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最終更新日:2025.03.06 公開日:2025.03.06

やっぱりゴルフはすばらしい! マイナーチェンジで「第8.5世代」に進化したフォルクスワーゲンの定番コンパクトを試す【試乗レビュー】

フォルクスワーゲンの新型ゴルフがついに日本で走り出した。マイナーチェンジし第8.5世代になった改良モデルは何が変わった? ハッチバックとワゴン(ヴァリアント)の2台を試乗し、今尾直樹がその進化を確かめた。

文=今尾直樹

写真=フォルクスワーゲン

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ゴルフeTSI R-Lineの車両価格は455万3000円。円安以前は300万円だったことを思うと、為替の影響は大きい。それでもゴルフには、価格を超えた価値がある。イワシの頭も信心から。いや、ほんとうに。

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新型ゴルフのアップデート、どこが変わった?

マイナーチェンジしたフォルクスワーゲン(VW)ゴルフのプレス向け試乗会が2月中旬、東京・豊洲で開かれた。2019年に本国でデビューしたゴルフ8のアップデートで、電動化とデジタル化が推進されている。外観ではイリュミネーション付きのエンブレムが初めて採用され、暗所でVWマークがあやしく光る。内装では、12.9インチの大型タッチディスプレイがダッシュボード上部に鎮座。

ジマンは「IDA(アイダ)」なる音声認識AIアシスタントで、「ハロー、フォルクスワーゲン」もしくは「ハロー、アイーダ」と呼びかけると起動する。たとえば助手席のひとが、エアコンの温度を上げてください、と頼むと、指向性マイクが判断して助手席側の温度を上げてくれる。伝わらない場合、「それについては先に学習する必要があります」と答えたりする。

手を伸ばせばスイッチがそこにある車内で、AIに頼む意味があるのか? 気晴らしになる。世界中で注目されているAIの実用化が、欧州を代表する小型車で始まっている。そのことの意味はものすごく大きい。

パワートレインでは、ベーシック・グレードに要注目で、これまでのガソリン1リッター3気筒に代わり、上級モデルと同じ1.5リッター4気筒をデチューンして搭載している。2種類のエンジンをつくるより、4気筒で統一したほうが生産効率が上がるそうで、3気筒は3気筒でいいエンジンだったけれど、一般に内燃機関は気筒数が多いほうが上質で高級とされているから朗報だ。

ゴルフを運転すると誰でも主人公になれる

VWのマークが光るイリュミネーテッド・ロゴ!

R-Lineのインテリア。マイナーチェンジの目玉がダッシュボードにそそり立つ12.9インチの大型タッチディスプレイ。

試乗したのは5ドア・ハッチバックのゴルフeTSIと、ワゴンのゴルフ・ヴァリアントTDIで、どちらもスポーティ仕様のR-Lineである。ノーマルよりトンがったルックスとスポーツ・サスペンション、18インチの大径ホイール、225/40R18サイズの扁平タイヤ、さらにプログレッシブ・ステアリングという、低速ではクイック、高速ではスローに、とギア比の変わるステアリング機構を備えている。

eTSIのマイルド・ハイブリッド・システムは、スターターのセルが廃止され、BSG(ベルト・スターター・ジェネレーター)がエンジンの始動を兼ねる。BSGは発進・加速時にはエンジンのアシストし、減速時には発電して電気エネルギーを電池に送る。

アシストのモーターとしては最高出力19psと最大トルク56Nmを発揮。フェイズ1と較べると、6psアップ、6Nmダウンしている。主役の1.5リッター直4ターボの制御も、これに伴う変更が施されていると想像される。ただし、最高出力150ps/5000-6000rpm、最大トルク250Nm/1500-3500rpmという数値も、気筒休止システムもこれまで通りである。

サポートに優れるスポーツ・シートはR-Line専用。

豊洲から首都高速湾岸線に乗って海ほたるまで往復してみたところ、新型ゴルフeTSI R-Lineは快適&スポーティなテイストが味わえた。まずもってボディの剛性感がこのクラスとしては世界最強レベルで高い。R-Lineのスポーツ・サスペンションは引き締められているうえ、40タイヤだから、大井あたりの凸凹路面ではボディが凸凹揺すられる。

