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クルマ最終更新日:2020.09.03 公開日:2020.09.03

佐藤琢磨がインディ500で2度目の制覇。世界3大レースで勝った日本人は何人いる?

2020年8月23日に開催された2020インディカー・シリーズ第7戦インディアナポリス500マイルレース(以下インディ500)で、佐藤琢磨が優勝した。佐藤は2017年に続く2度目の制覇となる。ところで、世界3大レースと言われるインディ500、F1モナコGP、ル・マンで優勝した日本人は何人いるのだろうか?

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ベテランらしいレース運びで、自身2度目となるインディ500制覇

佐藤琢磨が2度目のインディ500優勝

表彰台で牛乳を浴びる佐藤琢磨。写真:ホンダ

 2020インディカー・シリーズの第7戦インディアナポリス500マイルレース(以下インディ500)が8月23日に開催され、佐藤琢磨がこのレース2度目の優勝を果たした。インディ500は、1周2.4マイル(約4km)のオーバルコースを200周するレースで、走行時間は3時間を超える。

 佐藤琢磨はインディ500の予選で、日本人ドライバー最上位となる3位を獲得。そして決勝レースでは序盤から上位につけていた。ところが124周目にピットアウトする際に、後続車と接触するというアクシデントに見舞われる。「ドスンと当たり、マシンへのダメージが心配だった」とレース後に述懐する佐藤は、幸いにも大事に至らずレースを続行。そして158周目に初めてトップに立つと、その後は給油などでピットインしてもその座を死守。最後の5周は他車がクラッシュしたため追い越し禁止の「イエローコーション」となり、佐藤はトップでゴールラインを通過した。

インディ500で上位を走る佐藤琢磨

常に上位グループでレースを進めていった佐藤琢磨(右下のゼッケン30)。写真:ホンダ

 このように今回の佐藤は、インディ500参戦11回目というベテランらしいレース運びだった。レース後のインタビューでは、終盤にトップに立つという戦略は事前から決めていたと語っている。その戦略を実現するために、決勝前半はタイヤや燃費などのマシン状態を確認・変更するための時間に充てるつもりだった。さらに、決勝前半をそうするために、予選では上位につけることが必要になるという段取りも事前から構想されていたという。

 ある程度の経験を持つドライバーならだれしも考える戦略だが、それを2.4マイルのコースを200周する間で実行するには、さまざまな壁が立ちはだかってくる。レースでは突発的なトラブルやライバルの動向によって、計画を修正する場面が幾度もある。それに対処できたのは佐藤琢磨がこれまで積み上げてきた経験とチームのバックアップがあったからだ。それらが噛み合ったからこそ、優勝を手繰り寄せられたのだ。

インディ500でピットインする佐藤琢磨

ピットインではチーム一丸となった作業で佐藤をバックアップした。写真:ホンダ

世界3大レースで優勝した日本人は何人?

 北米最高峰のフォーミュラレースであるインディカー・シリーズ。その第7戦インディアナポリス500マイルレースは通称インディ500と呼ばれる。1911年に初開催され、今年で104回目を迎える特別なレースでもあり、シリーズに組み込まれた他のレースとは別格の存在である。

 このようにモータースポーツ界では、他と別格と目されるレースが3つある。それらは「世界3大レース」と呼ばれており、インディ500はその一つだ。残り2つはル・マン24時間レース、F1モナコGPである。いずれも1910~20年代に初開催という長い歴史を持ち、さらにレースの難易度が他よりも高いことで知られている。ここでは、この世界3大レースで日本人ドライバーが記録した最高位を紹介しよう。

2017年にインディ500で優勝した佐藤琢磨2017年インディ500優勝後に行われた記念撮影での佐藤琢磨。写真:ホンダ

 インディ500では既述の通り、佐藤琢磨による「優勝」が最高成績だ。佐藤は2017年にも優勝しており、2020年は2度目となる。インディ500を複数回優勝しているドライバーは104回の歴史の中で20人だけ。ちなみにインディ500での最多勝は4勝であり、2勝を果たしている佐藤は、インディ500のレジェンドたちに一歩近づいたことになる。

