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公開日:2025.10.17

2リッター化した限定ロードスターは買いか? 「マツダ スピリット レーシング ロードスター」の登場でNDオーナーの物欲が揺れ動く!

マツダ スピリット レーシング ロードスター|Mazda Spirit Racing Roadster

NDロードスター乗り待望の2リッター・ソフトトップモデルがついに日本にやってきた! すでに1.5リッター版を愛車にする自動車ジャーナリスト山崎 明氏が「乗り換えたい!」と思わず唸る「マツダ スピリット レーシング ロードスター」はいったいどんなクルマなのか?

マツダ スピリット レーシング ロードスター|Mazda Spirit Racing Roadster

文と写真=山崎 明

写真=マツダ

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なぜ日本には1.5Lのソフトトップしかなかったのか?

2025年10月3日、マツダスピリットレーシング(以下、MSpR)ロードスターが富士スピードウェイで発表された。このクルマは個人的にも待望のモデルだったので、富士スピードウェイまで赴いて実車も詳細に観察した。

なぜこのモデルを待望していたかというと、ソフトトップに2Lのエンジンが組み合わせられたモデルだったからである。以前からマツダの人と会うたびに、ソフトトップの2Lエンジン仕様が欲しいと繰り返し話していたのだが、それが実現したというわけだ。

しかしソフトトップには1.5L仕様しかないのは日本だけの事情。アメリカではND発売当初からすべて2L仕様で、ヨーロッパでは1.5Lと2Lから選ぶことができていた。だから発売しようと思えばいつでもできるのに、マツダは頑なに発売しなかったのである。

ちなみに日本ではリトラクタブルハードトップのRFには2Lエンジンが搭載されており、1.5Lは選べない。ヨーロッパではRFも1.5Lと2Lが両方ラインアップされている。

ソフトトップに1.5Lしか用意しない理由として、マツダはこのND型ロードスターには1.5Lエンジンがベストだからと説明していた。私は2017年に2Lエンジン搭載のRFを購入し、3年後の車検の時にソフトトップに買い換えている。どちらのエンジンもよくわかっているので、マツダの言うことに納得はしている。

1.5Lの方がシャープに吹け上がり、エンジンの重量も軽いためフットワークも軽快だ。つまりライトウェイトスポーツとしてよりピュアなのは1.5Lであることは間違いない。だから、ワインディングロードを高回転までエンジンを回しながらスポーティに走っているときは1.5Lで全く不満はない。

MSpRロードスター12Rに搭載された「SKYACTIV-G 2.0(200PS)」エンジン

MSpRロードスター12Rに搭載された「SKYACTIV-G 2.0(200PS)」エンジン

ではなぜ2Lエンジンが欲しいのか。RFからソフトトップに買い換えたのは、やはりオープンにしたときの開放感が違うからだが、エンジンの好みは個人的には断然2Lだった。1.5Lは高回転まで回せばパワーに不満はないが、低回転域でのトルクが薄いのである。

だから街中や高速道路を普通に走っている時にパワー不足、というかゆとりがない感じがしてしまうのだ。2Lエンジンは高回転域でのシャープさは劣るが、低中速域のトルクに余裕があるため日常走行が快適、つまり「大人のゆとり」というか、上質な感じがするのである。だから爽快なソフトトップとゆとりのある2Lエンジンの組み合わせが欲しかった、というわけだ。

実車展示されたMSpRロードスターを見て感じたことは?

写真左からMSpRロードスター、MSpRロードスター12R

写真左からMSpRロードスター、MSpRロードスター12R

そういう視点で発表されたMSpRロードスターを見るとどうか。

200台限定の12Rは手組みエンジン搭載の超スペシャルモデルでわかりやすい魅力があるが、レカロのバケットシートにシートヒーターが付いていない、サイドエアバッグがないなど公道でしか走らない私のニーズにあわない。

私の本命は生産枠が2200台の通常モデルの方だ。こちらは走りに関する部分はMSpR専用セッティングの車高調整式ビルシュタインと、エンジンのアクセル応答性のチューニング以外は、ほとんどRFのRSグレードにオプションのブレンボ製ブレーキを装着したものと同じといって良い。

シートもRSグレードと同じものである。アルカンタラ内装も通常オプションで選べるものと基本的に同じだ(今の私のロードスターに装着している)。ホイールはRAYSとBBS(RFのブレンボとセットオプション)の鍛造、どちらが良いか微妙なところだ。

特別感を演出しているものは前後左右に装着されるエアロパーツとアルカンタラ巻きのステアリングとシフトノブ、インテリアの赤の差し色といったところか。赤の差し色はND初期型に戻ってしまったようにも見える(後期型でグレーになってぐっと質感がアップしたのに……)。つまりノーマルのシックさを廃して、ちょっと派手なレーシーな装いとするのが狙いのようだ。

MSpR特別仕様という甘い誘惑

MSpRロードスターのインテリアは随所に赤の差し色が入り、特別感を演出。

MSpRロードスターのインテリアは随所に赤の差し色が入り、特別感を演出。

私はより速く走りたいから2Lエンジンが欲しいわけではないし、レーシーな装いは逆に歓迎ではないので、ちょっと戸惑ってしまったのである。12Rは思いっきりサーキット指向に振るのは良いとしても、標準車はもっとシックな大人っぽい装いで出して欲しかった。

エアロパーツは付属品扱いで、工場で装着されるわけではなく、納車前整備の段階で装着するようなので、装着しないでの納車も可能なのかもしれないが。赤いシートベルトを黒に交換するのは費用的にもそれほどかからないであろう。

値段も微妙だ。MSpRロードスターは526万5700円である。ロードスターRFのRSグレードにブレンボブレーキとBBSホイールを加え、内装をフルアルカンタラ仕様としてフロアマット(MSpRは標準装備)を加えると総額480万3480円で、約46万円の違いとなる。エアロパーツをはじめとした、「特別付属品」を除いた価格は490万500円で、MSpRをその状態で買うことができるのなら10万円弱の差となり、専用の車高調ビルシュタインの分を考慮すると、お買い得感が出る。

待ちに待ったソフトトップ2Lモデルとはいえ、私は現在真剣に悩み中だ。MSpRを冠している以上、レーシーな方向に行くのは当然なことで、それと私の指向が合わない、という問題を自分自身の中で消化できるかどうかだ。再びRFに買い換えるという選択肢もあり、来月60代後半になってしまう私にとってはそちらの方が順当な選択かもしれないが、MSpRの特別感も捨てがたいものがあるのだ……。

マツダ スピリット レーシング ロードスター|Mazda Spirit Racing Roadster

マツダ スピリット レーシング ロードスター|Mazda Spirit Racing Roadster

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