楽しいのはMTだけじゃない! スズキの新型「スイフト」はCVTも軽快&スポーティ 【試乗レビュー】
スズキの人気コンパクトハッチ「スイフト」に一気乗り! 新型のCVTモデルとMTモデル、そして「スイフトスポーツ」のMTモデルにモータージャーナリストの原アキラが試乗。いまもっともベストなスイフトはどれだ!?
新型スイフトは何が変わった?
スズキのグローバルコンパクトモデル「スイフト」。4代目となる新型が登場して半年が経ち、国内では月販目標の2,500台をしっかりキープするとともに、静岡の工場では欧州など世界に向けて毎月2万台が生産されている(別にインドやアフリカでも生産している)。また初代(2004年)からの累計販売台数はすでに900万台に達しているというから、その人気ぶりがわかるというもの。その秘密を探るべく、現在販売中のラインナップであるCVTモデル、MTモデル、スイフトスポーツ(こちらは先代のまま継続販売中)の3台に乗ってみた。
新型スイフト(スポーツを除く)のボディサイズは全長3,860mm、全幅1,695mm、全高1,500mm(4WDは1,525mm)、ホイールベース2,450mm。プラットフォームを先代から引き継いでいるので、基本のサイズは変わっていない。海外仕様では3ナンバーサイズのボディ幅となるのだが、日本仕様はフェンダーの形状を狭めるなどしてしっかりと5ナンバーサイズをキープしたところも同じである。
エクステリアデザインは、ちょっと個性的だった先代のイメージを引き継いだもので、全体としては一目でスイフトと分かるもの。ただしディテールは結構変わっていて、ヘッドライトカバーがボディラインからポコリと飛び出したような形状だったり、クラムシェルを強調するボンネットのラインがそのままぐるりとボディを一周するデザインだったり、先代ではキックアップしたCピラーのブラック部分に埋め込まれていたリアドアオープナーが、新型ではドアパネル側に移されて普通のグリップハンドルになっていたりする。
理由としては、少しスポーティに振りすぎていた先代のデザイン(これはこれで好評だった)をちょっとだけ一般的なものにすることで、普通のエントリーユーザーにもとっつきやすいものにする、という意向があったとのこと。
これはインテリアも同様で、ブラックベースに丸型のメーターやダイヤルを配していた先代に対して、新型はインパネとドアトリムを繋ぐようなデザインや、3Dテクスチャーを施したブラック&アイボリーの2トーンのオーナメント、9インチの大型センターディスプレイなどによって、今時のクルマらしい明るい室内になっている。
ドライバー眼前の丸型2眼コックピットメーターだけはちょっと古臭いと言われそうだけれども、これ以上に見やすいものはない(と筆者は思っている)ので、問題なし。空調下のダッシュボードに取り付けられたCD/DVDの挿入口は久しぶりに見た気がする(スズキ車のオーナーさんは、使用者が結構いるらしい)。
いい仕事をする新開発の3気筒エンジン
最初に試乗したCVTモデル(最上級のFFハイブリッドMZグレード)のボディーカラーは、淡くわずかに緑がかったクリーム色のような「クールイエローメタリック」。先進テクノロジーを感じるクールさを表現したというこの色、結構スイフトに似合っている。
搭載するパワートレーンは、先代の4気筒から3気筒へと変更された新開発のZ12E型1.2Lエンジンで、最高出力60kW(82PS)/5,700rpm、最大トルク108Nm/4,500rpmを発生。これに2.3kW/60Nmのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステム(MHEV)だ。パワー的には数字が先代よりわずかに劣るし、車重が950kgと少し重くなったので、走り自体はおとなしくなるのかと思いきや、実際に走り出してみるとそんなことは全くなし。CVTの制御や空力性能が上がったことで、軽快感のあるスポーツ性をしっかりキープしているし、ポロポロという3気筒エンジンの音や振動がわずかに車内に伝わってくるけれども、絶対的レベルは小さい。
燃費性能も上々で、首都高や中央道、多摩地区の一般道などあちこちを走り回っての数字は常に20km/L以上をキープ(返却時の平均燃費は20.1km/Lだった)。先代にあったフルハイブリッドモデルが消滅したのは、こうしたMHEVの性能アップによるものだろう。
新型では運転支援機能が大きく進化していて、MZが搭載するACC(アダプティブクルーズコントロール)は全車速追従式となり、停止保持機能(ブレーキペダルから足を離してもブレーキ保持する)までつく。朝方都心へ向かう中央道の渋滞時に走った時には、大変重宝した。一方、空いた高速でのハイスピード走行ではエンジン回転が低く抑えられているので(100kmh走行時で2,000rpm)、ACCと併用してのロングドライブもスイフトの得意科目に入ると思う。216万7,000円(全方位モニター付きメモリーナビやドラレコ等のオプションを装備した試乗車は246万2,130円だった)という価格はとにかく魅力的だ。
それでもやっぱりMTで操りたい!
