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最終更新日:2024.05.08 公開日:2024.05.07

フェラーリ・デイトナの再来か? 新型スーパースポーツ「12チリンドリ」はV12エンジン搭載で830馬力!

フェラーリは2024年5月3日、新型スーパースポーツ「12Cilindri(ドディチ・チリンドリ)」を発表した。V型12気筒自然吸気エンジンをフロントミドに搭載し、最高出力830馬力を発生する新しい跳ね馬の正体とは? 小川フミオが現地からリポートする。

文=小川フミオ

写真=Ferrari N.V.

830馬力! 6.5リッターV12エンジン搭載

1950-60年代の伝説的グランドツアラーをインスピレーションの源にしたという

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フェラーリが2024年5月3日、新車「12Cilindri(ドディチ・チリンドリ)」を米マイアミで発表した。車名はイタリアで“12気筒”。その名のとおり、高性能化した12気筒エンジンをフロントに搭載し、クーペとスパイダーが同時にデビューを飾った。

「この時期に12気筒!」

正式発表に先立って、イタリアのフェラーリ本社を会場に、各国のジャーナリストを集めて事前説明会が行われた。そのベールがはがされたとき、どよめきが起こった。ちらほら噂は出ていたが、ほんとに12気筒だった、というのが集まったリポーターたちの驚きだった。

「私たちのラインナップには、プラグインハイブリッドのSF90ストラダーレもあるし、6気筒の296シリーズもあります。パワートレインに関して、あらゆる可能性を追求しています。そこには当然、私たちの伝統ともいえる12気筒も含まれています」

エンジニアリングを統括するジャンマリア・フルゼンツィ氏は、クルマを前にしてそう説明してくれた。

「12気筒の2シータークーペというと、812スーパーファスト(2017−22年)がありました。12チリンドリはさらに性能を向上させたモデルです。6.5リッターエンジンには改良を加えていますし、ホイールベースは短くしたうえで、左右輪が別々に動く後輪操舵システムを組み込んでいます。サーキットのコーナーではより機敏に、いっぽう高速での直進性はより安定的に、とGTとしての性能を充実させました」

かつての「デイトナ」を彷彿とさせるフロントマスク

デルタ翼というリアウインドウをはじめ、ボディパネルと黒いガラス部分が立体的に組み合わされたデザインテーマが印象的なクーペ

半球形ともいえる台座の上に同色のシートが載ったコクーン型のコクピットデザインがユニーク

スタイリングも目を惹く。フロントエンジンの後輪駆動という、1950年代から続くフェラーリの伝統的なメカニカルレイアウトを継承しつつ、エンジンは出来るだけ低く、そして前輪より後ろに搭載するフロントミドシップを採用する。

どことなく、1968年の365GTB/4、通称「デイトナ」を思わせるノーズを持ついっぽう、クーペでは、これまで見たことのない形状のリアのグラスハッチを備えている。

「(コンコルドなどで知られる)デルタ翼のイメージです」とヘッド・オブ・デザインのフラビオ・マンツォーニ氏は語る。

この広いデルタ翼形状の特徴的なリアウインドウのデザインを損なわないように、フェラーリのエンジニアは、電動リアスポイラーを2分割にした。最大で10度まで立ち上がり、後輪の浮き上がりと、空気がクルマを引っ張って速度が鈍るのを防ぐスポイラーが備わる。

「フェラーリでは、“フォルムは機能に従う”のプリンシプル(原理・原則)を守っていますが、同時にエレガンスは非常に大事なので、デザイナーとエンジニアは常に緊密に連絡を取り合いながら、クルマを作っています」と、マンツォーニ氏。

12気筒としてはコンパクトでも、ボリュームあるエンジンをフロントミドシップにし、機敏なハンドリングのためにホイールベースは切り詰め、空力処理を各所に施した12チリンドリ。走りのよさが常に重要なフェラーリとあって、エンジニアは出来るだけ妥協のない設計を追求したようだ。

いっぽうデザイナーは、そこに“スキン”と称されるボディ外皮を用意する。12チリンドリでは「コッファンゴ」(上顎)とフェラーリが呼ぶ、フェンダーと一体型となったクラムシェル型のボンネットでフロントを包み込む。曲面が部分的に力強く盛り上がっていて、美と緊張感が上手に盛り込まれている。

12チリンドリはフェラーリ最後の12気筒か?

高出力化と軽量化がともに追求された新世代のV型12気筒

「我々がこのクルマに“12気筒”という名称を選んだ理由について、これがフェラーリの12気筒の最後のモデルという意味ですか? と質問を受けました。次がどうなるか、フェラーリでは一切回答していないのですが、この名を選んだ理由は、50年代から手がけてきた12気筒エンジンへの愛から、とお答えしておきましょう」

マーケティング担当の重役、エンリコ・ガリエラ氏は、そう言いました。

「2019年に発表したF8トリブートというモデルは、私たちが手がけてきた8気筒の素晴らしさを自ら称える意味で名付けました。今回の12チリンドリも、数々の規制をクリアしつつ高い性能を実現した12気筒エンジンの素晴らしさを伝えたいという思いが込められています。12気筒エンジンは昨今、どんどん開発が難しくなっていますが、私たちはそれを成し遂げているのです」

価格は、クーペがイタリアで39万5000円ユーロ(VAT税込み・1ユーロ=約168円で約6600万円)、スパイダーが43万5000ユーロ(同約7325万円)。クーペは2024年第4四半期から、スパイダーは25年第1四半期から欧州で販売が始まる予定だ。

フェラーリではフライングバットレス(ゴシック様式において聖堂の強化構造に寄与する橋架)と呼ぶ、頭部保護の2つのふくらみが特徴的なスパイダー

Specifications
フェラーリ 12チリンドリ クーペ|Ferrari 12Cilindri Coupe
全長×全幅×全高:4733×2176×1292mm
ホイールベース:2700mm
エンジン:V型12気筒(65度)フロントミドシップ
総排気量:6496cc
最高出力 :830PS(610kW)@9250rpm
最大トルク:678Nm@7250rpm
駆動方式:後輪駆動
トランスミッション:8段ツインクラッチ
0-100km/h加速:2.9秒
価格:39万5000ユーロ(イタリア)

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