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最終更新日:2024.09.17 公開日:2024.09.17

輸入車が売れてない!? 逆境のフォルクスワーゲン、復活の鍵は次期「ゴルフ」にあり!【クルマの経済学】

いま日本で売れている輸入車は何か。調査して明らかになったのは、カーマニアも納得のあのクルマ。しかし、輸入車の販売台数は右肩下がりで落ち込んでいるという。いったい、どんな事情があるのだろうか。

文=山崎明

これが輸入車の最新トレンド

日本で人気のMINIとVWゴルフ。(画像:BMW、Volkswagen)

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いま売れている輸入車って何だろう。というよりいま輸入車って売れているのだろうか。

日本自動車輸入組合(JAIA)発表のデータによると、輸入車(日本メーカーの逆輸入を除く外国ブランド車)の販売は1996年の29万9409台から減少していき、リーマンショックの影響を受けた2009年にはそのおよそ半分の15万9143台まで落ち込んだ。2018年に30万8389台にまで回復したが2020年以降コロナ禍による半導体不足と値上げもあって減少、2023年は24万6735台という水準である。今年に入ると一気に円安が進み輸入車の価格はさらに上昇したため、1~7月の数字を見ると前年比92%と減少している。

1996年~2003年の輸入車販売台数の推移。リーマンショックの影響が大きい。(画像:日本自動車輸入組合「車種別輸入車新規登録台数(暦年)」を元に作成)

このような状況の中で売れている車種は何か。2024年上半期のモデル別登録台数ランキングの1位はミニとなっている。ただしミニは複数の車型の合計となっているので、通常のミニだけでなくカントリーマン(クロスオーバー)、クラブマン(2024年生産中止)などの合計の数字なのである。

2024年上半期のモデル別売れたクルマランキング。(画像:日本自動車輸入組合「外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移(半期/2024年上半期)を元に作成)

車型別の販売台数は発表されていないので正確なことはわからないが、車型まで考慮した場合、ミニは1位とは言えないのではないか。となると2位のフォルクスワーゲン・ゴルフが実質的な1位といって良いだろう。

ゴルフが1位という結果については誰もが納得すると思うが、ゴルフもかつてほど売れているわけではない。2014年には3万台を越えるゴルフが日本で売れたのだが、2023年は1万台強と3分の1の水準となっており、2024年上半期も4650台と年間1万台を割り込むペースである。

為替による値上げの影響も大きいが、最大の理由はフォルクスワーゲン自体の車種数の拡大だと思われる。T-CrossやT-RocといったコンパクトSUVも売れており、かつてのゴルフの需要の多くがそれらSUVに流れていると考えられるからだ。

同様の傾向はメルセデス・ベンツやBMWでも見られ、ブランドを代表する特定車種に需要が集中するということはもはやないのだろう(2024年上半期、もっとも売れたメルセデス・ベンツはGLCである。BMWは3シリーズが依然1位だが、もっとも売れていた時期の4分の1の水準である)。

なぜフォルクスワーゲン・ゴルフは売れ続けるのか?

日本国内の輸入車では高い人気を維持してきたゴルフ。(画像:Volkswagen)

しかしSUV人気が高まる中、ゴルフが1位を守っているということも注目に値するだろう。日本車でもCセグメントのセダン・ハッチバックは売れておらず、ゴルフは健闘しているといえるだろう。

ゴルフは私個人としてもなじみ深い車だ。いままでにゴルフⅠ、ゴルフⅡ、ゴルフⅤと3台のゴルフを購入している。ゴルフⅠはCOXスピードがフルチューンしたC10という仕様で、元はノーマルの日本仕様ながらGTI用のCヘッドを装着したスペシャルである。ピストンもアルミ合金製に換装されており、恐ろしくレスポンスが良くパワフルなスポーツカー顔負けのエンジンだった。

ゴルフⅡはノーマルのGTI 16Vをヤナセ(当時のVWインポーター)から新車で買った。正規輸入車だが、日本仕様のカタログにはないブルーグレーのボディカラーを特注したのだ。シート生地も通常のGTI用のグレーに赤黒チェックではなく、グレーに青黄のチェックのものをボディカラーに合わせて注文した(どちらもドイツ仕様のカタログには記載のあるもの)。当時のヤナセはこのようなわがままな注文にも応じてくれたのだ。そのかわり半年待たなくてはいけなかったのだが。これはとても良い車で、長距離ドライブもまったく苦にならないパワーと快適性を兼ね備えていた。

ゴルフⅤもGTIで、DSG仕様だった。この車はそれ以前のGTIより圧倒的にパワフルかつ全体的に上級移行したようなモデルだった。つまり私が買ったゴルフはすべてスポーツモデルである。私がゴルフを選んだ理由は、実用車でありながらスポーツカーやGT的な運転の愉しさも兼ね備えているからなのである。

これは初代から現行に至るまでゴルフが一貫して持ち続けているキャラクターだと思う。GTIではないノーマルモデルでも、パワーが少ないだけで運転の愉しさを味わうことができるのだ。もちろん実用性も一級で前席も後席も十分以上に快適で乗り降りもしやすく、トランクも十分広くて使いやすい。運転しても見切りが良くサイズもコンパクトなので使いやすい。つまり運転好き・車好きにとって、1台で何でもこなせる素晴らしいモデルなのだ。長い間、日本だけでなくヨーロッパでも最も売れているモデルであり続けたのも頷ける。

次期ゴルフへの期待

現在ヨーロッパで最も売れているT-Roc。(画像:Volkswagen)

しかし日本での販売量が減っているのと同様、ヨーロッパでも、もはやゴルフは最量販モデルではない。フォルクスワーゲンの中でも、現在ヨーロッパで最も売れているのはT-Rocである。

フォルクスワーゲンはディーゼルゲート以降その開発力をBEVに集中させ、ID.シリーズなどBEVラインアップを充実させてきた。その影響で、内燃機関搭載車の進化のスピードは遅れてしまったことは否めない。

ID.シリーズは思うように売れず、フォルクスワーゲンは戦略の立て直しを迫られている。BEVの需要は急速には広まらないことが明らかになったいま、内燃機関搭載車の競争力を高める必要があるのは明白で、フォルクスワーゲンにとってゴルフの競争力アップは喫緊の課題だ。

次期ゴルフがどのようなモデルチェンジを遂げるのか、いまから楽しみではある。

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