 一方、ル・マン24時間レースでは、1995年の関谷正徳(マクラーレン)、2004年の荒聖治(アウディ)、20182019年の中嶋一貴(トヨタ)と3人の日本人が制覇しており、こちらも「優勝」が最高成績である。近年のル・マンは、1台のクルマを3人で24時間ドライブすることが多く、毎年3人の優勝者が誕生しているが、関谷、荒、中嶋らとチームを組んだ他2名のドライバーは日本人ではない。ちなみにル・マンの最多勝は9勝、この偉大な記録はトム・クリステンセン(デンマーク)が達成している。

2018、2019年にル・マンで優勝した中嶋一貴

ル・マン24時間レースを2連覇中の中嶋。写真は2019年のル・マン。写真:トヨタ

F1は日本人未勝利。モナコGPでの最高位は?

 そして最後に残った世界3大レース・F1モナコGPは、1950年の初開催から今まで同じサーキット(公道を閉鎖したコース)で行われている唯一のF1レースだ。そのコースは近代的なサーキットと比べると、ガードレールに囲まれ、狭く危険がつきまとう。さらに公道のため路面が滑りやすく、ドライバー、マシン製造者にとっては現在も難易度が非常に高く、それゆえに他のF1レースとは別格の存在となっている。また王室関係者が運営に関わっており、F1期間中にはヨーロッパ社交界の華やかさを凝縮したような式典が開催され、文化面でも他を圧倒する存在となっている。

 そのF1モナコGPでは、残念ながら日本人ドライバーの優勝はまだない。日本人最高成績は、2011年の「5位」である。ドライバーは小林可夢偉(ザウバー・フェラーリ)。このレースは予選13位から追い上げ、ラストラップで4位につけていた。しかしトンネルを抜けた後のシケインで抜かれてしまい5位でフィニッシュとなった。そのモナコGPで最多勝を記録しているのは、アイルトン・セナ(ブラジル)。通算で6勝をあげている。

 ちなみにF1全戦を見ると、日本人ドライバーによる最高成績は「3位」。1990年の第15戦日本GPでの鈴木亜久里(ローラ・ランボルギーニ)、2004年の第9戦アメリカGPでの佐藤琢磨(BAR・ホンダ)、2012年の第15戦日本GPでの小林可夢偉(ザウバー・フェラーリ)の3名が記録している。

 ところで、佐藤が3位となったアメリカGPのサーキットは、インディ500が開催されているインディアナポリスである。インディ500のオーバルコースではないが、佐藤にとってインディアナポリスは、キャリアハイライトの多くを記録した地となっている。

 このように世界3大レースのうち、F1モナコGPだけが日本人ドライバーの優勝はなく、他2レースでの日本人優勝者は4人。佐藤と中嶋が複数回優勝しているので、優勝回数は6回となる。今年9月のル・マン24時間レースに参戦する中嶋と小林は優勝の有力候補であり、5人目もしくは7回目の日本人優勝が見られるかもしれない。

 世界3大レースはかくも厚い壁となってレーサーの前に立ちはだかっている。3大レースすべてを制覇したドライバーは世界中でただ一人、グラハム・ヒル(イギリス)だ。近年では、F1モナコGPとル・マンを制したフェルナンド・アロンソ(スペイン)が二人目の全制覇に挑戦中であると言える。しかし、そのアロンソをもってしても、インディ500の最高位は2020年の21位だった。そして、彼は2021年からF1へ復帰するため、来年のインディ500参戦は見送る予定らしい。

 ヒルに続く世界3大レース全制覇の偉業は、しばらくは難しいかもしれない。

F1モナコGP、ル・マンを優勝しているアロンソ

アロンソは2019年に中嶋とともにル・マン24時間レースを制した。写真:トヨタ

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