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最終更新日:2025.08.18 公開日:2025.08.18

なぜポルシェのハンドリングはドライバーを虜にするのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」♯5

ポルシェ911カレラ(現行992.2型)|Porsche 911 Carrera(type 992.2)

いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の新連載コラム、5回目は「ハンドリング」にフォーカス!

ポルシェ911カレラ(現行992.2型)|Porsche 911 Carrera(type 992.2)

文=河村康彦

写真=ポルシェ

編集=細田 靖

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優れたハンドリングの持ち主とは?

ハンドリングの評価基準は人によって様々であるはず。そうしたなかで優れたハンドリングとはどのようなものか? それはまず、ステアリング操作を行った際の初期の挙動が大きく影響を及ぼすことになりそうだ。

わずかな操作とともに間髪を入れずさしたるロール(左右に傾く現象)もせずに瞬時に向きを変え始める……こうした挙動が“スポーティ”と評されることは少なくない。一方でそうした敏感さを好まない人もいるはず。派手な動きよりも、深い轍や強い横風に遭遇した際にも淡々と直進を続けてくれるような、適度な緩慢さの方がむしろ好ましいという人だって存在するはずだ。

コーナリング中にアクセル操作を行った場合も、それまでと変わらないライン上を進み続けてくれる安定した挙動が好みという人もいれば、アクセルを踏み加えて行くと旋回半径が小さくなっていく方向の動きを望む人も少なくなさそう。コーナー脱出に伴ってステアリングを戻す操作と速度を高めて行く操作の連鎖がより積極的でリズミカルなドライビングスタイルにマッチするため、とくに後者は“スポーツ派”と呼ばれるドライバーに高く支持されそうな動きでもある。

それでは自分はどうなのか、と問われれば「意のままに過不足を感じさせずに向きを変え、長距離・長時間を走り続けてもさしたる疲労感をもたらさないフットワーク」にこそ、優れたハンドリングの持ち主という称号を与えたいと思う。

なるほど先に紹介したように、ステアリングを握る手首のわずかな動きに対して機敏な反応を示すモデルの走りには、とくに走り始め時点では「これはなかなか走りがシャープだな!」と感心させられることは少なくない。しかし、「機敏な走り」と言えば聞こえは良いもののそうした挙動は往々にして“極端な反応”と同義語でもあって、最初は新鮮で好意的に感じられても長く走り続けているうちに思いのほか神経を使わされることに気が付き、それが段々と疲れへと繋がって嫌になってきてしまう……といった例も、とくにスポーティな走りを謳うモデルでは少なくなかったりするのが現実だ。

とは言え、狙った走行ラインをトレースし続けて行くのが何となく難しい……といった、操作に対して曖昧で正確性に欠ける挙動などはもちろん論外。こちらは、前述した轍や横風などの外乱に影響されにくいように仕立てられたモデルにありがちなテイストで、実はこれもまた長時間のリラックスした走りを実現させるためには相応しいとは言えないハンドリングの一例だ。

様々なシーンを長時間走り続けてもストレスがたまらない

そんなわけでこれまでの経験則から端的に表現すれば、「様々なシーンを長時間走り続けても、ストレスのたまらない走り」という感覚が実現されているものこそが、優れたハンドリングの持ち主と言いたくなる。そして、振り返れば数多くラインナップされるポルシェブランドのどのモデルもが、まさにそれに合致していることに気が付くのである。

実はポルシェ車には「サーキットこそがホームグラウンド」と呼べそうな、とりわけ高い運動性能を売り物としたモデルでも、過度に敏捷なハンドリングの持ち主は存在しない。ブランド全体で高いスポーツ性をアピールしてはいるものの、このブランドの作品は過敏な動きを売り物としているわけではないのである。

フロントエンジンにリヤエンジン、ミッドシップに4WD……と何台かのポルシェ車を乗り継いできた自身にとっても、いずれも最後にそれを選んだ決定打は? と問われるとしたら「いくら走っても疲れないという共通項があったから」と答えることができるように思う。

ただし、それはもちろん一朝一夕に仕立てられることなどなく、ボディ/シャシーのディメンションやエンジン/トランスミッションの搭載位置、駆動方式等々と、様々なパラメーターを組み立てて行った末に成し遂げられたもの。だからこそ、どのモデルに乗っても「やっぱりポルシェ車だ」と納得のできる一本筋の通ったハンドリングが実現されているに違いない、そう思えるのである。

動画=ポルシェ公式YouTubeチャンネルより

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