それでも安心していられるのは、ボディ剛性が高いからで、たとえば「スター・ウォーズ」で、主人公の乗るミレニアム・ファルコン号が敵から逃げるために流星群に飛び込んだりするでしょう。ああいうとき、ボディが頑丈だと安心なわけで、いや、それよりなにより、ゴルフを運転していると、自分が主人公である。という感覚になる。そっちのほうが重要かもしれない。主人公は冒険者の私であり、私は主人公ゆえピンチになっても大丈夫なのである。

なぜ、ゴルフを運転していると、そういう心持ちになるのか? 自動車を運転しているときは自分が主役になるわけですけれど、どの世代のゴルフも、ステアリングもペダルも、このクラスとしては重めで、しっかりしており、バーチャルとは異なる肉体的な実在感がある。と筆者は思う。新型ゴルフ8.5もこの点、変わりない。

R-Lineはバンパーの開口部の空力処理が異なり、平たくいうとエラが張ってドヤ顔になっている。

同じ個体ではないけれど、この試乗会よりちょっと前にゴルフeTSI R-Lineで東京〜箱根を往復したときより走行距離がのびたためか、乗り心地にいわゆるアタリがついてきて、より快適になっている感じがした。ちょっと前に乗ったときの走行距離は600km台だった。

100km/h巡航中、アクセルオフすると、クラッチを自動的に切り、エンジンを休止させて燃費を稼ぐ、コースティングと呼ばれる省燃費モードが繰り返されたけれど、制限速度が80km/h以下の首都高速の流れだと、そうならないことがわかった。これが今回の新発見で、だからなに? という質問にお答えすると、つまり、よりレスポンシヴな状態を維持し、エンジンのハミングに慣れたひと=筆者には違和感なくドライブできた。

ディーゼルのTDIと較べると、ガソリンの1.5リッター直4ターボはディーゼル以上にスムーズなことが印象的で、トルクも十分。

ちょっとスポーティなゴルフが欲しいひとに、新型eTSI R-Lineはオススメと思う。

ヴァリアントはちょっとオトナのゴルフ

ゴルフ・ヴァリアントTDI R-Lineは車両価格485万6000円。ワゴンでディーゼルがゴルフeTSIプラス30万円で手に入るのだから、お買い得でしょう。ワゴンが欲しいひとならなおさら。

一方のゴルフ・ヴァリアントTDI R-Lineは、ちょっとオトナのゴルフである。ゴルフのハッチバックよりホイールベースが50mm、全長は345mm長くて、荷室がうんと広い。

ディーゼルはガソリン・エンジンより重いこともあって車重は1510kgと、eTSI R-Lineより150kgも重い。ホイールベースが長くて、車重が重い分、乗り心地はゴルフよりも落ち着きがある。重いといってもボディは1510kgに過ぎず、そのボディを2リッターのディーゼル・エンジンが360Nmという大トルクでもって、余裕綽々、優雅に加速させる。

ゴルフ・ヴァリアント TDI Rラインのラゲッジスペース

100km/h巡航は1400rpm程度ということもあって室内はガソリンと同レベルの静かさを誇る。広大な荷室に遊び道具だか仕事道具だか家財だかを積み込み、長距離をガッツリ走るひとにはオススメだ。

VWゴルフが小型車の基準であることは、こんにちもなお、変わっていない。そのレベルは新型になって、またもやちょっと上がっている。やっぱりゴルフはすばらしい。

ゴルフ eTSI Rライン|Golf eTSI R-Line

ゴルフ・ヴァリアント TDI Rライン|Golf Variant TDI R-Line

SPECIFICATIONS
フォルクスワーゲン ゴルフ eTSI Rライン|Volkswagen Golf eTSI R-Line

ボディサイズ:全長4295×全幅1790×全高1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1350kg
駆動方式:FWD
エンジン:1497cc直列4気筒DOHC4バルブ ターボ
エンジン最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1500-3500rpm
モーター最高出力:14kW(19ps)
モーター最大トルク:56Nm(5.7kgm)
トランスミッション:7段AT(DSG)
価格:455万3000円(税込)

フォルクスワーゲン ゴルフ・ヴァリアント TDI Rライン|Volkswagen Golf Variant TDI R-Line
ボディサイズ:全長4640×全幅1790×全高1485mm
ホイールベース:2670mm
車重:1510kg
駆動方式:FWD
エンジン:1968cc直列4気筒DOHC4バルブ ターボ
最高出力:110kW(150ps)/3000-4200rpm
最大トルク:360Nm(36.7kgm)/1600-2750rpm
トランスミッション:7段AT(DSG)
価格:485万6000円(税込)

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