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公開日:2025.05.23

ゴーンショック以上の衝撃に備えよ! 日産再建へのシナリオ、250万台規模縮小なら7工場閉鎖でも足りないか?【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第5回

日産は5月13日、2024年度の決算報告と同時に日産経営再建計画「RE:NISSAN」についても発表した。

日産自動車は2025年3月期決算発表会見で、約6700億円もの巨額赤字と合わせて、大胆に踏み込んだリストラ策を発表。人員は2万人、車両生産工場は17から10へ削減すると明かし、大きな話題を呼んでいる。しかし、それでも目標にはまったく届かない!? 自動車評論家の国沢光宏氏が日本のクルマ業界にモノ申す!

日産は5月13日、2024年度の決算報告と同時に日産経営再建計画「RE:NISSAN」についても発表した。

文=国沢光宏

画像=日産自動車

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日産再建に必要なシナリオとは?

日産の業績低迷を受け2024年12月末に発覚した「ホンダの統合」ながら、今年3月にご破談。以後「台湾の鴻海と提携するじゃないか?」とか「やはりホンダしかない」など、様々な日産の再建策が推測されてきた。もちろん日産の経営危機は間違いない。日産自身、いろんな計画を練ってるんだと思う。ということで2025年5月下旬時点での動きをレポートしてみたい。

まず基本は「自力再建を目指す」ことにしたように思う。

というのも1999年の「ゴーンショック」と同等以上のリストラを行おうとしているためだ。具体的に紹介しよう。現時点で日産全体の生産能力は500万台という大きな規模を持つ。一方、2024年度の生産台数を見ると339万台。しかも2023年度から10%も減っている。アメリカや中国などで大幅に減らした。

日産によれば生産台数の減少は現在も進行しており、直近の見通しでは250万台規模で利益が上がるようにしようとしているという。実際、後述する神奈川県の追浜工場や湘南工場は、稼働率は50%を大きく下回っている状況。

一般的に自動車生産工場で利益を上げようとすれば、80%以上の稼働率が必要。つまり生産規模を半分近くにしないと再建できないと言うことになる。

日産は5月13日、2024年度の決算報告と同時に日産経営再建計画「RE:NISSAN」についても発表した。

日産は5月13日、2024年度の決算報告と同時に日産経営再建計画「RE:NISSAN」についても発表した。

世界にある7工場を閉鎖予定。それでも足りないか?

エスピノーサ体制で早速「世界に17ある工場を10にする」と発表した。常識的に考えれば生産効率の低い工場から閉めることになる。

そんなことから稼働率が低く、それでいて固定資産税など高額で、しかも売却することで資金を得やすい神奈川県の2つの工場を閉鎖対象にしているとスクープされた。日産からの公式発表こそ無いけれど、神奈川県の反応など見るとビンゴなんだと思う。

日本の2工場の他、閉鎖されると目されているのは、インド。メキシコ×2。南アフリカ。アルゼンチン。ただ7つの工場を合わせても150万台規模にしかならない。さらに100万台の工場を閉鎖する必要がある。おそらく150万台の生産能力を持つ中国のどこかと、45万台規模のイギリス工場になるだろう。ちなみにゴーン氏が行った再建策は、国内工場のみ240万台から165万台にしただけだ。

前代未聞のコストカットであり、極悪非道と言われたゴーン氏のリバイバルプランですら75万台の生産規模縮小だった。エスピノーサさんは250万台! 日本の工場はもちろんのこと、地域の雇用が失われることに対し激しくナーバスになる海外工場を閉鎖しようとすれば、猛烈な反発を受ける。トヨタもカリフォルニア工場を閉められず、テスラにタダ同然で引き取ってもらったほど。

関心が集まる追浜工場内の様子

関心が集まる追浜工場内の様子

コストカットなら高給取りの役員を切ろう

いずれにしろ工場閉鎖は時間がかかる。一方、日産に残された時間といえば短い。現状だと毎日赤字額は増えており、待ったなしの状況。本来なら鴻海やBYD、東風汽車、トヨタなど売れ行きを伸ばしている違う自動車メーカーに従業員まで含めた居抜きで売るのがベストながら、簡単じゃないと思う。それでも工場のリストラは日産再建の一丁目一番なので、すすめるしかない。

工場のリストラと同時進行形で、現在2万4千人いる高給取りの多い本社機能のリストラを行わなければならないだろう。例えば役員クラスの4人に1人は破格の給料を貰っていると言われる外国人。様々な部門の日産社員に聞くと「ゴーン時代の悪い意味での植民地政策です。しかも高給取りの役員にレポートを上げるのですが何をしているか解らないんです」と口を揃える。

日産 2024年度決算報告および同社経営再建計画「RE:NISSAN」資料

日産 2024年度決算報告および同社経営再建計画「RE:NISSAN」資料

管理しているようで何の経営判断もしない。だからこそ今の窮状になったということかもしれません。参考までに書いておくと、コストカッターと恐れられたゴーン氏のリバイバルプランで行った人員削減は、全社員で14万8千人だった時の2万1千人。エスピノーサ社長は13万4千人の社員の中の2万人の削減と言っている。すでに同等の規模感だと思っていい。

実際はゴーン氏が行った生産規模縮小は75万台。そして痛みを伴う改革で失敗したら経営陣全て引退すると言い切った。エスピノーサ社長によれば250万台の規模縮小を行うと言っているので、6万人規模の人員削減を行わなければならなくなるだろう。しかも覚悟を示しておらず。

まだまだ日産の混乱は続くと思う。夏前に次なる大きな動きが出てくると予想しておく。

(c)yu_photo - stock.adobe.com

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