新型スイフトには、1グレード(FFハイブリッドMXグレード)だけだがMTモデルがしっかりと残された。多くの販売台数は望めないけれども、「オートマは勝手に動くのが怖い」とおっしゃる高齢ドライバーや一部の好事家向けとして製造されていて、スズキの優しさの表れとも言える。MHEVのパワーはCVTモデルと同じ。装備的にはステアリングがウレタンだったり、ホイールデザインが鉄チン風アルミ(アルミ風鉄チンの反対)だったり、電動ではないハンドブレーキだったりするけれども、価格は200万円を切る192万2,800円に設定してある。
走ってみると、CVTより20kg軽いフロント荷重や、低速でも粘り強いMHEVの調教によって、エンストを気にする事なく街中をスイスイと走り回れる。信号などで停止するとアイドリングストップ機構が作動してちょっとドキドキするけれども、クラッチを踏めばすぐにエンジンが始動する。5速のシフトレバーは操作が軽くギアを入れやすい。ただしクラッチのミートポイントがわずかに曖昧なので、ギンギンのスポーツ走行が楽しめる、という感じでもないことに気がつく。
そうした面を求めるならば、「コレもちょっと試してみてください」と広報さんから試乗を勧められた現行モデルの「スイスポ(スイフトスポーツ)」が継続販売中だ。103kW(140PS)/230Nmを発生する1.4L直4DOHC16バルブターボに6速MTを組み合わせた車重970kgのスイスポの走りはやっぱり刺激的。ちょっと回転を上げつつクラッチをポンッと繋げてやれば、「キュキュッ」と前輪を鳴らしつつ元気に飛び出していく。
新型にスイスポの設定がまだないのが気になるところだけれども、スポーツ走行の性能はいまだに一級品。古いADAS(先進運転支援システム)系が気にならなければ、216万4,800円(8インチナビやドラレコなどオプション装備した試乗車は252万6,480円)で手にはいるこちらの選択もアリなのである。
SPECIFICATIONS
スズキ スイフト ハイブリッドMZ|Suzuki Swift Hybrid MZ
ボディサイズ:全長3,860×全幅1,695×全高1,500mm
ホイールベース:2,450mm
車両重量:950kg
駆動方式:2WD(FF)
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒
総排気量:1,197cc
エンジン最高出力:60kw(82PS)/5,700rpm
エンジン最大トルク:108Nm(11kg・m)/4,500rpm
モーター最高出力:2.3kW(3.1PS)/1,100rpm
モーター最大トルク:60Nm(6.1kg・m)/100rpm
トランスミッション:CVT
価格:216万7,000円
スズキ スイフト ハイブリッドMX|Suzuki Swift Hybrid MX
ボディサイズ:全長3,860×全幅1,695×全高1,500mm
ホイールベース:2,450mm
車両重量:920kg
駆動方式:2WD(FF)
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒
総排気量:1,197cc
エンジン最高出力:60kw(82PS)/5,700rpm
エンジン最大トルク:108Nm(11kg・m)/4,500rpm
モーター最高出力:2.3kW(3.1PS)/1,100rpm
モーター最大トルク:60Nm(6.1kg・m)/100rpm
トランスミッション:5段MT
価格:192万2,800円
スズキ スイフトスポーツ|Suzuki Swift Sport
ボディサイズ:全長3,890×全幅1,735×全高1,500mm
ホイールベース:2,450mm
車両重量:970kg
駆動方式:2WD(FF)
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒直噴ターボ
総排気量:1,371cc
最高出力:103kw(140PS)/5,500rpm
最大トルク:230Nm(23.4kg・m)/2,500-3,500rpm
トランスミッション:6段MT
価格:221万7,600円