いかついクルマは好きですか? 進化型「GRカローラ」がクルマ好きを虜にする理由【瀬イオナの試乗レビュー】
トヨタのやんちゃ坊主、GRの名を冠した「カローラ」がデビューから3年を経て大幅アップデート。“進化型”として登場した最新モデルを、モータージャーナリストの瀬イオナが試乗した。
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カローラ、だけどGR

乗って書ける自動車ジャーナリストを目指して日々奮闘する私、瀬イオナが、改良されたトヨタ「GRカローラ」を体験! MTモデルはもちろん、新たに設定され話題となったATモデルにも両方試乗してみた。今回のドライブの舞台は、都内の一般道や首都高速。本格派スポーツカーに仕上がっているが、あくまで“カローラ”。果たして日常に溶け込むのだろうか?
カローラと聞くと、ファミリーカーのイメージが強い。そう感じる人はきっと多いだろう。2026年には登場から60年を迎え、トヨタブランドの中でもクラウンに次ぐロングセラー。まさに、歴史ある大衆車だ。そんな“ファミリー”なイメージの強い車種が、スポーツカー路線であるGRブランドから登場したというのは、クルマ好きな私にとって衝撃のニュースだった。
2022年に登場した初代ではMTモデルのみの設定だったが、2025年の改良でついにATモデルが追加された。ただのATではない。実際のレースの現場で鍛え上げられたという、新開発の8速AT「GR-DAT」を搭載している。車両状態を的確にモニタリングし、サーキットを最速で駆け抜けるためのギヤを正確に選び出してくれるというのだから、誰もがこのクルマの性能を引き出して楽しめる。
思わず声が漏れる
いかつい姿との対面は、少しだけ緊張感を伴った。より速く、鋭く、そして自由に、本能のままの走りを追求したというGRカローラ。フロントフェイスは、まるで吊り上がった目のようなライトが印象的で、どどんと張り出したワイドフェンダーと、低音サウンドを奏でる3本出しマフラーがその存在感をさらに強めている。どこから見ても、“いかつい”の一言だ。
運転席に乗り込むと、内装のレーシーさに思わず声が漏れた。メーカーパッケージオプション「SPORT Package」の専用装備が際立ち、とりわけ印象的だったのが3点式のレッドシートベルト。シックな室内に鮮やかな差し色が映えて、思わずテンションが上がる。インパネやステアリング、シフトノブ周辺、シートに至るまで、スエード調の仕上げが施され、高級スポーツカーさながらの質感にうっとりしてしまった。



まずはATモデルを体験。モータースポーツの現場で培われた技術を感じさせるそのフィーリングは、常に適切な回転数をキープしてくれ、低出力域でも加速にストレスがない。アクセルをオフにしたときに響くターボのノイズもまた、レーサー気分を高めてくれる。一般道の速度域でも“スポーツカーらしさ”を味わえるのは嬉しいポイントだ。
なお、「GR-DAT」はマニュアルモード選択時、スポーツモードではレッドゾーン付近でのダイレクト感が向上するという。今回は市街地での試乗だったため試せなかったが、いつかサーキットで体験してみたい。
GRの血を通わせたトヨタの遊び心と挑戦

続いて、MTモデルにも乗り込む。ATモデルと同じく「SPORT Package」仕様で、内装の印象に大きな違いはない。シフトノブはブラックを基調に、レッドのラインがデザインのアクセントとして効いている。
乗る前は、その見た目や装備から“クセのあるクルマ”を想像していたが、そこはやっぱりカローラ。クラッチのつなぎや変速の際もギクシャクすることはなく、誰にでも扱いやすい素直な操作感だった。
ステアリングはやや重めで遊びも少ない。ペダルの重さも適度で、個人的にはちょうど良いと感じたが、人によっては軽めに思えるかもしれない。「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」の搭載により、変速時にはエンジン回転数を自動で合わせてくれるため、MT初心者でもスムーズに操作できるのがありがたい。
今回、GRカローラのAT、MT両モデルを都内で試乗してみたが、どちらも都会の喧騒を、心地よいエンジン音で包み込んでくれるようなクルマだった。普段は街にしっかりと溶け込みながらも、本気を出せばサーキットで牙をむく。その姿はまさに、能ある鷹は爪を隠すそのもの。歴史あるカローラという名に、GRの血を通わせたトヨタの遊び心と挑戦に、私は心底しびれた。
考えてみれば、今でも多くのカーマニアに絶大な人気を誇る1980年代の名車であるハチロクも、デビュー当時はファミリーカーのカローラから生まれたFRスポーツとして一世を風靡したと聞く。GRカローラも将来の世代にまで、存在感を示すに違いない。

SPECIFICATIONS
トヨタ GRカローラ RZ|Toyota GR Corolla RZ
ボディサイズ:全長4410×全幅1850×全高1480mm
ホイールベース:2640mm
車両重量:1480kg(※1500kg)
駆動方式:4WD
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1618cc
最高出力:224kW(304PS)/6500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgfm)/3250-4600rpm
トランスミッション:6段MT(※8段AT)
サスペンション:(前)ストラット(後)ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:(前後)ベンチレーテッドディスク
燃費(WLTCモード):12.4km/L(※10.4km/L)
価格:568万円(※598万円)
※はAT車
