球磨村で全国初のEVスクールバス実証実験! 日本の中山間地域を救えるか
環境省は熊本大学に対し、球磨村(くまむら)で小中学生向けの電動スクールバスの実証事業を委託。そのバス車両はEVモーターズ・ジャパン(EVM-J)のコミュニティバスが採用されている。全国でも初となる、中山間地域における電動スクールバスの実証事業とは、どのようなものなのだろうか?
EVバスの最大有効活用を探る!
環境省が掲げた「中山間地域における電動マイクロバスの評価検証委託事業」に対し、熊本大学が提案した「球磨村電動スクールバス実証事業」が採択され、実証試験が7月から開始されている。
今回のEVスクールバスでの再生可能エネルギー連系や非常電源を地域に運用し、その効果や方法を全国に普及させるという動きは、球磨村での実証実験が全国でも初の取り組みとなる。
事業内容は以下の通りだ。
1.球磨村で小中学生が通学に使うスクールバスに、EVコミュニティバスを使用する。 |
受託事業者は熊本大学、熊本県は実証支援、球磨村はEVスクールバスの運行を実施し、EVM-JはEVコミュニティバスを提供。事業期間は令和5年度までとなる。
どうして球磨村で実証事業?
中山間地域(ちゅうさんかんちいき)とは、日本における地域区分のひとつ。一般的に、平地の端から山地に至るまでの平坦な耕地が少ない地域を指したもので、日本の総土地面積の約7割を占めている。実証事業の舞台となる熊本県の球磨村(くまむら)は、2020年7月に起きた豪雨災害による球磨川流域の氾濫・土砂崩れで、多くの被害が出た地域として記憶に新しい。
現在、球磨村は「地域コミュニティと脱炭素の村づくり」を掲げ、復旧活動を続けているが、未だに仮設住宅から遠距離通学をしている学生もおり、スクールバスは必要不可欠な存在だ。また、2022年の7月にも大雨による集落の孤立や交通制限が発生したことから、球磨村の復旧活動にEVバスを実践的に運用することは即効性も期待でき、この事業の有用性を証明することにも繋がっている。
再生可能エネルギー連系が肝!
この実証事業で肝心なことは、再生可能エネルギー(今回だと電力)を、バスや充電器を中心に地域で循環させ、地域コミュニティとの接点を増やすことにある。
■電力の循環は以下の通りだ。
1.太陽光発電が多い日中に充電。 |
EVバスの非常電源としての実用性は?
EVM-Jの「F8 series-4 Mini Bus」に積まれているバッテリー容量は114kWh。1日あたりに必要な電力で計算してみると、一人暮らしの場合はおよそ18日分の電力を賄える計算となる。
EVスクールバスについて
今回の実証事業に用いられているEVバスの詳細がこちら。
■EVモーターズ・ジャパン 小型コミュニティEVバス 【F8 series-4 Mini Bus】
EVM-JのEVバスには「アクティブ・インバータ」という出力制御装置が搭載されており、今回の実証実験のような、充電→走行→施設へ給電、といった複雑な電力の循環において、電力消費の抑制や、バッテリーの劣化防止に大きく貢献している。
球磨村のEVスクールバスを応援しよう!
この「中山間地域における電動マイクロバスの評価検証委託事業」で有用性が証明できれば、全国でのEVバス普及の懸け橋となり、エネルギーの地産地消や地域の活性化にも役立つことになる。
また、EVモーターズ・ジャパンは現在、国内初となる商用EV最終組立工場を建設中で、2023年の夏ごろに稼働を予定している。生産台数が大幅に増大すれば、国産EVバスの生産技術向上や地域雇用など地場産業の創出にも繋がるだろう。
大きな意味を持っている球磨村の復興を、みんなで応援したい。