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最終更新日:2024.01.09 公開日:2024.01.09

原付免許で125ccバイクの運転も可能に!? 2025年11月までの法改正で新基準導入へ!

警察庁は、2023年12月21日に「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」の報告書を公表した。これによると、最高出力を50ccクラスと同等まで制限した125cc以下の車両を、現行の原付に代わり「新基準原付」として運転可能になるという。

文=岩井リョースケ(KURU KURA)

資料=警察庁

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新基準設置の背景に、絶滅寸前の原付モデルの存在

二輪車車両区分の見直しについて検討会が実施された背景には、50cc以下の新型モデルが各メーカーから開発・販売されなくなってきている影響が大きい。

これは、2025年11月以降に製作される50cc以下で設計最高速度が時速50kmを超える原付に対し、新たな排ガス規制が適用されることで、この条件をクリアするための開発ハードルが高くなり過ぎたため、各メーカーが開発・生産を諦めかけていることに起因している。

日本自動車工業会(jama)の調べによると、2022年3月末時点の全国での二輪車保有台数は約1031万台で、そのうち50cc以下が約449万台と、全体の43.5%を占めている。この数字からも、原付一種は日本全国の幅広い年齢層に手軽な移動手段として必要とされていることは容易に想像することができるが、これだけのユーザーが将来的に新モデルを購入できなくなると、日常生活に支障が出る人が増えてしまう。

そこで、これらの問題を解決するため、有識者による検討会が2023年に3度開催された。検討会では「最高出力を4kW以下に制御した125ccクラスのバイクを、安全性と運転性等について50ccクラスと同等と評価できるか」を重点に議論が重ねられ、習熟運転者と一般運転者による試乗会での走行評価も実施。その結果、最高出力を制限した125cc以下のバイクは“条件付き”で原付免許で運転可能とすることが適当と結論づけられた。

新基準原付の加速性能について。最高出力を4kWに制御した場合の新基準原付の加速度(理論値)は現行原付とほぼ同程度になる。資料=警察庁

125cc以下の車両を原付扱いできる条件とは?

この最高出力を4kWに制御した125cc以下のバイクは「新基準原付」とされているが、この車両を扱うには以下の条件が必要となる。

(1)最高出力を制御する機構が不正に改造されないよう、汎用の工具では出力制御部のカバーを外せない構造にしたり、電子制御との組み合わせといった防止措置を講ずる。
(2)完成車状態でも最高出力が測定できるように関係団体で検討を行う
(3)小型自動二輪車との区別がつくように外見を工夫する
(4)出力を制御していない小型自動二輪車までも原付免許で運転できると誤解されないよう、周知に努める。

“外見の工夫”については、ナンバープレートを現行原付の区分と同様に「白色」とし、小型二輪車などと区別することになる。

総排気量が125cc以下でありながら、最高出力を4kW以下に制御することで、小型二輪とは別に、原付一種と同等の「新基準原付」区分が設けられる。

比較試乗実験で見えてきた新基準原付のメリット・デメリット

最高出力を50ccクラスと同等まで抑えた125cc以下のバイクの安全性や運転性、乗り心地はどのようなものなのか。習熟運転者や一般参加者による試乗会での走行評価についても確認しておこう。

習熟運転者からは、免許の実技試験を担当する技能試験官12名が、現行原付(ベンリィ・ギア・タクト・C50)と、新基準原付 (出力を制御したPCX・リード125・C110・Vision110・CB125R)、現行小型二輪(リード125・CB125R・C110)の比較走行を運転免許試験場内で実施。コース内の発進・停止から坂道走行、スラローム、引き起こし、押し歩きといった項目に対し「3」を“原付と同等”とした5段階で評価した。

その結果、技能試験官12名のアンケート調査では、新基準原付は現行原付と「ほぼ同等」という結論が出ている。特に走行中は新基準原付の方が車体が大きい分、安定性が増すという意見が多い印象だ。ただし、各モデルに多少の差異はあるものの、全体的に新基準原付はトルクが薄く、発進時(特に坂道)にフラつきやすさを感じたり、ブレーキ制動が効きすぎると指摘する声も挙がっている。このあたりはメーカーの調整次第で印象が変わりそうだ。

習熟運転者を対象とした走行評価について、現行原付(4車種)、新基準原付(5車種)、現行小型二輪(3車種)の計12車種で実施。いずれもホンダの車両となる。

一般参加者からは一般原動機付自転車を運転できる免許保有者21名で走行評価を実施。内訳は女性12名、男性9名で年齢は21~72歳まで、身長は150~177cmまでとばらつきを持たせ、21名のうち16名はバイクの運転が未経験だという。こちらは前者とはコースや評価項目が異なるが、習熟運転者と同様に5段階評価で原付と新基準原付の比較が行われた。

21名の一般参加者のアンケート調査では、現行原付と「同等」もしくは「原付よりも運転操作が少し容易」という結果となった。また、転倒やパイロンへの接触等の安全に関わる問題は生じなかったという。

まとめると、習熟運転者と一般参加者の両者の総評としては、「経験を問わず新基準原付は原付と同等以上に運転しやすい」ということになった。

「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」
報告書について:
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20231219001.html

一般参加者での走行評価実験で使用された車両。習熟運転者と比べ、CB125Rがリストから外れている。

試乗会参加者(一般)情報

一般参加者による試乗会の感想。評価4とは、新基準原付の方が運転操作が【1.容易】、【2.少し容易】、【3.原付と同等】、【4.少し困難】、【5.困難】のうちの「少し困難」を指す。

最後に、この新基準原付が新しく加わることでのメリットとデメリットについて考えてみようと思う。

まず、メリットとして、メーカーの開発ハードルが下がることで、新モデルの開発・市販化が期待できる。原付ユーザーの選択肢が増えることはよいことだろう。また、車両サイズや車重が増すことで、走行中の安定性が向上する点もメリットとなる。ただし、発進時(坂道含む)のふらつきや、狭所での取り回しに、引き起こしにくさといった短所も含まれるため、サイズや車重の増加による評価は個人差がありそうだ。

次にデメリットだが、車両ベースが125ccクラスである場合、50ccクラスよりも高価になる可能性が非常に高いため、原付が20万円以内で買えない、という状況が想像できる。また、新基準原付が新区分に加わると、さらにルールが複雑になる印象だ。単純に125ccのバイクに原付免許で乗れるものと勘違いしたり、二人乗りしてしまう人も現れるだろう。このあたりの課題をどのように解決するのかにも注目していきたい。

警察庁ではパブリックコメントを募集し、2025年11月の新しい排ガス規制が原付に適用されるまでに法改正を目指す。

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