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最終更新日:2024.08.23 公開日:2024.08.23

やっぱりエンジン車は気持ちいい! マセラティはなぜいま新型エンジンを開発したのか?【試乗レビュー】

クルマ好きにはやっぱりエンジンが必要だ! マセラティが完全自社で開発した新型エンジン「ネットゥーノ」はなぜ気持ちがいいのか。モータージャーナリストの小川フミオによる試乗リポートをお届けする。

文=小川フミオ

写真=マセラティジャパン

マセラティが新型エンジンを開発した理由とは

3台のマセラティ、左から「MC20 チェロ」「グラントゥーリズモ」 「グレカーレ」

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エンジン車はいつなくなるんだろう? ちょっと前までは、2030年が境、なんて言われていた。EUや米国で、2030年をめどにエンジン車の新車販売を禁止する、という流れが出てきたからだ。

東京都のホームページでは、2030年にZEV(ゼロエミッションビークル)の販売比率を50パーセントに、50年には「都内を走る自動車すべてZEV化」という文言が見つかる。

そんななかで興味深いのが、各自動車メーカーの昨今の取り組みだ。電気や水素で走るピュアEVと並行して、エンジン車の開発の手も緩めてはいない。

「少し前までは、“これからもエンジン開発に投資する”と話をした途端、投資筋から反発がありましたが、現状をみると、私の判断が正しかったと認識を改めてもらいました」。独フォルクスワーゲン乗用車部門のトマス・シェファーCEOは、2024年4月にオンラインでのインタビューで、そう語ってくれた。

3リッターV型6気筒のネットゥーノエンジン

今回のトピックスであるマセラティの動きも、これをトレンドというべきか分からないが、自動車界の流れに合致している。イタリア語で稲妻を意味する「フォルゴレ」というサブネームをつけたピュアEVを展開したり、バッテリーで走るレース、フォーミュラEで活躍したり(24年第5戦の東京で優勝)するいっぽう、エンジン車も手を抜いていない。

マセラティジャパンが、24年4月に、マセラティ自慢の新エンジン搭載車の試乗の機会を与えてくれた。完全自社開発の3リッターV型6気筒エンジンで、特徴はエンジン負荷(加速とか)に応じてピストン内で燃焼させる部分を変えるツインイグニッション方式。燃費とパワーを両立させたと同社が謳う設計だ。

「ネットゥーノ」というのがこのエンジンのニックネーム。イタリア語で海神(ネプチューン)を意味する。海神の像は、マセラティがクルマづくりを始めたボローニャの広場にあり、手にしている三叉の鉾(ほこ)は、マセラティのエンブレムのモチーフになっている。

エンジン車ならでは気持ちよさを追求

マセラティ グレカーレ トロフェオ|Maserati Grecale Trofeo

私が乗ったのは、SUV「グレカーレ・トロフェオ」、23年暮れから日本でのデリバリーが始まった新型「グラントゥーリズモ・トロフェオ」、そしてオープンスポーツカーの「MC20 チェロ」の3台。トロフェオは、ネットゥーノエンジン搭載モデルを意味している。

3つのモデルはまったく異なった車型で、かつ出力はクルマによって微妙に異なる。グレカーレ・トロフェオは390kW(530馬力)、グラントゥーリズモ・トロフェオは405kW(550馬力)。そしてMC20は463kW(630馬力)といった具合だ。

共通して感じたのは、楽しさだ。加速性と、高回転域まで回るエンジンによるパワー感、それに、高性能エンジンを受け止めるシャシーとサスペンション、ステアリングのマッチングのよさが際立つ。

広いエンジン回転域をカバーする容量可変型ターボチャージャーも備えていて、発進から力強く、加速はお見事! といいたくなるぐらいの速さだ。しかも8段オートマチック変速機にはマニュアルモードがあるので、シフトアップのタイミングは運転している自分でもコントロールが可能。エンジン回転を上げていくと、レッドゾーン手前まで加速が衰えないのも、気持ちよさに貢献している。

マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ|Maserati GranTurismo Trofeo

マセラティ グレカーレ トロフェオ|Maserati Grecale Trofeo

マセラティ MC20 チェロ |Maserati MC20 Cielo

グレカーレ、グラントゥーリズモ、MC20 チェロと、どのクルマもキャラクターが異なるが、エンジンパワーに振り回されることはなかった。MC20 チェロ(チェロはオープンモデル)は、まさにスポーツカー。いっぽう、グレカーレ・トロフェオは、速いことは速い。でも乗り心地が犠牲になっていないのがマセラティらしさ。

バランスのよさでいうと、グラントゥーリズモ・トロフェオが際立っていた。GT(スポーティでかつ快適さも追求したモデル)づくりに長年の経験をもつマセラティの面目躍如という印象だ。常に安定した動きで、かつ、その気になれば、かなり速い。しかも4人の大人が乗っていられるパッケージも秀逸である。

「マセラティはこれから電動化に向かうのは既定路線ですが、ネットゥーノエンジンを早々に諦めたりはしないつもりです。なにより大事なのは、クライアントが求めるものを提供していくこと。カーボンニュートラルとファントゥドライブを同時に追求していきます」

これはマセラティジャパンの木村隆之代表取締役の言葉。いまの自動車界は、このように事情は複雑、先行きはやや不透明。でもクルマ好きとしては、正直なところ、ネットゥーノを体験したりすると、エンジン車への期待が捨てきれない。

ネットゥーノエンジン搭載モデルは「トロフェオ」と名付けられている

SPECIFICATIONS
マセラティ グレカーレ トロフェオ|Maserati Grecale Trofeo
ボディサイズ:全長4860×全幅1980×全高1660mm
車両重量:2030kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6ツインターボ
最高出力:530PS(390kW)/6500rpm
最大トルク:620Nm(63.2kgfm)/3000-5500rpm
トランスミッション:8段AT
価格:1713万円

マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ|Maserati GranTurismo Trofeo
ボディサイズ:全長4965×全幅1955×全高1410mm
車両重量:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6ツインターボ
最高出力:550PS(404kW)/6500rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgfm)/2500-5500rpm
トランスミッション:8段AT
価格:3660万円(75thアニバーサリーモデル)

マセラティ MC20 チェロ |Maserati MC20 Cielo
ボディサイズ:全長4670×全幅1965×全高1215mm
車両重量:1750kg
駆動方式:MR
エンジン:3リッターV6ツインターボ
総排気量:1798cc
最高出力:630PS(463kW)/7500rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgfm)/3000-5750rpm
トランスミッション:8段AT
価格:4438万円(プリマセリエ ローンチエディションモデル)

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