでは、ほぼ保土ヶ谷バイパスにのみ頼っていた東名高速と第三京浜・横浜新道の接続。それがK7北西線ができることで高速道路のネットワークが強化される。首都高速道路株式会社報道発表資料より。

 また高速道路ネットワークの強化は、防災の面でも大きなメリットがある。基幹的広域防災拠点がB湾岸線沿いの川崎港東扇島地区にあることから、内陸部側の地域住民にとっては港湾部とのルートが複数確保されていることが重要なのだ。

K7北西線の開通で発生する料金の課題

 このようにメリットの多いK7北西線だが、開通することで逆に生じてしまう課題もあった。それは、通行料金の問題である。横浜青葉JCT・ICから首都高の東京外縁部や千葉・埼玉方面を目指した場合、東名高速をそのまま直進して東京ICから首都高(3号渋谷線)に乗り入れるのと、横浜青葉JCTから首都高(K7北西線)に乗り入れるのとでは、料金が異なってしまうのだ。

 ポイントとなるのは、首都高の現行の料金制度には上限があるということ。つまり、長い距離を首都高で走った方がお得になるということだ。そのため、東名高速ルートは距離は短くても東名高速と首都高の合計となるため、首都高だけで走れるK7北西線ルートと比較すると高くなってしまうのである。

 例えば、仮にETC装備の普通車で横浜青葉ICから6号三郷線と常磐道が接する三郷JCTまで行くとしよう。東名高速経由だと、東名高速分430円と首都高分1320円で合計1750円(距離53.6km)。それに対し、K7北西線経由だと首都高分1320円(距離64.3km)だけで済んでしまうのだ(以下、10月以降の新料金で計算)。

 このため、遠回りのK7北西線の方が交通量が増えてしまうことが予想され、「羽田空港周辺区間の渋滞への影響」、「川崎市南部の沿道環境への影響」、「横浜エリアの交通の増加」といったことが懸念されたのである。

東名高速とK7北西線の連続利用に限り上限額を引き上げる調整がなされることに

 この課題に対し、静岡方面から東名高速を走ってきて横浜青葉JCTからK7北西線に乗り入れるという連続利用に限り、首都高の上限料金が引き上げられることになった。両高速を連続利用した場合のサイズ別上限料金は以下の通り。カッコ内は連続利用ではなく、首都高だけを利用した場合の上限料金だ。

軽自動車等:1470円(1090円)
普通車:1800円(1320円)
中型車:1920円(1410円)
大型車:2870円(2080円)
特大車:3670円(2650円)

 そして下の図は、ETC装備普通車を例にした、東名高速ルートと上限料金を調整したK7北西線ルートの料金比較の一例である。

東名高速+首都高・3号渋谷線経由と首都高・神奈川7号横浜北西線経由の料金比較一例

上限料金の調整がなされた東名高速ルートとK7北西線ルートのETC装備普通車の各JCTの料金比較。青が東名高速+3号渋谷線経由で、ピンクがK7北西線経由。東名高速を直進する従来からのルートの方が安くなるように調整がなされた。首都高速道路株式会社報道発表資料より。

 ちなみに、横浜青葉ICで一度一般道に降りて、K7北西線に乗り直したとしても一定時間内だと連続利用と見なされる。「節約術」とはならないのでご注意いただきたい。


 首都高速道路株式会社が発表したK7北西線の経済効果は、4323億円と見積もられている。内訳は、走行時間短縮が3630億円、走行経費減少が433億円、交通事故減少が259億円だ。K7北西線は横浜の交通の利便性を一挙に向上させ、さらには首都圏の交通にも大きな影響を及ぼすポテンシャルのある高速道路なのである。

※(2019年10月4日 保土ヶ谷バイパスにおける交通量の減少数について修正しました)

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