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最終更新日:2024.08.06 公開日:2024.05.09

Z世代はクルマも恋愛も環境にも興味なし!? ──教えて、博報堂生活総研さん! 30年間の観測データで分かった、若者のクルマと恋愛事情。<後編>

この30年間で若者たちの暮らしや価値観はどう変化したのか? 博報堂生活総合研究所による観測データ「生活定点」を元に、モータージャーナリストの渡辺敏史が若者のクルマと恋愛事情について探る。今回はその後編をお届けしよう。

文=渡辺敏史

写真=守谷賢一郎

取材協力=博報堂生活総研

前編を読む

恋愛したいアラフィフと恋愛したくないZ世代

博報堂生活総研の近藤裕香さん(WEB会議で参加)と植村桃子さん(左)。そしてクルマの話題に明るい渡辺敏史さん(右)が、若者のクルマに対する意識を掘り下げる。

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──衝撃……ですか?

近藤 「いくつになっても恋愛したいですか」という質問項目がありまして、1998年くらいまではそうありたいという人の数が、年代別でみたとき20代が最も多かったんです。それが2022年のデータになると、20代は最下位。どの年代よりも低いんです。50代も年々、低下しているものの、10%程度の変化で、20代に比べるとかなり緩やかです。

いくつになっても恋愛をしていたいか。若者の恋愛の関心度は30~60代を下回る。(画像:博報堂生活総研 生活定点調査)

──私も50代ですが、諦めが悪いということですかね。思い当たるオッさんは周囲に何名かいますが。

近藤 いやぁ、やっぱり20代だった時の社会環境とか、そこでの経験の違いが大きいのではないかなと。今の50代って、恋愛に対しても社交に対しても積極的ですし、新しい情報の収集についても意欲的ですよね。

──逆に現代の20代が恋愛に意欲的ではないというのは、社会的にも憂慮すべき話だと、個人的には思うところです。

近藤 他にも、「友人は多ければ多いほどよいと思う」という項目も大幅に減少していて、無駄な付き合いは極力減らしていきたいという意識を、調査の結果から読み取れます。現在50代の方が20代だった頃、友達が何人いるかがステータスの一部みたいなところがあったと思うんですが。

──ありましたよね。パーティやイベントでどれだけ人を集められるかみたいな。数量勝負的なマインドですよね。

近藤 そういう意識は現代の20代では薄いですね。これもまたコロナ禍がひとつの契機なのかもしれませんが、本当に仲の良い友人を大切にしたい。そうでない人間関係は断捨離したいと。SNS疲れというのも背景にはあるのではないかと思うんですが。

──なるほど。ちなみに現代の20代がクルマに対する熱量が低いという理由のひとつとして、環境意識の高さは考えられませんかね? クルマはCO2だエミッションだで昔から何かとやり玉にあげられますし。

近藤 それがですね。我々の調査だと、現代の20代ってそれほど環境意識が際立っているわけではないんです。「環境を考えた生活をすることは自分にとって面倒だと思う」という項目をみると、年代別では20代が一番高くて6割近く、1992年比では約10ポイント増えているという結果が出ています。もちろん熱心に環境負荷低減を意識する20代が増えていることも承知しているのですが、総合的にみると、ゴミの分別とかレジ袋の有料化とか、コストや手間が自分の日常にも影響していることに対しての疲れが現れているのではないでしょうか。

「環境を考えた生活をすることは自分にとって面倒だと思う」と感じている割合の高い20代。(博報堂生活総研 生活定点調査)

──そうなんですね……。うーん、コミュニティが小さい上にインドア派で動画視聴が趣味なんて話が積み上がってくると、いよいよクルマを持つなんて選択ははるか遠いものになってきますよね。

クルマ趣味の若者の熱量はすごい

これまでのデータは若者のクルマ離れを裏付けるものだったが、そうではないと植村さんは推測する。

植村 私が思うに、20代が軒並みクルマの存在を否定しているってわけではないと思うんです。むしろ乗りたいと思っている方も多いのではと。

──最初に言われていたように、調査エリアが都市部であることも考慮しないとですね。

植村 車種が云々というよりも、仲の良い友人と同じ空間を共有できる嬉しさってありますよね。それが移動を伴うものだと余計にテンションがあがったり。

──それはすごくわかります。この歳になっても、日も出ない夜中からクルマに乗ってどこかに行くって、毎度の撮影で見慣れた仕事仲間と一緒という状況でも、ちょっと異なるざわざわ感がありますよ。

植村 クルマにそういう魅力を感じているという友人はいますね。だけど都市部ではクルマを維持することがコスト的にとても難しいということで、自分のクルマを実家に置いているという話も聞きます。

──これは駐車場の高い都市部の特殊な事象かもしれませんが、そもそもの重税に加えて燃料の二重課税など、クルマの維持を阻害するコスト的要素は山積してますね。

植村 それゆえ、クルマを所有するというリアリティがないという20代は都市部に多いと思います。でも、そういうニーズに対応したカーシェアリングやサブスクリプションのようなサービスも最近は現れているので、クルマに触れる機会は以前よりは増えているのかもしれません。

近藤 確かに、現代の20代はハードウェアを所有するということに対する執着がそれほどないように窺えます。スマホだって何年かで返却する前提で最新機種が安く持てるというキャリアのサービスが普通になってますよね。その感覚でクルマも所有することにはこだわらないのではないでしょうか。

若者の消費はバブル期以上なところも!

──なるほど。そうなると、逆説的にいえばクルマを所有すること自体がより先鋭化するのかもしれませんね。どうせ持つんだから妥協はしたくない、個性的なものがいいみたいな。最近は80〜90年代のクルマのデザインが若い人にも人気で、ビニールレコードやフィルムカメラの愛好と似たような非日常体験を求めているのかなぁと思わされることがあります。

植村 持ち物には拘りたいという気持ちは皆々が抱くものだと思いますが、現実にはそうはいかないところもありますよね。そうなると、アイテムに対する熱量はあがるというか、持つからには拘りたいという話になるのではないでしょうか。

近藤 推しの話とも関連しますが、好きなことや納得できるものに対する若者の消費意欲や熱量は高く、経済にもいい影響を与えているのではないかと。

植村 クルマって、運転しているときは、スマホは使えないですよね。

──もちろん、そうですね。

植村 運転中、スマホなど、他のことができない状況に身を置けること自体に、クルマの意味合いが見いだせるところもあるんですよね。デジタルデトックス的な環境がチル(※)というか。
(※Z世代の間で使用される、ゆっくりする、まったりする、くつろぐという意味の言葉)

──なるほど。クルマの空間価値というのは、BEV+自動運転の変革後に訪れる商品差別化の鍵といわれてましたが、既にその戦いは始まっていると思った方がよさそうですね。本日はありがとうございました。

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