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公開日:2025.07.10

なぜポルシェ・スポーツカーは望外に乗り心地がいいのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」♯4

ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(現行992.2型)|Porsche 911 Carrera GTS Cabriolet(type 992.2)

いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の連載コラム、4回目は「乗り心地」にフォーカス!

ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(現行992.2型)|Porsche 911 Carrera GTS Cabriolet(type 992.2)

文=河村康彦

写真=ポルシェ

編集=細田 靖

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“スポーツカーらしいフットワーク”と“乗り心地の良さ”は背反関係にあった

現在では多くのモデルをラインナップするポルシェ。が、この連載コラム中で示す“ポルシェ”車とは、主に2ドアのモデルたちを対象としていることはお気づきの通り。現行ラインナップの場合、具体的には911シリーズとボクスター/ケイマン・シリーズがそれに該当し、これらこそが「骨格構造からこのモデルたちのためだけに構築された“純正ポルシェ”車である」とそう言いたくなるのだ。

誰もがピュアなスポーツカーであると認めるに違いないこうしたモデルたちこそが、このブランドの精神的な支柱でもある。特に、世界を見渡しても稀有な60年超という長い歴史を誇る911シリーズは、その“継続は力なり”によって人々に「ポルシェはスポーツカーのメーカー」と納得させる象徴的な存在となっている。

ところで、そんな『スポーツカー』と耳にした場合に抱く第一印象は、人によって実に様々であるだろう。

地を這うような低全高のプロポーションがまず思い浮かぶと言う人もいれば、際立った加速力をイメージする人も多いはず。また、大きなエンジン/排気音こそがスポーツカーの象徴と認識をしている人もいれば、ボディのサイズに対して大きな径の大きなホイールと太いタイヤを組み合わせて履くこと……と、そんなちょっとマニアックなポイントに注目する人だっているだろう。

そうした一方で、スポーツカーと聞いて「まずは乗り心地が良いこと」と、そんな意見を持つ人には出会ったためしがない。それはそうだろう。昨今でこそ、認識がアップデートをされている人も少なくなくなってきてはいそうだが、ほんの少し前までの時代は、“スポーツカーらしいフットワーク”と“乗り心地の良さ”というのはむしろ背反する関係にあるというのが常識でもあったからだ。

端的に言ってしまえば、かつては「乗り心地がカタいこと」がスポーツカーを名乗るための必要条件であると認識されていた嫌いもあった。それゆえに、あるモデルではそのシリーズ中でとくにスポーティなキャラクターを謳う仕様に対しては「“演出”のためにハードなサスペンション・セッティングを行いました」などと、そんなコメントをエンジニア氏の口から聞いたことが、実は1度や2度では無いというのは本当のハナシだ。

舐めるように路面を捉える能力こそが重要

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0(現行982型)|Porsche 718 Cayman GTS 4.0(type 982)

ポルシェ718ケイマンGTS 4.0(現行982型)|Porsche 718 Cayman GTS 4.0(type 982)

スポーティな走りのためにはロール(左右に傾く現象)やピッチング(前後に揺れる現象)など、ボディの過度の動きが天敵というのは確か。それゆえに、スプリングやスタビライザーなどサスペンションパーツの剛性=変形しにくさをどんどんと高め、ダンパーの減衰力も高めることでそのわずかな変形も瞬時に抑えこんでしまう……と、そうした方向性のセッティングを施すことがスポーツカー的と思われていたのは事実ではある。

そして、現代でもこれに類するチューニングが施されたモデルは、ポルシェ車の中にも存在はする。ただし、それらに共通するのは走りの舞台を完全舗装が施されたサーキットへと限定した、もはや「合法的に公道も走れる準レーシングバージョン」と呼べそうなキャラクターを備えるごく一部の硬派なモデルに限っている。

自然の地形を生かした様々な路面が次々と現れるテストコースとしても著名なドイツ・ニュルブルクリンクを筆頭に、例えサーキットでも荒れたセクションのあるコースでは前述のようなセッティングはむしろ御法度。硬過ぎる脚は接地性を低下させ、トラクション能力もブレーキング能力もコーナリング時のホールド性も大きく低下してしまうことになる。

こうしたシーンでは、むしろ舐めるように路面を捉える能力こそが重要。そしてかようにセッティングされた脚はしなやかに動き、結果として優れた乗り心地を提供してくれるのである。

それゆえに、平滑度の高い完全舗装が施された路面でこそ、その実力を発揮できるごく一部のバージョンを除いた大半のモデルでは、初めて乗る人に「スポーツカーなのにこんなに乗り心地が良いの⁉︎」と驚嘆の声を挙げさせるに足る仕上がりのフットワークを備えるのがポルシェのモデルたち。

そしてこれまでの自身の経験から言えば、その乗り味にフラットなテイストを大きく上乗せしてくれるのが「PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)」と名付けられた電子制御による可変減衰力ダンパー。多くのモデルで標準装備とされることにその自信のほどがうかがえるハイテクアイテムだが、オプション扱いのモデルでも選択をイチオシとしたい逸品なのである。

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