“筋トレ”が裏テーマ? 「軽トラ」をカスタムしたスズキの若きデザイナーたちの発想が最高だった!【東京オートサロン2024】
東京オートサロン2024で、スズキは「スーパーキャリイ」をベースとしたコンセプトモデルを出展した。このクルマはアクティブな山遊びをテーマにしているが、裏テーマが“筋トレ”という、とんでもない一台だった。
カスタムカーのメインテーマはロッククライム!
スズキの軽トラ「スーパーキャリイ」は商用車という印象が強いが、カスタムカーの祭典“オートサロン”開催に合わせてカスタムカーを制作。スズキは商用車は遊びにも使えるクルマだと知ってもらえるよう、山やオフロードをアクティブに楽しめるSUVのような姿の「スーパーキャリイ マウンテントレイル」を完成させた。今回は、スズキのカスタムカー全般を担当したという邊田(へんた)氏に話を訊くことができたので紹介しよう。
■マウンテントレイルにはどんな人が乗る?
まず、このマウンテントレイルに乗るユーザーはロッククライムを楽しむような20~30代のアクティブな男女を想定しており、車両の仕様や搭載したギアの数々も、山遊びに特化したものとなっているそうだ。
■SUVのようなマウンテントレイルの外観
次に外観の特徴を見ていくと、キャビンや荷台、ドア部分などにロールケージ(写真では黒いパイプ状のフレーム)を使用し、車体下部のアンダーガード、足回りのリフトアップとオフロードタイヤ装着など、高い走破性と耐久性を持たせたモデルだということが分かる。
■インテリアにもチッピング塗装?
デザインについては他にも面白い挑戦をしており、それはエクステリアとインテリアの境界を設けない、ということだ。
例えばカラーリングは、アクティブさを連想するイエローと、締めの効果でブラックを外装と内装のどちらにも採用している。また、ブラックのパーツにはアウトドア・カスタムでは定番のチッピング塗装が施され、表面のゴツゴツとした質感とダメージ耐性を向上させているが、この塗装がインテリアにも施されている。これは、ドアパネルを外し、柵のようにロールケージで囲うことで、運転中も五感で自然を感じられるよう配慮したものだが、その代わりに山道で木の枝が車内に入ってくる可能性もあるため、チッピング塗装でタフな仕様にしたそうだ。
他にも天井のファブリックを排除して板金剥き出しにしたり、撥水性を持つフルバケットシートや、センター・サイドのベンチレーションを塞ぎ、そこに防水仕様タブレットとモバイルスピーカーを設置。また、車内と車外に付着した砂埃や泥を、クルマ一台そのまま丸洗いできたら面白そうだ、という意見があったという。
もちろん実際に丸洗いは難しいが、それくらい内側と外側の区別をなくしたスパルタンな仕様です、と邊田氏は語ってくれた。
マウンテントレイルの裏テーマは筋トレマシンだった!?
さて、このマウンテントレイルだが、スズキの若手デザイナーたちがデザインの方向性について議論した際に、マッチョな人がロールケージを掴んで筋トレしていたら面白そう! というところからスタートしたそうだ。
しかし、そのままのコンセプトでは完成車を見た人から共感を得られないかも、という懸念から、山でストイックに遊びを楽しむという方向性にシフトチェンジしたという。
ただし、筋トレマシンというアイデアの名残りは各所で確認できる。改めて探すと次々と見つかり、これが非常に楽しかった。例えばセンターコンソールの収納ポケットには、ド直球に握力を鍛えるハンドグリップが入っていたり、サイドドアの上部にあるアシストグリップや助手席のグローブボックスの上部にあるバーも、筋トレ器具で見たことがある形状のものばかりだ。こうなると、車体を囲むロールケージももはや筋トレ用のグリップにしか見えなくなるから可笑しくて仕方がない。しかし、よく考えればロッククライムと筋トレは非常に近しい存在なのかもしれない。
このマウンテントレイルは、筋トレとアウトドアという異なるブームの中から接点を見出し、若きデザイナーによって格好良く、そして面白く昇華された姿だった。このモデルが実際に発売される予定はないそうだが、次回作も楽しみだ。
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